【相続・遺言】未成年者と親権者の利益相反となる場合の遺産分割
共同相続人に未成年者がいる場合、未成年の親権者が法定代理人として遺産分割を行うことになりますが、未成年者と親権者が利益相反となるときには、未成年者の特別代理人を選任して、遺産分割を行うことが必要となります。
一 親権者と未成年者の利益相反
共同相続人に未成年者がいる場合、未成年者の親権者が法定代理人として遺産分割を行うことになりますが(民法824条)、親権者と未成年者が利益相反となる場合には、親権者が代理して遺産分割を行うことはできません。
利益相反にあたるかどうかは、外形的、客観的に判断されます。親権者が主観的には子らの利益を害さないと考えていたとしても、外形的、客観的にみて利害が対立する場合には利益相反にあたります。
親権者も共同相続人である場合(例えば、父が亡くなり、母と未成年の子が共同相続人となる場合)には、親権者と子らの利害が対立し、親権者が子を代理して遺産分割を行うことは利益相反となりますので、親権者は、未成年の子の特別代理人を選任する必要があります(民法826条1項)。
親権者は共同相続人でないけれども、共同相続人となる未成年者が複数いる場合に親権者が複数の子らを代理して遺産分割をすること(例えば、母を子らの親権者として離婚した後に父が亡くなり、複数の子らが相続した場合や、父が亡くなった後に祖父が亡くなり、複数の子らが代襲相続した場合)は利益相反となります。その場合、親権者は子の一人を代理することができますが、他の子については特別代理人の選任が必要となります(民法826条2項)。
父母が親権者の場合、父母は未成年の子について共同で親権を行使することになりますが、親権者の一方と未成年の子の利益相反となるとき(例えば、夫の親が夫の未成年の子に一部包括遺贈をした場合、夫の親の相続について、夫と子は利益相反関係にありますが、夫の親の相続人ではない妻は子と利益相反関係にありません。)には、利益相反のある親権者は未成年の子の特別代理人を選任し、特別代理人と利益相反のない親権者が共同で未成年の子を代理することになります。
二 特別代理人選任の申立て
親権者と未成年者の利益が相反する場合、家庭裁判所に特別代理人選任の申立てをします。
特別代理人は、審判で決められた行為について、未成年者を代理することができます。
申立てができるのは、親権者と利害関係人です。
申立先は、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所です。
申立てをするにあたっては、申立書、親権者及び未成年者の戸籍謄本、特別代理人候補者の住民票又は戸籍の附票、利益相反に関する資料等を提出します。遺産分割協議をする場合には、遺産分割協議書案が利益相反に関する資料となります。
申立人は特別代理人の候補者を立てることができます。特別代理人について資格の定めはありませんので、親族を候補者とすることもできますが、家庭裁判所が希望どおりに認めるとは限りません。未成年者の利益を保護する観点から、弁護士等の専門家が特別代理人に選任されることもあります。
三 特別代理人を選任しないで遺産分割をした場合
利益相反に当たる場合に、特別代理人が選任されることなく、親権者が未成年者を代理して遺産分割をした場合には、無権代理行為となります。
未成年者が成人になった後に追認しない限り、有効にはなりません。