【親子問題】親子法制の改正(令和4年民法等の改正)

2024-04-23

令和4年に嫡出推定、嫡出否認制度、女性の再婚禁止期間、認知、懲戒権等、親子法制について民法等の規定が改正されました。懲戒権の規定の改正については令和4年12月16日に施行され、嫡出推定、嫡出否認制度、女性の再婚禁止期間、認知の規定の改正については令和6年4月1日に施行されました。

 

一 嫡出推定についての改正

改正前の民法772条では、①妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定する(同条1項)、②婚姻成立の日から200日経過後又は婚姻の解消・取消しの日から300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定するとされていました(同条2項)。

改正前の民法では、離婚等の日から300日以内に元夫以外の人との間の子を出産した場合、嫡出推定の規定から、戸籍上、その子は元夫の子として扱われることになってしまうため、母親が子の出生の届出をすることができず、子が無戸籍になってしまうことがありました。そこで、改正により、離婚等の日から300日以内に生まれた子であっても、その間に母親が再婚したときは再婚後の夫の子と推定されることになりました。

改正後の民法772条では

①妻が婚姻中に懐胎した子、妻が婚姻前に懐胎し、婚姻成立後に生まれた子は、夫の子と推定されます(同条1項)。

②婚姻成立の日から200日以内に生まれた子は婚姻前に懐胎したものと推定され(同条2項前段)、婚姻成立の日から200日経過後又は婚姻の解消・取消しの日から300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定されます(同条2項後段)。

③女性が子を懐胎したときから出生するまでの間に複数回婚姻をしたときは、出生の直近の婚姻における夫の子と推定され(同条3項)、その夫について嫡出否認されたときは、その前の婚姻における夫の子と推定されます(同条4項)。

 

二 嫡出否認制度についての改正

改正前の民法では、夫は子の出生を知った時から1年以内に嫡出否認をすることができました(旧民法774条、777条)。

改正前の民法では、嫡出否認は夫だけが行うことができ、母や子が嫡出否認できないという問題がありましたし、嫡出否認権を行使できる期間が短いという問題がありました。

そのため、改正により、嫡出否認ができる人の範囲が拡大され、父のほか、子、母、前夫が嫡出否認をすることができることになりました(民法774条)。

また、嫡出否認権の行使期間は原則として3年に延ばされ、夫又は前夫は子の出生を知ったときから3年、子又は母は子の出生時から3年になりました(民法777条)。子については、一定の要件のもと、21歳に達するまで行使することができるようになりました(民法778条の2第2項)。

さらに、嫡出否認された場合に、子は父であった者が支出した子の監護に要した費用を償還する義務を負わないとする規定(民法778条の3)、相続開始後に嫡出否認権が行使され新たに子と推定された者が遺産分割請求をしようとする場合、既に遺産分割等の処分がなされていたときは、価額のみによる支払請求権を有するとする規定(民法778条の4)が新設されました。

なお、改正法は施行後に生まれた子について適用され、施行前に生まれた子については改正前の法が適用されるのが原則です。ただし、無戸籍者の救済を図るため、施行日である令和6年4月1日より前に生まれた子については、その子や母親は令和6年4月1日から1年間に限り嫡出否認の訴えを提起することができます。

 

三 女性の再婚禁止期間の廃止

改正前の民法733条では原則として女性は前婚の解消又は取消しから100日を経過しなければ再婚することができませんでした。女性に再婚禁止期間が設けられていたのは、改正前の民法では離婚後100日以内に再婚できるとすると、前婚の解消から300日以内、後婚から200日経過後に子が出生した場合、前婚の夫と後婚の夫の嫡出推定が重複し、誰が父か定まらなくなってしまうからです。

しかし、改正により離婚後100日以内の再婚を認めても嫡出推定が重複することはありませんので、女性に再婚禁止期間を設ける必要がなくなりました。

そこで、改正により女性の再婚禁止期間は廃止されました。

 

四 認知についての改正

1 胎児認知についての改正

父は母の承諾を得て胎児を認知することができます(民法783条1項)。

改正法では、女性が婚姻前に懐胎した子が婚姻後に生まれた場合には夫の子と推定されることから(民法772条1項後段)、夫以外の人が胎児認知した場合、どちらの子と扱われるのか問題となります。

そのため、改正法では、胎児認知した子が出生した場合、民法772条の嫡出推定により父が定められるときは、胎児認知の効力は生じないこととされました(民法783条2項)。

 

2 認知無効についての改正

改正前の民法では、子、その他の利害関係人は認知無効の訴えをすることができましたし、認知無効の訴えの出訴期間に制限がありませんでしたので、嫡出否認の場合と不均衡がありました。

そこで、改正により、認知が事実に反する場合について認知無効の訴えを提起できる者は子、認知をした者(父)、母に限定されました(民法786条1項)。出訴期間は、原則として、認知をした者は認知をした時から、子又は母は認知を知った時から7年間とされました(民法786条1項)。子については、一定の要件のもと、21歳に達するまで訴えを提起することができます(民法786条2項)。

また、認知が無効となった場合、子は認知をした者が支出した子の監護に要した費用を償還する義務を負わないとする規定(民法786条4項)が新設されました。

 

五 懲戒権についての改正

改正前の民法822条は懲戒権について規定していましたが、懲戒権の規定は児童虐待の正当化につながりかねませんでした。

そこで、改正により、懲戒権の規定を廃止し、監護教育権が具体化、明確化されました。

 

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