【民事訴訟】本人訴訟
民事訴訟をする場合には,弁護士に依頼することもできますが,当事者本人だけで行うこともできます。
当事者本人だけで訴訟追行することを本人訴訟といいます。
一 本人訴訟とは
本人訴訟とは,訴訟代理人をつけずに,当事者本人が訴訟を追行することをいいます。
訴訟代理人には,①法令上の訴訟代理人(支配人(商法21条1項,会社法11条1項)や船長(商法713条1項)等)と②訴訟委任による訴訟代理人がおり,②の場合は弁護士でなければ訴訟代理人となることができないのが原則です(民事訴訟法54条1項本文。「弁護士代理の原則」といいます。なお,認定司法書士は簡易裁判所の訴訟で訴訟代理人になることができる等,弁護士以外の者が訴訟代理人になることができる場合があります。)。
もっとも,民事訴訟では訴訟代理人を付けることが強制されているわけではないので,当事者本人が訴訟代理人をつけずに,自ら訴訟追行することも可能です。
そのため,かなりの割合で本人訴訟が行われておりますし,裁判所も訴状や答弁書等の書式を用意しており,本人でも訴訟ができるようにしています。
二 本人訴訟をしようかどうかお考えの方へ
弁護士費用をかけたくない,本やインターネットで調べれば自分でできそうだ等と考えて本人訴訟をされる方もいらっしゃいます。
確かに,経済的利益が少額で弁護士を依頼しても費用倒れになる等,弁護士費用との兼ね合いで本人訴訟をするのがやむを得ないケースもあります。
しかし,なかには,弁護士費用をかけてでも弁護士に依頼した方がよいと思われるケースも少なくありません。
民事訴訟では当事者主義が原則であり,どのような内容の判決を求めるか,どのような事実を主張しどのような証拠を提出するかは当事者の判断に委ねられており(処分権主義,弁論主義),これらを適切に行うには専門的知識が必要です(裁判所は公正中立な立場で審理を行いますので,当事者の一方に肩入れすることはなく,本人訴訟だからといって,裁判所が特別な便宜を図ってくれることは通常,ありません。)。
どのような請求をするか,どのような法律構成をとるか,どのような主張,立証をするかは,訴訟の結果に大きく影響しますが,これらをご本人だけで行うのは困難であり,本来得られたはずの利益が得られなくなる結果になることもあります。また,和解で解決するにしても,どのような和解をすべきかについても,専門的知識がないと適切な判断は困難でしょう。
なお,いざとなったら訴訟を取下げてやり直せば良いと思われるかもしれませんが,取り下げができない場合もあります(民事訴訟法261条2項等)。
そのため,弁護士に依頼しようか,本人訴訟にしようかお悩みの方は,弁護士に相談した上で,どうすべきか良く検討すべきでしょう。
また,既に本人訴訟をやっているが,上手くいかなくて困っている方は,手遅れにならないうちに弁護士に依頼することを検討すべきでしょう。