【離婚】離婚調停
離婚する方法には,①協議離婚,②調停離婚,③審判離婚,④和解離婚,⑤認諾離婚,⑥判決離婚があります。
離婚の大半は協議離婚ですが,協議離婚ができない場合には,離婚調停をし,それでも離婚できない場合には,離婚訴訟をすることになります。
ここでは離婚調停について説明します。
一 離婚調停とは
離婚について夫婦間で協議がまらない場合や協議ができない場合,家庭裁判所の手続により離婚することになりますが,調停前置主義(家事事件手続法257条)がとられているため,離婚調停の申立てをします。いきなり離婚訴訟を提起しても,調停に付されるのが通常です(家事事件手続法257条2項)。
離婚調停では,調停委員が当事者双方から事情を聴く等して,間に入って,当事者双方が,離婚するかどうかということや,離婚条件(どちらが親権者となるか,面会交流や養育費をどうするか,慰謝料や財産分与,年金分割の按分割合をどうするか等)について話し合い,合意により解決を図ることを目指します。
裁判所では,離婚調停について夫婦関係調整調停事件というで事件名が付けられますが,夫婦関係調整調停事件には離婚調停だけではなく,円満調停もありますので,区別するため,離婚調停は,夫婦関係調整(離婚)調停事件との事件名が付けられます。
二 離婚調停の申立て
1 当事者
夫または妻の一方が申立人として調停の申立てをし,他方が相手方となります。
2 管轄裁判所
相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者の合意で定める家庭裁判所(合意管轄)が管轄裁判所となります(家事事件手続法245条1項)。
なお,移送や自庁処理されることもあります(詳しくは,離婚事件の管轄のページをご覧ください。)。
3 申立て
申立人は,管轄裁判所に,申立書,事情説明書,戸籍謄本その他の必要書類と申立費用(収入印紙と郵便切手)を提出して,離婚調停の申立てをします(申立書や事情説明書等の書式や必要書類,申立費用については,裁判所のウェブページで調べることができます。)。
申立てにあたっては,離婚を求める以外に,親権者の指定,面会交流,養育費,財産分与,慰謝料,年金分割の分割割合を定めるといった付随的な申立てをすることができます。
なお,離婚するまでの間の婚姻費用分担請求をしたい場合には,離婚調停とは別に,婚姻費用分担調停を申し立てなければなりません。その場合,離婚調停と婚姻費用分担調停を併合して同一期日で話合いをすることができます。
三 離婚調停の進行
1 調停委員会等
調停は,調停委員2名(男性・女性各1名が通常です。)と裁判官(または家事調停官)の3名からなる調停委員会が手続を進めていきます。
調停委員は裁判官と評議し,その評議に基づいて調停を進めていき,裁判官は必要な場合に立ち会います。
また,事実の調査が必要な場合には,家庭裁判所の調査官が立ち会うことがあります。
2 本人出頭の原則
調停期日には,原則として当事者本人が出頭しなければなりません(家事事件手続法258条1項,51条2項)。
そのため,弁護士に依頼した場合であっても,本人は調停期日に出頭しなければなりません。
3 調停期日
第1回の調停期日では,通常,調停委員が,まず,当事者双方に対し,調停手続について説明し,その後,各当事者から個別に話を聴きながら,話合いを進めていきます。
調停委員は,当事者に対し資料の提出を求めたり,当事者の一方から聴いたことを他方に伝えて検討を促したりする等して,合意ができるかどうかを探っていきます。
調停期日は1回で終わらない場合には,次回期日を決めて,次回期日に話合いを続けます。
調停期日は,調停が終了するまで,複数回続きます。
四 離婚調停の終了
1 成立
離婚することや,離婚条件について,当事者間に合意が成立し,これを調書(調停調書)に記載したときは調停が成立し,調書の記載は,確定判決(家事事件手続法別表第二に掲げる事項については確定した審判)と同一の効力を有します(家事事件手続法268条1項)。
調停離婚が成立した場合には,その日に離婚したことになりますが,成立後10日以内に,調停調書謄本を添付して役所または役場に報告的届出をしなければなりません(戸籍法77条1項,63条1項)。
届け出は,原則として申立人が行いますが,申立人が10日以内に届け出を行わない場合には相手方は届け出をすることができますし(戸籍法77条1項,63条2項),調停条項で「相手方の申出により離婚する」としておけば,相手方が届け出をすることができます。
また,養育費の支払,慰謝料の支払,財産分与等の不履行があった場合には,強制執行をすることができます。
なお,当事者間で離婚については合意ができず,当面,別居を続けるという合意が成立する場合には,別居することや別居に伴う問題点について,別居調停を成立させることもあります。
2 調停に代わる審判
(1)調停に代わる審判をする場合
離婚調停が成立しない場合でも,家庭裁判所は,調停委員の意見を聴いた上で,相当と認めるときは,当事者双方のために衡平に考慮し,一切の事情を考慮して,職権で,事件の解決のために必要な審判(調停に代わる審判)をすることができます(家事事件手続法284条1項,2項)。また,調停に代わる審判では,当事者に対し,子の引渡しや,金銭の支払その他の財産上の給付を命じることもできます(家事事件手続法284条3項)。
調停に代わる審判をする場合としては,離婚すること自体については当事者間に争いがないけれども,離婚条件について,わずかな違いから調停が成立しない場合や,当事者の一方が頑なであったり,やる気がなかったりするために,調停が成立できない場合等が考えられます。
(2)異議申立て
調停に代わる審判について,当事者は,2週間以内に異議を申し立てることができ(家事事件手続法286条1項,2項,279条2項),適法な異議の申立てがあったときは,審判は効力を失います(家事事件手続法286条5項)。
これに対し,適法な異議の申立てがなく,審判が確定したときは,確定判決と同一の効力を有します(家事事件手続法287条)。
3 不成立
調停委員会は,当事者間に合意が成立する見込みがない場合や,成立した合意が相当でないと認める場合は,調停に代わる審判をしたときを除き,調停を不成立にして,調停事件を終了させることができます(家事事件手続法272条1項)。
調停が不成立になった場合,離婚したければ,離婚訴訟を提起することができます(ただし,調停不成立から長期間経過した場合には調停に付される可能性があります。)。
なお,離婚訴訟の訴状の附属書類として裁判所に提出するため,調停不成立の証明書をとっておきましょう。
4 取下げ
家事調停の申立ては,事件が終了するまで,その全部または一部を取り下げることができ(家事事件手続法273条1項),取り下げた部分について調停は初めからなかったものとみなされます(家事事件手続法273条2項,民事訴訟法262条1項)。
取下げには相手方の同意は必要ありません。