【相続・遺言】相続法改正 特別の寄与の制度

2019-06-10

相続法の改正により,2019年7月1日から,特別の寄与をした被相続人の親族は,相続人に対し,金銭の支払を請求することができるようになります。

 

一 特別の寄与の制度

寄与分の制度では,寄与分が認められるのは相続人に限られており,相続人以外の親族が被相続人の療養看護等をしても寄与分は認められないため,不公平となる場合がありました。
そこで,公平の観点から相続法の改正により,特別の寄与の制度が創設されました。

特別の寄与の制度では,特別の寄与をした被相続人の親族(特別寄与者)は,相続開始後,相続人に対し,寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求することができます(民法1050条)。

 

二 請求権者の範囲

請求することができるのは,被相続人の親族(ただし,相続人,相続放棄をした人,欠格・廃除により相続権を失った人は除きます。)です(民法1050条1項)。

被相続人の親族以外の人が特別の寄与をしても,特別寄与料の請求はできません。

 

三 特別の寄与

請求することができるのは,被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合です(民法1050条1項)。

寄与分の場合と異なり,無償で労務の提供をした場合に限定されています。

 

四 特別寄与料

特別寄与者は寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求することができます(民法1050条1項)。
特別寄与料の支払については,まずは当事者間の協議で定めます。協議が調わないとき,または協議ができないときは,特別寄与者は,家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができ(民法1050条2項),家庭裁判所は,寄与の時期,方法及び程度,相続財産の額その他一切の事情を考慮して特別寄与料の額を定めます(民法1050条3項)。
具体的な額の算定については,寄与分の場合の算定方法を参考にすることが考えられます。

また,特別寄与料の額は,被相続人が相続開始時に有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできません(民法1050条4項)。

 

五 請求の相手方

請求の相手方は相続人です。
相続人が複数いる場合には,各相続人は,特別寄与料の額に民法900条から902条の規定により算定した当該相続人の相続分(法定相続分または指定相続分)を乗じた額を負担することになります(民法1050条4項)。

 

六 手続

特別寄与料の支払については,まずは当事者間の協議で定め,協議が調わないとき,または協議ができないときは,特別寄与者は,家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます(民法1050条2項)。

特別の寄与に関する処分は家事事件手続法別表第二の事件であり,調停手続または審判手続を行うことになります。

寄与分については遺産分割事件と併合しなければなりませんが(家事事件手続法192条,245条3項),特別の寄与に関する処分については遺産分割事件と併合することは強制されていません。

 

七 請求期間

特別寄与者が家庭裁判所に協議に代わる処分を請求することができるのは,特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内,または相続開始時から1年以内です(民法1050条2項但書)。この期間は除斥期間です。

相続争いの複雑化,長期化を防止するため,権利行使期間は短期間とされています。

 

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