【労働問題】歩合給・出来高給と残業代(割増賃金)

2017-08-18

契約件数・契約高に応じて賃金が定まる営業社員や,売上の一定割合が賃金として支払われるタクシー運転手のように,労働時間ではなく,売上等の出来高で賃金が決まる歩合給・出来高給の場合でも,時間外労働等をすれば残業代(割増賃金)が支払われるのでしょうか。

 

一 歩合給・出来高給の場合にも割増賃金が発生するか

労働基準法37条は,時間外労働,休日労働,深夜労働をした場合の割増賃金について規定しております。割増賃金は,使用者に通常の労働時間・労働日の賃金よりも割増の賃金を支払う義務を負わせることで,時間外労働等を抑制させるためのものです。
歩合給・出来高給の場合であっても,通常の労働時間にあたる賃金部分と時間外労働の割増賃金にあたる部分が区別されておらず,労働者が時間外労働等をしても金額が増えないときには,割増賃金を請求することができます。

 

二 歩合給・出来高給の場合の割増賃金の計算方法

割増賃金は,以下の計算式で計算します。

割増賃金=基礎賃金額×時間外労働・休日労働・深夜労働時間×割増率

 

月給制の場合,基礎賃金額は,月によって定められた賃金額を所定労働時間数(月によって異なる場合は1年間における1月平均所定労働時間数)で割った金額です(労働基準法施行規則19条1項4号)。
また,時間外労働をした場合,所定賃金に時間外労働時間分の賃金は含まれていませんので,通常の時間当たりの賃金に加え,割増分の賃金が請求できます(割増率は1.25となります。)。

例えば,ある月の労働時間が240時間(所定労働時間160時間,時間外労働時間80時間)で,賃金が36万円の場合,基礎賃金額は2250円(=36万円÷所定労働時間160時間)となり,割増賃金として22万5000円(=2250円×80時間×1.25)を請求することができます。

 

これに対し,歩合給・出来高給は,総労働時間における労働の対価です。
そのため,基礎賃金は,賃金算定期間における賃金総額を総労働時間で割った金額となります(労働基準法施行規則19条1項6号)
また,時間外労働をした場合には,割増分についてのみ請求できます(割増率は0.25となります。)。

例えば,ある月に240時間働き,歩合給として36万円もらった場合,1時間当たりの基礎賃金額は1500円(=36万円÷240時間)となります。時間外労働時間が80時間の場合,割増賃金として3万円(=1500円×80時間×0.25)を請求することができます。

 

三 固定給と歩合給の場合

賃金に固定給部分と歩合給部分がある場合には,固定給部分と歩合給部分に分けてそれぞれ割増賃金を算定します。

例えば,ある月の労働時間が240時間(所定労働時間160時間,時間外労働時間80時間)で,賃金が固定給24万円,歩合給12万円の場合, 固定給部分については,基礎賃金額は1500円(=24万円÷160時間)であり,割増賃金額は15万円(=1500円×80時間×1.25)となり,歩合給部分については,基礎賃金額は500円(=12万円÷240時間)となり,割増賃金額は1万円(=500円×80時間×0.25)となり,合計で16万円の割増賃金を請求することができます。

 

四 まとめ

以上のように,歩合給・出来高給の場合でも,時間外労働等をしていたときには割増賃金を請求することができますが,月給制の場合とでは計算方法が異なりますので,同じ時間,同じ賃金で働いたとしても,月給の場合と歩合給・出来高給の場合とでは残業代の金額は異なります。

 

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