【債権回収】債権を回収するにはどんな方法がありますか?
債権を有していても,債務者が履行してくれないことがあります。
債権者が債務者に履行を請求しても,債務者が様々な理由を主張して履行を拒むため,債権者ご自身では解決ができず,どのように債権回収をすればよいかお悩みのことと思います。
そこで,主な債権回収方法について,簡単に説明します。
一 債権回収の主な方法
1 交渉による回収
はじめから訴訟提起する等,裁判所を利用して債権回収することもできますが,まずは,交渉により債権回収を図ることが多いです。
交渉により債権回収ができれば,裁判所を利用する場合よりも,早期に解決を図ることができるからです。また,交渉が成立しなかった場合であっても,交渉することにより債務者の言い分が聞けるため,後で訴訟をする際の対策を立てることもできるというメリットもあります。
交渉する場合,通常は,まず内容証明郵便で,債務者に債務の履行を求めます。
内容証明郵便で請求するのは,請求の事実(遅延損害金の起算日や時効の中断において,いつ請求したのか問題となることがあります。)や交渉の経過を証拠として残すためです。
内容証明郵便で請求を出した後,債務者が請求どおり履行すれば解決です。
また,債務者が反論してきたり,支払条件について要望を出してきた場合であっても,当事者間で交渉して合意し,債務者が合意のとおり履行してきたときには,解決となります。
2 裁判所を利用した回収
(1)民事調停
民事調停とは,民事に関する紛争についての調停手続です。
調停が成立した場合には,裁判上の和と同一の効力を有します(民事調停法16条)。
簡易な手続であるため,債権者本人が弁護士に依頼しないで解決を図ろうとする場合に利用しやすい手続であるといえます。
ただし,民事調停は当事者の話し合いによる解決方法ですので,債務者が話し合いに応じない場合には,他の方法を検討すべきでしょう。
(2)支払督促
支払督促とは,金銭その他の代替物または有価証券の一定数量の給付を目的とする請求権について,簡易裁判所の書記官が債権者の申立により書類審査だけで発することができる簡易迅速な手続(民事訴訟法382条以下)です。
債権者が適法な申立をした場合,債務者が異議を申し立てなければ,裁判所書記官は債権者の申立により仮執行宣言を出しますので(民事訴訟法391条1項),債権者は強制執行をして債権を回収することができます。
ただし,債務者が適法な異議を申し立てた場合には,訴訟に移行しますので(民事訴訟法395条),最初から訴訟を提起する場合よりも,かえって時間がかかることがあります。
そのため,交渉の経過等から債務者が争ってくることが予想される場合には,支払督促ではなく,最初から訴訟を提起したほうが良いといえるでしょう。
(3)少額訴訟
少額訴訟は,60万円以下の金銭支払の請求を目的とする簡易裁判所での特別な訴訟手続です(民事訴訟法368条1項)。
原則として1回の期日で審理を終了し(民事訴訟法370条1項),直ちに判決が言い渡されますし(民事訴訟法374条1項),証拠も即時に取り調べることができるものに限定されているため(民事訴訟法371条),迅速な解決を図ることができます。
ただし,被告が訴訟を通常の手続に移行させる旨の陳述をしたときは,通常の手続に移行します(民事訴訟法373条1項,2項)。また,判決について不服がある場合には,異議を申し立てると(民事訴訟法378条)口頭弁論終結前に戻り,通常の訴訟手続が行われます(民事訴訟法379条)。
(4)民事訴訟(通常訴訟)
地方裁判所または簡易裁判所に訴訟を提起し,判決または和解の成立により債権の回収を図ります。
判決が確定した場合や和解が成立した場合,債権者は債務名義を有しますので,債務者が履行しない場合であっても,強制執行をして債権を回収することができます。
訴額(訴訟の目的の価額)が140万円を超えない場合は簡易裁判所に訴訟を提起します。
訴額が140万円を超える場合には地方裁判所に訴訟を提起します。
二 債権回収でお悩みの方へ
債権回収については,法的手続をとらないと解決ができない場合があります。
また,債務者が様々な反論をしてくることがあり,その場合には債権者も法的な主張をして争わなければなりません。
そのため,ご自身で解決することができず,悩まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような場合には,弁護士に相談,依頼することをご検討ください。