【刑事弁護】保釈とは
1 保釈とは
保釈とは、刑事事件で起訴された人(被告人)が拘置所等で身柄拘束(勾留)されている場合に一定の保証金の納付と引き換えに被告人の身柄拘束を解く制度です。
保釈は起訴された後の制度ですので、起訴される前に保釈されることはありません。
また、保釈をするにあたっては、保釈保証金の用意が必要となります。
2 保釈を請求できる人
①勾留されている被告人、②弁護人、③法定代理人、④保佐人、⑤配偶者、⑥直系の親族、⑦兄弟姉妹は保釈を請求することができます(刑事訴訟法88条1項)。
3 保釈の手続
通常の場合、保釈の手続は以下のように進みます。
①保釈請求書と身元引受書等の添付資料を裁判所に提出します。
②裁判所は検察官に意見を聴取します(刑事訴訟法92条)。
③裁判官と面接(面接を希望する場合)
④保釈許可決定又は却下決定
⑤許可決定がでた場合には保釈保証金の納付
⑥被告人の釈放
4 保釈の種類には3つあります
保釈には、権利保釈、裁量保釈、義務的保釈の3つがあります。
(1)権利保釈
保釈請求があったときは、以下の①から⑥の場合を除いては、これを許さなければならないとされています(刑事訴訟法89条本文)。
①被告人が死刑、無期又は短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪を犯したものであるとき
②被告人が前に死刑、無期又は長期10年を超える懲役・禁錮に当たる罪につき有罪宣告を受けたことがあるとき
③被告人が常習として長期3年以上の懲役・禁錮に当たる罪を犯したものであるとき
④被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
⑤被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者やその親族の身体・財産に害を加え、又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき
⑥被告人の氏名又は住所が分からないとき
権利保釈が認められない理由としてよく挙げられるのは、④や⑤です。
ですから、保釈請求する場合には、罪証隠滅のおそれがないことや、被害者等への加害行為や畏怖行為のおそれがないことを具体的に主張する必要があります。
(2)裁量保釈
上記の例外に当たる場合であっても、裁判所が適当と認めるときは、職権で保釈を許可することができます(刑事訴訟法90条)。
保釈の必要性や逃亡のおそれがないこと(身元引受人が存在すること等)等を主張するとともに、主張を裏付ける資料(身元引受書等)を提出します。
(3)義務的保釈
勾留による拘禁が不当に長くなったときは、裁判所は、勾留を取り消さない限り、請求又は職権で保釈を許さなければならないとされています(刑事訴訟法91条1項)。
5 保釈保証金・保釈の条件
(1)保釈保証金
保釈をするにあたっては、保証金額が定められます(刑事訴訟法93条1項)。
保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならないとされています(刑事訴訟法93条2項)。
保釈保証金の額は事案により異なりますが、通常の執行猶予が見込まれるような事案では、200万円程度となることが多いです。
保証金の納付があった後に保釈されます(刑事訴訟法94条1項)。
なお、裁判所の許しがあれば、有価証券又は被告人以外の者の差し出した保証書を保証金の納付に代えることができます(刑事訴訟法94条3項)
(2)保釈の条件
保釈にあたっては、被告人の住居の制限、その他適当と認める条件が付されます(刑事訴訟法93条3項)。
6 保釈保証金が取り上げられる場合(没取)
保釈が許可されても、以下の①から⑤のうち一つでも当てはまると,検察官の請求又は職権により、保釈は取り消され、保釈保証金の全部又は一部が没取されてしまうことがあります(刑事訴訟法96条1項、2項)。
①被告人が召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき
②被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき
③被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
④被告人が被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者やその親族の身体・財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき
⑤被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき
また、保釈された者が、刑の言い渡しを受けその判決が確定した後、執行のため呼出を受け正当な理由がなく出頭しないとき、又は逃亡したときは、検察官の請求により、保証金の全部または一部が没取されます(刑事訴訟法96条3項)。
7 裁判終了後保釈保証金が返還されます
保釈が取り消され保釈保証金が没取されることがなければ、裁判終了後、保釈保証金は返還されます(刑事訴訟規則91条)。