【離婚】養育費(簡易算定方式と簡易算定表)
養育費の算定方法としては,簡易算定方式を用いる方法と簡易算定表を用いる方法があります。
表にあてはめるという分かりやすさから,簡易算定表を用いて養育費を算定することが多いですが,簡易算定表は標準的なケースを想定したものであり,事案によっては簡易算定表がつかえない場合があります。
その場合には,簡易算定方式を基に,養育費を算定することになりますので,簡易算定方式の考え方を理解しておく必要があります。
※算定方式・算定表は改訂されました(令和元年12月23日公表)。基本的な考え方は変わっておりませんが,このページの計算例などは改訂前のものですのでご注意ください。
算定方式・算定表の改訂についてはこちら→https://nagaselaw.com/【離婚】養育費・婚姻費用の算定方式・算定表の/
1 簡易算定方式
(1)簡易算定方式とは
簡易算定方式は,子が義務者(子を養育していない親)と同居していると仮定した場合に子のために消費される生活費を計算し,これを義務者と権利者(子を養育している親)の収入で按分して義務者が支払うべき養育費を算定する方式です。
養育費の支払は,生活保持義務(自分と同程度の生活を保障する義務)に基づくものであるため,義務者は,子が自分と同程度の生活ができるように,権利者との間で,子の生活費を分担します。
(2)簡易算定方式での養育費算定の基準
養育費算定の手順は以下のとおりです。
①権利者と義務者の基礎収入(収入のうち生活に充てられる分)を算定します。
給与所得者の場合,基礎収入は,総収入額から公租公課,職業費(被服費,交通費等),特別経費(住居費等)を控除した金額であり,概ね総収入の34%から42%の範囲(高額所得者ほど低い)とされております。
給与所得者の基礎収入=総収入額-公租公課-職業費-特別経費
自営業者の場合,基礎収入は,所得金額から公租公課,特別経費を控除した金額であり,概ね総所得の47%から52%の範囲(高額所得者ほど低い。)とされております。
自営業者の基礎収入=所得金額-公租公課-特別経費
②義務者が子と同居していると仮定して,義務者の基礎収入を義務者の生活費と子の生活費に按分します。
親の生活費の割合(生活費指数)を100とすると,0歳から14歳の子の割合を55,15歳から19歳の子の割合を90として計算します。
子の生活費=義務者の基礎収入×子の生活費指数÷義務者と子の生活費指数
③子の生活費を義務者と権利者の基礎収入で按分します。
養育費の額=子の生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
(3)計算式
養育費(月額)
=義務者の基礎収入×子の生活費指数÷義務者と子の生活費指数
×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)÷12
例えば,10歳の子と8歳の子がいる夫婦が離婚し,母(年収100万円の給与所得者,基礎収入38万円)が子2人の親権者となり,父(年収400万円の給与所得者,基礎収入156万円)に養育費を請求した場合
養育費(月額)
=156万円×(55+55)÷(100+55+55)×156万円÷(156万円+38万円)÷12=5万4757円
2 簡易算定表
簡易算定表は,標準的なケースについて,簡易算定方式に基づいて算定される養育費を1万円または2万円の幅で表に整理したものです。
簡易算定表には,①子1人(0~14歳),②子1人(15~19歳),③子2人(第1子及び第2子0~14歳),④子2人(第1子15~19歳,第2子0~14歳),⑤子2人(第1子及び第2子15~19歳),⑥子3人(第1子,第2子及び第3子0~14歳),⑦子3人(第1子15~19歳,第2子及び第3子0~14歳),⑧子3人(第1子及び第2子15~19歳,第3子0~14歳),⑨子3人(第1子,第2子及び第3子15~19歳)の9種類があり,権利者が養育している子の人数や年齢があてはまる表を用います。
表の縦軸を義務者の年収(給与所得者の場合0円~2000万円,自営業者の場合0円~1409万円),横軸を権利者の年収(給与所得者の場合0円~1000万円,自営業者の場合0円~710万円)とし,縦軸の義務者の年収が表示されているところから横に延ばした線と,横軸の権利者の年収が表示されているところから縦にのばした線の交わるところの数値が養育費の金額(月額)となります。
年収については,給与所得者の場合は源泉徴収票の「支払金額」であり,自営業者の場合は,確定申告書の「課税される所得金額」(ただし諸々修正されます。)です。
例えば,10歳の子と8歳の子がいる夫婦が離婚し,母(年収100万円の給与所得者)が子2人を養育し,父(年収400万円の給与所得者)に養育費を請求した場合,簡易算定表によると,養育費は月額4万円から6万円の範囲となります。
3 簡易算定表がつかえない場合
①簡易算定表は,子が1人から3人までの場合しかありません。
そのため,子が4人以上いる場合には,簡易算定方式により養育費を算定することになります。
②簡易算定表は,権利者のみが子を養育していることが前提となっております。
そのため,義務者も子を養育している場合や,義務者が再婚している場合等,他に養育,扶養する者がいる場合には,どのように養育費を算定するか問題となります。
③簡易算定表では,給与所得者の場合と自営業者の場合しかありません。
それ以外の場合(年金収入の場合等),養育費をどのように算定するのか問題となります。
④簡易算定表では,収入に上限があります。
義務者の年収が算定表の上限を超える場合,養育費の額をどのように算定するか問題となります。
⑤簡易算定表では,標準的な生活費を基にしております。
例えば,教育費について,簡易算定表では,子が公立学校に通うことを前提としていますが,子が私立学校に通う等,特別な事情がある場合には,養育費をどのように算定するか問題となります。