【離婚】W不倫(既婚者同士の不倫)と慰謝料請求

2015-06-13

一 事例

私(X)の夫(Y)が不倫しました。不倫相手(A)も既婚者のようです。

私は,不倫が許せないので,夫の不倫相手に慰謝料を請求したいと考えています。

私は,夫と離婚しようか迷っていますが,離婚しない場合でも,不倫相手に慰謝料請求をすることはできるでしょうか。

夫によると,不倫相手の夫(B)はまだ不倫のことは知らないようです。

 

二 不貞行為をされたことによる慰謝料請求

1 不貞行為をした配偶者とその不倫相手に対する慰謝料請求

不貞行為をされた人(X)は,自身の配偶者(Y)とその不倫相手(A)により,共同で不法行為をされたことになりますので,自身の配偶者(Y)とその不倫相手(A)に対し慰謝料請求をすることができます。

両者の債務は不真正連帯債務となり,不貞行為をされた人(X)は不貞行為をした配偶者(Y)とその不倫相手(A)のどちらに対しても慰謝料請求をすることができますが,一方が支払った場合,その分,他方に対し請求できなくなります。

なお,詳しくは配偶者の不貞行為のページをご覧ください。

2 離婚しない場合

不貞行為をされた人(X)は,不貞行為をした配偶者(Y)と離婚しない場合であっても,配偶者の不倫相手(A)に対し慰謝料請求をすることはできます。

もっとも,一般に,不貞行為により離婚に至った場合と離婚に至らなかった場合とでは,離婚に至った場合のほうが精神的苦痛が大きいと考えられますので,離婚しない場合は離婚した場合よりも慰謝料額は低くなる傾向にあります。

また,不貞行為をした配偶者(Y)に対する慰謝料請求も考えられますが,離婚しない場合には,夫婦として経済的に一体ですので,実際に慰謝料請求することはないでしょう。

 

三 W不倫の場合の問題点

W不倫の場合,不倫相手の配偶者(B)に対する不法行為にもなりますので,不倫相手の配偶者(B)も,自分の配偶者(A)とその不倫相手(Y)に対し慰謝料請求をすることができます。

不貞行為をされた人(X)からすれば,配偶者(Y)と離婚する場合には,離婚により他人となるので,配偶者(Y)が不倫相手の配偶者(B)から慰謝料請求されたとしても基本的には関係ありません(ただし,YはXとB双方から慰謝料請求されるため,Yの支払能力に影響を与えることはあります。)。

これに対し,離婚しない場合には,夫婦として経済的に一体ですので,自分の配偶者(Y)が不倫相手の配偶者(B)から慰謝料請求される可能性を考え,不倫相手(A)に対し慰謝料請求をすべきかどうか慎重に検討する必要があります。

慰謝料額は具体的な事情によって異なり,双方の慰謝料額が同じになるとは限りませんので,不貞行為をされた人(X)が配偶者の不倫相手(A)から得られる慰謝料額より,配偶者(Y)が不倫相手の配偶者(B)に支払う慰謝料額の方が高くなり,夫婦全体としてみればマイナスとなることもあります(例えば,XとYが離婚せず,BとAが離婚した場合には,AがXに対して負う慰謝料額よりも,YがBに対して負う慰謝料額のほうが高くなる可能性があります)。

そのため,不倫相手の配偶者(B)が不倫に気付いていない等の理由で慰謝料請求してこない場合には,配偶者の不倫相手(A)に対し慰謝料請求をすると,不倫相手の配偶者(B)からの慰謝料請求を誘発する可能性があることから,不倫相手(A)に対し慰謝料請求することが躊躇われ,慰謝料請求に踏み切れないことがあります。

 

四 まとめ

事例の場合,Xは,Yと離婚しなくても,Aに対し慰謝料請求をすることはできますが,Bも,YとAの不倫に気付けば,Yに対し慰謝料請求する可能性があるため,Yと離婚しないのであれば,Aに対し慰謝料請求するかどうか慎重に検討すべきでしょう。

 

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