【交通事故】年金の逸失利益性(死亡事故の損害)

2019-01-20

交通事故の被害者が亡くなり,生きていれば受給できた年金が亡くなったことにより受給できなくなることがあります。その場合,年金を受給することができなくなったことが損害と認められるか問題となります。

 

一 逸失利益性が認められる年金の種類

年金には様々な種類があり,逸失利益性が認められるものと,認められないものがあります。

 

1 逸失利益性が認められる年金

退職年金,老齢年金,障害年金等,被害者が保険料を拠出しているものについては,逸失利益性が認められます。

 

2 逸失利益性が否定される年金

障害年金の加給分や遺族年金等,被害者が保険料を拠出しておらず,社会保障的性格のものや一身専属的なものについては,逸失利益性が否定されています。

なお,遺族年金の受給により,支給が停止された年金がある場合には,遺族年金の逸失利益は認められませんが,支給が停止された年金について逸失利益を認める裁判例があります。

 

二 被害者が亡くなった時点で年金を受給していなかった場合

被害者が亡くなった時点で既に年金を受給している場合は年金の逸失利益性が認められることは問題ないですが,亡くなった時点で未だ年金を受給していない場合には,逸失利益性が認められるか問題となります。

 

1 年金の受給資格がある場合

被害者が亡くなった時点で未だ年金を受給していないが,受給資格があった場合には,将来年金を受給することができたといえますので,逸失失利益性が認められるものと解されます。

 

2 年金の受給資格がない場合

被害者が亡くなった時点で,年金の受給資格がなかった場合には,年金を受給できるか不確実であるので,逸失利益性が否定されるものと解されます。
もっとも,受給資格をみたす直前であった等,年金を受給できる蓋然性が高いときには,逸失利益性が認められることがあります。

 

三 年金の逸失利益の計算方法

死亡逸失利益は,一般的には,「基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」という計算式で算定しますが,年金の逸失利益については以下のように計算します。

 

1 基礎収入額

死亡時に既に年金を受給していた場合には,その受給額を基礎収入額として逸失利益を算定します。
死亡時に年金を受給していない場合には,受給できるときの見込額を基礎収入額として算定します。

 

2 生活費控除額

年金収入は生活費に当てられる割合が高くなるのが通常であると考えられますから,年金収入の逸失利益は稼働収入の逸失利益の場合と比較して生活費控除率を高くする傾向があります。

なお,被害者に稼働収入と年金収入がある場合には,①稼働収入の逸失利益と年金収入の逸失利益を分けて計算し,年金収入の生活費控除率を稼働収入の生活費控除率より高く計算する方法と,②稼働している期間と年金収入のみの期間を分けて,年金収入のみの期間の生活費控除率を高く算定する方法があります。

 

3 期間

逸失利益の算定において就労可能年数は原則として67歳までとされていますが,年金の場合は平均余命までの期間で計算します。

 

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