【不動産問題】私道トラブルと私道通行権

2018-07-12

私道とは,土地所有者等,権原を有する人が私的に利用する道路のことです。
私道は私有地ですので,所有者(または共有者)以外の人の通行をめぐってトラブルになることがありますが,どのような場合に私道の通行が認められるのでしょうか。また,通行が妨害された場合,どのような対応をすることができるのでしょうか。

一 私道通行権

私道は私有地ですので,私道を通行するには,原則として通行権がなければなりません。
私道通行権としては,①囲繞地通行権,②通行地役権,③債権的通行権,④通行の自由権等があります。

 

1 囲繞地通行権

(1)囲繞地通行権

他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者は,公道に至るため,その土地を囲んでいる他の土地(囲繞地)を通行することができます(民法210条1項)。
池沼,河川,水路,海を通らなければ公道に至ることができないときや,崖があって土地と公道に著しい高低差があるときも通行ができます(民法210条2項)。

この通行権は,法律上当然に認められる通行権(法定通行権)です。

 

(2)通行の場所・方法

通行の場所,方法は,通行権者のために必要であり,かつ他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければなりません(民法211条1項)。

 

(3)通路の開設

通行権者は,必要があるときは,通路を開設することができます(民法211条2項)。

 

(4)償金の支払

通行権者は通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければなりません(民法212条)。

 

(5)分割による場合

分割によって公道に通じない土地が生じたときは,その土地の所有者は,公道に至るため,他の分割者の所有地のみを通行することができます。この場合,償金の支払は不要です(民法213条1項)。
また,土地の所有者がその土地の一部を譲渡した場合にも準用されます(民法213条2項)。

 

2 通行地役権

(1)通行地役権

地役権とは,他人の土地(承役地)を自己の土地(要役地)の便益に供する権利であり(民法280条),通行地役権とは,他人の土地を自己の土地のために通行の用に供する権利のことです。
通行地役権は,承役地の所有者と要役地の所有者との間の明示または黙示の設定契約による場合や時効取得による場合があります。
また,地役権は物権ですので,登記しないと第三者に対抗できないのが原則です(民法177条)。

 

(2)通行地役権の時効取得

地役権は,継続的に行使され,かつ,外形上認識することができるものに限り,時効によって取得することができます(民法283条)。
「継続」といえるには,要役地所有者が,承役地上に通路が開設したことを要すると解されています。
また,時効期間は,10年(善意無過失の場合)または20年(善意無過失でない場合)です(民法163条)。

 

3 債権的通行権

私道の所有者との賃貸借契約や使用貸借契約による通行権(債権的通行権)もあります。
債権的通行権は契約による通行権であり,通行権の内容は契約によって異なりますし,契約当事者間で効力を有するものですから,所有者がかわった場合に通行権が認められるか問題となります。

 

4 通行の自由権

現実に開設されている建築基準法上の道路(道路位置指定を受けている私道等)を通行することについて,日常生活上不可欠の利益を有している人は,道路の通行を所有者に妨害されているか,またはそのおそれがある場合,特段の事情がない限り,通行の妨害の排除または予防を求める人格的権利を有するものと解されています。

建築基準法上の道路について公衆が通行することは公法上の反射的な利益にすぎませんが,その道路の通行に日常生活上不可欠の利益を有している人については人格的な権利として私法上保護されます。

 

二 通行を妨害された場合の対応

1 通行権の確認請求

通行権の存否について争いがある場合には,通行権の確認請求をすることが考えられます。

 

2 通行地役権設定登記請求

通行地役権について未登記の場合には通行地役権設定登記請求をすることが考えられます。

 

3 妨害排除請求

私道に塀や柵を作る等,現実に通行を妨害されている場合には,妨害排除請求をすることが考えられます。
緊急性が高い場合には,仮処分を検討すべきでしょう。

 

4 損害賠償請求

通行を妨害されたことにより損害を被った場合には,損害賠償請求をすることが考えられます。

 

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