【交通事故】遺族年金の損益相殺
2019-01-29
交通事故で亡くなった被害者の相続人が遺族年金を受給した場合,損害賠償額の算定にあたって遺族年金の受給額が控除されます。
一 遺族年金の受給による損益相殺
損益相殺とは,不法行為の被害者が,損害を被るのと同一の原因により利益を得た場合に,その利益の額を賠償すべき損害額から控除することをいいます。民法に損益相殺の規定はありませんが,公平の見地から認められています。
交通事故で亡くなった被害者の相続人が遺族年金を受給した場合には,交通事故により利益を受けたといえますので,損益相殺されることになります。
二 控除する遺族年金の範囲
損益相殺は損害が現実に補填されたといえる範囲に限られべきであることから,損害額から控除されるのは既に給付を受けた金額または支給を受けることが確定した金額に限られます。
未だ支給が確定していない金額については,給付を受けられるかどうか不確実ですので,控除されません。
三 控除される損害
損益相殺は給付と同一性のある損害について行われます。
そのため,遺族年金の受給により控除される損害は逸失利益に限られます。慰謝料等,他の損害項目からは控除されません。
また,控除される逸失利益は,年金収入の逸失利益に限らず,給与収入等他の逸失利益も含まれます。
四 控除される相続人の範囲
被害者の相続人の範囲と遺族年金の受給権者の範囲は異なりますので,被害者の相続人には遺族年金を受給できる人とそうでない人がいます。
遺族年金を受給した相続人の損害額から控除されますが,遺族年金を受給していない相続人の損害額からは控除されません。
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