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【交通事故】素因減額
例えば、事故自体は軽微であったのに、交通事故被害者の精神的な要因や事故前からの病気により、通常よりも傷害が重くなり、治療が長期化することがあります。
そのような場合に、加害者に損害の全部を賠償させるのは公平ではなく、加害者の損害賠償額を減額すべきではないかというのが、素因減額の問題です。
1 素因減額とは
素因減額とは、被害者の精神的性質(心因的要因)や疾患・既往症、身体的特徴(身体的要因)といった被害者の素因により、交通事故による損害が発生・拡大した場合に、公平の見地から、損害賠償額を減額することをいいます。
この点、損害賠償額が減額されるかどうかという以前に、交通事故と損害との間に因果関係があるかどうかが争いとなることもあります。
例えば、交通事故の被害者が亡くなったが、事故前から病気を抱えていた場合に、加害者側が、被害者は交通事故が原因で亡くなったのではなく、病気が原因で亡くなったのだと主張して、因果関係が争われることがあります(因果関係のない損害について、加害者は賠償義務を負いません。)。
これに対し、素因減額とは、交通事故と損害との間に因果関係があることを前提に、被害者の素因が損害の発生・拡大に影響している場合に、民法722条の過失相殺の規定を類推適用して、損害賠償額を減額することです。
先の例でいえば、交通事故により被害者が亡くなったが、被害者が病気を抱えていたことも影響している場合に、素因減額の問題となります。
素因減額が問題となる場合としては、心因的要因による場合と身体的要因による場合がありますので、それぞれの場合について簡単に説明します。
2 心因的要因による素因減額
例えば、被害者の性格等の心理的な要因により、通院が非常に長期間続いた場合に、加害者に損害の全部を賠償させることは公平を失します。
そのため、被害者に発生した損害が通常発生する程度、範囲を超えるものであり、損害の拡大に被害者の心因的要因が関与している場合には、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、減額されることがあります。
3 身体的要因による素因減額
(1)被害者に病気(疾患・既往症)がある場合
交通事故の被害者に疾患や既往症があり、損害の発生や拡大に影響している場合に、加害者に損害の全部を賠償させることは公平を失するといえます。
そのため、交通事故の被害者に疾患や既往症があり、その疾患や既往症が損害の発生又は拡大に寄与していることが明白な場合には、損害賠償額の算定にあたって考慮されることがあります。
(2)被害者が高齢の場合
高齢になるにつれ、体力が低下したり、身体が弱くなったりするため、高齢者が交通事故にあった場合に損害が発生・拡大することがあります。
しかし、年をとれば、体力が低下したり、身体が弱くなったりするのは通常のことであり、高齢であること自体から素因減額するのは相当ではありません。
また、高齢者には骨が弱くなる等、加齢的変性がありますが、年齢相応の加齢的変性の場合にまで素因減額するのは相当ではなく、交通事故の被害者に疾患といえるような状態であったと認められない限り、損害賠償額の算定において考慮されないと考えられます。
(3)被害者の身体的特徴
例えば、被害者に通常よりも首が長い、肥満である等の身体的特徴がある場合です。
被害者に通常と異なる身体的特徴があったとしても、個々人の個体差の範囲として当然にその存在が予定されている範囲の身体的特徴についてまで、素因減額するのは相当ではありません。
そのため、身体的特徴が、疾患に比肩すべきものであり、かつ、被害者が負傷しないように慎重な行動をとることが求められるような特段な事情がない限り、損害賠償額算定において考慮されることはないと考えられます。
4 まとめ
以上のように、被害者の心因的要因や身体的要因がある場合には、素因減額が問題となります。
素因減額されるかどうか、されるとして、どの程度減額されるかどうかについては、個別具体的に判断されることになりますので、素因減額が問題となる事案では、具体的な事情や裁判例を慎重に検討する必要があります。
そのため、素因減額が問題となる事案では、弁護士にご相談ください。

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【相続】葬儀費用は誰が負担するの?
大切な家族が亡くなるのは考えたくないことですから、家族が亡くなったときの葬儀費用を誰が負担するかをあらかじめ話し合っていないケースも少なくないでしょう。また、葬儀は、ご家族が亡くなった直後に行われるものですので、誰が負担するかきちんと話し合わずに行い、後で遺産分割のときに話し合われることもあるかもしれません。葬儀費用は安いものではないので、相続人間で誰が負担するか問題となることがよくあります。
結論からいうと、葬儀費用を誰が負担することになるかについては、民法には規定はありませんし、実務上も定まっておりません。
葬儀費用を誰が負担するかについては、以下のような様々な見解があります。
①相続人が共同で負担するとする見解
相続債務と同じように考え、相続人が法定相続分に応じて負担するという考えです。
②相続財産から負担するとする見解
民法858条の相続財産に関する費用に含まれるとする考えです。
③喪主が負担するとする見解
実質的に葬儀を主催したものが負担するとする考えです。
④慣習や条理により誰が負担するか決めるとする見解
もっとも、相続人全員が合意すれば、葬儀費用を遺産分割において清算することもできます。
そのため,遺産分割協議の際、様々な事情を考慮して誰が葬儀費用を負担するか、相続人みんなが納得できるように話し合いをするのがよいでしょう。
なお、香典がある場合には、葬儀費用の一部にあてます。余りがある場合には、どのように処理するかについても様々な見解があります。

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【遺言】息子夫婦にお世話になりました。
自分が亡くなった後に家族が相続で争わないようにしたいとお考えの方が多いでしょう。そのために,日頃から家族みんなが仲良くするように心を砕くことも大切なことですが,あらかじめ争いのもとをなくしておくことも重要です。今回は,遺産分割の際によく争いになる問題と,それを解決しておくにはどうすればよいかをご紹介しますので,参考にしてください。
遺言がなく相続が開始し,相続人間で遺産分割の話し合いになったときに,よく争いになるのは,亡くなった人(被相続人)に対する貢献を相続においてどの程度考慮するかという問題です。子のひとりはよく世話をしてくれるけれど,他の子は顔を見せてくれることもほとんどない,あるいは,子はみんなよく世話をしてくれるけれど,その程度に差があるという状況ですと,将来相続になったときに争いになる可能性がありますが,心当たりはありませんか。
相続人が,生前の被相続人のために尽くしてきたという思いがあると,それを遺産分割の際に考慮してほしいと思うのは人情でしょう。
しかし,通常,遺言がないと,法定相続分に従って遺産分割が行われることになります。また,相続人の貢献を寄与分として相続分に加えることができるのは,「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者」(民法904条の2第1項)に限られます。ですから,被相続人のために一生懸命世話をしたとしても,法律上寄与分として考慮されるには,相続人の世話のおかげで看護をする人を雇うための費用の支出をしなくて済んだというような事情,つまり,財産上の効果が伴うことが必要です。通常のお世話は親族として当然と考えられるためです。
また,遺言がないと,相続人でなければ相続することができませんし,寄与分を考慮されるのも相続人に限られますので,相続人以外の人が被相続人のために尽くした場合に,その貢献を考慮することができません。
そのため,例えば,長男とその妻が,身体が不自由な父を一生懸命お世話したので,父の遺産分割の際に考慮してほしいと思っても,次男などの他の相続人があくまで法定相続分に従った遺産分割をすることを主張した場合,相続人間で争いになり,最終的には長男夫婦にとって不満が残る結果となってしまいかねません。これは例えですが,実際に,このような不満をもって相談に来られる方は多くいらっしゃいます。
そのような争いを未然に防ぎ,自分のために尽くしてくれた人の労に報いるためには,遺言を作成し,相続人の貢献に応じて相続分を決め,相続人でない人に遺産を遺すという内容にしておくということが考えられます。ただし,その場合でも遺留分の問題は残ります。
遺言の作成の際には,ご相談ください。

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財産分与
離婚に際して、当事者の関心が高いのは、財産分与です。
財産分与を請求する側(請求者)としては、どれだけ分与を受けることができるのか
財産分与を請求される側(義務者)としては、どれだけ分与しなければならないのか
気になることでしょう。
そこで、これから財産分与について簡単に説明します。
一 財産分与請求権
民法768条1項「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。」、2項本文「前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に変わる処分を請求することができる。」と規定しており、離婚をした夫婦の一方は他方に対して財産分与請求をすることができます。
二 財産分与の内容
1 財産分与の三つの要素
民法768条3項は「前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。」と規定しておりますが、具体的には、財産分与において考慮される要素として、①清算的要素、②扶養的要素、③慰謝料的要素があります。
このうち、①清算的要素が財産分与の中心です。
2 清算的要素
夫婦が婚姻中に築いた財産を清算することです。
(1)財産分与の対象となる財産
夫婦が婚姻中に取得した共有財産や、一方の単独名義であっても実質的には共有といえる財産は財産分与の対象となります。
これに対し、夫婦が婚姻前から有していた財産や相続により取得した財産は、特有財産として、財産分与の対象とならないのが原則です。
(2)いつの時点の財産を分与するのか
夫婦が別居した以降は、夫婦が協力して財産を形成したとはいえません。
そのため、別居時点の財産が分与の対象となるのが、原則です。
ただし、別居後についても、過去の婚姻費用や養育費が財産分与において清算の対象となることはあります。
(3)財産の評価
財産分与は、金銭の支払で行われる場合が多く、その場合には、財産をいつの時点で評価するのか問題となりますが、その場合には、離婚時点で評価するのが原則です。
(4)分与の割合
夫婦は財産の形成につき、同程度の貢献をしたとみて、特段の事情がない限り2分の1とされています。
そのため、清算的財産分与については、原則として以下のように計算します。
清算的財産分与の額=(請求者の財産+義務者の財産)÷2-請求者の財産
3 扶養的要素
高齢である、病気がある等扶養が必要な状態であり、清算的財産分与や慰謝料だけでは、離婚後の生活保持が困難な場合に、補充的に考慮されることがあります。
扶養的財産分与については、①請求者が要扶養状態にあること、②義務者に扶養能力があることが要件となります。
4 慰謝料的要素
財産分与において、慰謝料的な要素を考慮することもあります。
もっとも、離婚に際して、財産分与とは別個に、慰謝料請求をすることもできますので、両方請求している場合には、財産分与に慰謝料的な要素を考慮した場合には、その分慰謝料額を少なくする、十分な慰謝料額を認定した場合には財産分与において慰謝料的要素を考慮しない等、調整されます。
三 財産分与の請求方法
1 協議
民法768条1項は、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。」と規定しており、離婚に際して、夫婦の一方は他方に対し、財産分与請求をすることができ、協議の上、財産分与の取り決めをすることができます。
2 調停・審判
財産の分与について、当事者間で協議して取り決めることができないときは、当事者は、家庭裁判所に、財産分与の調停又は審判を申し立て、財産分与の請求をすることもできます(民法768条2項)。
3 離婚訴訟の附帯処分
離婚訴訟の附帯処分として財産分与を請求することができます(人事訴訟法32条1項)。
四 財産分与請求ができる期間
離婚の時から2年を経過すると、財産分与請求ができなくなりますので(民法768条2項但書)、ご注意ください。

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【離婚】表面上はうまくいっています。でも、離婚したいんです。
離婚というと重苦しい話になりがちですが,近ごろは,離婚を明るく扱ったテレビドラマや書籍が,よく見受けられるようになりました。みなさんも,ドラマや本を見て,「そうそう,その気持ち分かる」という経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。自分だけじゃないんだと思うと,勇気づけられますよね。そういう意味では,以前に比べると,離婚のことを語りやすい雰囲気にはなってきているように感じます。
しかし,実際に夫婦関係で悩んでいる人にとっては,周囲に相談しても,「そんなことくらいで」とか,「あなたにも悪いところがあるんじゃないの」などと言われ,誰にも自分の気持ちを分かってもらえないと絶望して,心を閉ざしてしまうこともありがちです。夫婦の問題は,非常にプライベートな空間で起こることであり,日常の些細な出来事の積み重ねに端を発していることも多いので,他人からは理解されにくいものです。そうすると,ますます悩んでしまって,悪循環に陥り,感情的にこじれにこじれてしまいます。
離婚問題に発展する夫婦のうち,表面上はこれといって大きな問題があったわけではないのに,突然妻から夫に離婚を求めたケースでは,特にその傾向が強いように思います。
離婚問題といっても,千差万別で,人によって違うのはもちろんなんですが,妻が日頃の夫の言動に不満を募らせ,ついには,「もう,顔を見るのもイヤ」という状況になっても,当の夫は,離婚を求められるまで妻の気持ちに全く気付かないという,離婚に対する夫と妻の温度差は,多くの夫婦が共感できるのではないでしょうか。
その原因としては,すでに多くの文献でも紹介されているところですが,男女で物事の感じ方や考え方が違うということが考えられます。実際の離婚事件に関わっていると,物事の感じ方や考え方が男女でこんなに違うのかと考えさせられることがしばしばです。そのために,復縁や離婚条件の話し合いをしようにも,夫と妻で話がかみ合わず,ますます関係が悪化し,泥沼の離婚劇になってしまうこともあります。
そうならないためにも,早期に第三者を交えた話し合いをし,必要以上にお互いのことを傷つけあわないような解決を目指してください。そんなとき,私達がお力になります。

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養育費
子供がいる夫婦が離婚する場合、どちらが子供の親権者となるか決めなければなりません。
また、その際、養育費の支払をどうするかについても決めることになりますが、養育費がいくらになるか、あるいは、話がまとまらない場合にどのようにして養育費を決めるのか、関心があることと思われます。
そこで、養育費について簡単に説明します。
※算定方式・算定表は改訂されました(令和元年12月23日公表)。基本的な考え方は変わっておりませんが,このページの計算例などは改訂前のものですのでご注意ください。
算定方式・算定表の改訂についてはこちら→https://nagaselaw.com/【離婚】養育費・婚姻費用の算定方式・算定表の/
一 養育費とは
民法766条1項は、「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」と規定しており、離婚にあたっては、子の監護に要する費用(養育費)を定めなければなりません。
また、民法766条2項は、「前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。」と規定しており、家庭裁判所で養育費を決めることができます。
養育費の根拠は親の子に対する扶養義務です。
扶養の程度に関し、生活保持義務(自分と同程度の生活を保持する義務)と生活扶助義務(自分の生活を犠牲にしない限度で、最低限の生活を扶助する義務)がありますが、養育費の支払については、生活保持義務であるとされております。
二 養育費の支払はいつから(始期)いつまで(終期)か
1 始期
調停で養育費の支払を決める場合、調停が成立した月から養育費の支払を始めると定めることが一般的です。
また、過去の養育費を請求して争われた事例では、請求時を始期とする例、離婚時を始期とする例、別居時を始期とする例、扶養可能時を始期とする例等がありますが、請求時(調停・審判申立時)を始期とすることが多いようです。
2 終期
子が成人に達するまでとするのが一般的です。
もっとも、未成年であっても子が学校を卒業し働いて経済的に自立している場合には扶養の必要はないといえます。
他方、親の学歴や経済力によっては、子が成人に達しても、大学を卒業するまで養育費を支払うとされることもあります。
三 養育費の算定方法
養育費は、簡易算定方式及び簡易算定表を用いて算定するのが一般的です。
1 簡易算定方式
子が義務者と同居していると仮定した場合に子のために消費される生活費を計算し、これを義務者と権利者の収入で按分して、義務者が支払うべき養育費を算定します。
(1)権利者と義務者の基礎収入を算定します。
①給与所得者の場合
総収入額から公租公課、職業費(被服費、交通費等)、特別経費(住居費等)を控除した金額であり、概ね総収入の34%から42%の範囲(高額所得者ほど低い)とされております。
基礎収入=総収入-公租公課-職業費-特別経費
②自営業者の場合
所得金額から公租公課、特別経費を控除した金額であり、概ね総所得の47%から52%の範囲(高額所得者ほど低い。)とされております。
基礎収入=総所得-公租公課-特別経費
(2)義務者の基礎収入を義務者の生活費と子の生活費に按分した上で、子の生活費を義務者と権利者の基礎収入で按分して、義務者が負担する養育費を算定します。
親の生活費の割合(生活費指数)を100とすると、0歳から14歳の子の割合は55、15歳から19歳の子の割合は90として計算します。
養育費
=義務者の基礎収入×子の生活費指数÷義務者と子の生活費指数
×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
例えば、10歳の子と8歳の子がいる夫婦が離婚し、母(年収100万円の給与所得者で基礎収入は42万円)が子2人の親権者となり、父(年収400万円の給与所得者で基礎収入は152万円)に養育費を請求した場合
養育費
=152万円×(55+55)÷(100+55+55)
×152万円÷(152万円+42万円)
=約62.4万円(月額 約5万2000円)
(3)権利者の収入が義務者の収入を上回る場合
子が権利者と同居している場合の生活費を基準とすることも考えられますが、その場合、権利者の収入が高くなるほど、義務者の支払う養育費が高くなり、義務者に酷になります。
そこで、権利者の収入が義務者の収入を上回る場合には、権利者の収入を義務者の収入と同一であると仮定して、養育費を計算します。
2 簡易算定表
簡易算定方式に基づいて算定される養育費を1万円または2万円の幅で表に整理したものです。
表には、①子1人(0~14歳)、②子1人(15~19歳)、③子2人(第1子、第2子0~14歳)、④子2人(第1子15~19歳、第2子0~14歳)、⑤子2人(第1子、第2子15~19歳)、⑥子3人(第1子、第2子、第3子0~14歳)、⑦子3人(第1子15~19歳、第2子、第3子0~14歳)、⑧子3人(第1子、第2子15~19歳、第3子0~14歳)、⑨子3人(第1子、第2子、第3子15~19歳)があります。
縦軸を義務者の年収(給与所得者の場合と自営業者の場合があります。)、横軸を権利者の年収(給与所得者の場合と自営業者の場合があります。)とし、縦軸から横に延ばした線と横軸から縦にのばした線の交わるところの数値が養育費の金額となります。
年収については、給与所得者の場合は源泉徴収票の「支払金額」であり、自営業者の場合は、確定申告書の「課税される所得金額」(ただし諸々修正されます。)です。
例えば、10歳の子と8歳の子がいる夫婦が離婚し、母(年収100万円の給与所得者)が子2人の親権者となり、父(年収400万円の給与所得者)に養育費を請求した場合、簡易算定表によると、養育費は月額4万円から6万円の範囲となります。
四 養育費の請求方法
1 養育費を決める方法
(1)協議
当事者間の協議で養育費を決めることができます。
執行受諾文言のある公正証書にした場合には、債務名義として強制執行をすることができます。
(2)調停
協議離婚後に養育費を請求する場合には、相手方の住所地または合意で定める家庭裁判所(家事事件手続法245条1項)に養育費の申立てをすることができます。
また、離婚調停の申立に付随して養育費の支払いを申し立てることができますので、離婚調停の際に離婚と共に、子の親権者や養育費の取り決めをすることができます。
(3)審判
審判の申立は、子の住所地の家庭裁判所に申し立てることができます(家事事件手続法150条4号)。
調停を申し立てずに、最初から審判を申し立てることもできますが、付調停とされることがあります(家事事件手続法274条1項)。
調停が不成立となる場合には、審判に移行し(家事事件手続法272条4項)、裁判所が養育費を決めます。
(4)離婚訴訟の附帯請求
離婚訴訟の附帯請求として、養育費の請求をすることができます(人事訴訟法32条1項)。
2 履行を確保する方法
(1)履行勧告
義務者が義務を履行しない場合、権利者は履行勧告を申し立てることができます(家事事件手続法289条)。
(2)履行命令
義務者が義務の履行を怠った場合、権利者の申立てにより義務者に対し、相当の期限を定めて義務の履行を命じる審判をすることができます。義務者が正当な理由なく履行命令に従わない場合には10万円以下の過料に処されます(家事事件手続法290条)。
(3)強制執行
調停調書は確定判決と同一の効力がありますし、確定した審判も執行力のある債務名義となりますので、強制執行することができます。
養育費の一部が不履行の場合、期限が到来していない分についても給与その他の継続的給付にかかる債権に強制執行をすることができます(民事執行法151条の2)。
また、養育費の場合、給与債権の差押禁止範囲が4分の3ではなく、2分の1とされております(民事執行法152条3項)。
五 養育費の変更
養育費の額を取り決めた後、子の進学や再婚や収入の減少等、事情が変わり、養育費の額が不相当となった場合には、養育費の増額、減額請求をすることができます。

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婚姻費用
夫婦関係を見直すため、あるいは、離婚をする前提として、夫婦が別居することがあります。
同居中は、夫婦の一方に収入がなくても、他方の収入で生活することができますが、別居した場合には、収入のない方は、どうやって生活するのか問題となります。
そのような場合、収入のない方は、収入のある方に対し、婚姻費用分担請求をすることが考えられます。
これから、婚姻費用について簡単に説明します。
※算定方式・算定表は改訂されました(令和元年12月23日公表)。基本的な考え方は変わっておりませんが,このページの計算例などは改訂前のものですのでご注意ください。
算定方式・算定表の改訂についてはこちら→https://nagaselaw.com/【離婚】養育費・婚姻費用の算定方式・算定表の/
一 婚姻費用分担義務について
民法760条は、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と規定しており、同条を根拠に、夫婦の一方は他方に対し婚姻費用分担義務を負います。
扶養の程度に関しては、生活保持義務(自分と同程度の生活を保持する義務)と生活扶助義務(自分の生活を犠牲にしない限度で、最低限の生活を扶助する義務)がありますが、婚姻費用分担義務は、原則として生活保持義務であるとされております。
二 婚姻費用分担義務はいつから(始期)いつまで(終期)生じるのか
1 始期
婚姻費用分担義務が生じるかについては、
①必要時からとする見解(別居時から)
②請求時からとする見解(調停や審判申立て時から)
があります。
実務上、②請求時からとすることが多いとされています。
もっとも、事情によっては、別居時からの婚姻費用分担義務を負うとされることもあります。
2 終期
実務上、別居の解消または離婚に至るまでとするのが一般的です。
三 婚姻費用分担額の算定方法
婚姻費用分担額は、簡易算定方式及び簡易算定表を用いて算定するのが一般的です。
1 簡易算定方式
(1)権利者と義務者の基礎収入を算定します。
①給与所得者の場合
総収入額から公租公課、職業費(被服費、交通費等)、特別経費(住居費等)を控除した金額であり、概ね総収入の34%から42%の範囲(高額所得者ほど低い)とされております。
基礎収入=総収入-公租公課-職業費-特別経費
②自営業者の場合
所得金額から公租公課、特別経費を控除した金額であり、概ね総所得の47%から52%の範囲(高額所得者ほど低い。)とされております。
基礎収入=総所得-公租公課-特別経費
(2)権利者と義務者の基礎収入の合計額をそれぞれの世帯に按分します。
子がいる場合には、子の生活費も含めて計算します。
その際、親の生活費の割合(生活費指数)を100とすると、0歳から14歳の子の割合は55、15歳から19歳の子の割合は90として計算します。
権利者世帯の按分額
=(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)×権利者世帯の生活費指数÷(義務者世帯の生活費指数+権利者世帯の生活費指数)
例えば、夫婦間に10歳の子が一人いて、妻が子を連れて別居し、妻が夫に婚姻費用を請求した場合
権利者(妻)世帯の按分額
=(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)
×(100+55)÷(100+100+55)
(3)権利者世帯の按分額から権利者の基礎収入額を控除した金額が婚姻費用分担額となります。
婚姻費用分担額=権利者世帯の按分額-権利者の基礎収入
2 簡易算定表(養育費・婚姻費用算定表)
簡易算定方式に基づいて算定される婚姻費用を1万円または2万円の幅で表に整理したものです。
表には、①夫婦のみ、②子1人(0~14歳)、③子1人(15~19歳)、④子2人(第1子、第2子0~14歳)、⑤子2人(第1子15~19歳、第2子0~14歳)、⑥子2人(第1子、第2子15~19歳)、⑦子3人(第1子、第2子、第3子0~14歳)、⑧子3人(第1子15~19歳、第2子、第3子0~14歳)、⑨子3人(第1子、第2子15~19歳、第3子0~14歳)、⑩子3人(第1子、第2子、第3子15~19歳)があります。
縦軸を義務者の年収(給与所得者の場合と自営業者の場合があります。)、横軸を権利者の年収(給与所得者の場合と自営業者の場合があります。)とし、縦軸から横に延ばした線と横軸から縦にのばした線の交わるところの数値が婚姻費用分担額となります。
年収については、給与所得者の場合は源泉徴収票の「支払金額」であり、自営業者の場合は、確定申告書の「課税される所得金額」(ただし,諸々修正されます。)です。
例えば、例えば、夫婦間に10歳の子が一人いて、妻が子を連れて別居し、妻(年収50万円の給与所得者)が夫(年収400万円の給与所得者)に婚姻費用を請求した場合、簡易算定表によると、婚姻費用分担額は月額6万円から8万円の範囲となります。
四 手続
1 婚姻費用分担額を決める方法
(1)当事者間の合意
当事者間の合意で婚姻費用を決めることができます。
執行受諾文言のある公正証書にした場合には、債務名義として強制執行をすることができます。
(2)婚姻費用分担調停
婚姻費用を請求する場合には、相手方の住所地または合意で定める家庭裁判所(家事事件手続法245条1項)に婚姻費用分担調停の申立てをすることができます。
(3)審判
審判の申立は、夫または妻の住所地の家庭裁判所に申し立てることができます(家事事件手続法150条3号)。
調停を申し立てずに、最初から審判を申し立てることもできますが、付調停とされることがあります(家事事件手続法274条1項)。
調停が不成立となる場合には、審判に移行し(家事事件手続法272条4項)、裁判所が婚姻費用分担額を決めます。
2 履行を確保する方法
(1)履行勧告
義務者が義務を履行しない場合、権利者は履行勧告を申し立てることができます(家事事件手続法289条)。
(2)履行命令
義務者が義務の履行を怠った場合、権利者の申立てにより義務者に対し、相当の期限を定めて義務の履行を命じる審判をすることができます。義務者が正当な理由なく履行命令に従わない場合には10万円以下の過料に処されます(家事事件手続法290条)。
(3)強制執行
調停調書は確定判決と同一の効力がありますし、確定した審判も執行力のある債務名義となりますので、強制執行することができます。
婚姻費用の一部が不履行の場合、期限が到来していない分についても給与その他の継続的給付にかかる債権に強制執行をすることができます(民事執行法151条の2)。
また、婚姻費用の場合、給与債権の差押禁止範囲が4分の3ではなく、2分の1とされております(民事執行法152条3項)。

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訴状の書き方
民事訴訟を提起するには、原則として訴状を提出しなければなりません(民事訴訟法133条1項)。
民事訴訟では、裁判所は当事者が申し立てていない事項について判決をすることはできませんし(民事訴訟法246条 処分権主義)、事実の主張や証拠の収集は当事者の責任に委ねられておりますので(弁論主義)、原告が訴状においてどのような請求をするか、どのような主張をするのかということは、訴訟において非常に重要です。
訴状の書き方については、民事訴訟法や民事訴訟規則に規定されておりますので、簡単に説明します。
一 訴状の記載事項
民事訴訟法や民事訴訟規則は、訴状の記載事項について以下のように規定しています。
1 必要的記載事項
①当事者及び法定代理人
②請求の趣旨及び原因
を記載しなければなりません(民事訴訟法133条2項)。
請求の趣旨とは、原告が訴訟において求める請求の内容及び判決の形式です。
例えば、貸金返還請求事件の請求の趣旨は「被告は、原告に対し、金○○○○円を支払え」ですし、土地明渡請求事件の請求の趣旨は「被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の土地を明け渡せ」(訴状に物件目録を添付します。)です。
請求の原因とは、請求を特定するのに必要な事実のことです。
法律効果が発生するには、その要件となる事実(「要件事実」といいます。)の存在が必要であり、訴状において、原告は、請求権の発生を基礎づける要件事実を、請求の原因として主張しなければなりません。
例えば、貸金返還請求事件の請求の原因として記載すべき要件事実は、
ⅰ 金銭の返還の合意
ⅱ 原告が被告に金銭を交付したこと
ⅲ 返済時期の合意
ⅳ 返還時期が到来したこと
です(なお、利息や遅延損害金を請求する場合には、別に利息や遅延損害金発生の要件事実を主張します。)。
裁判所は当事者の主張しない要件事実を認定することはできませんので(弁論主義)、要件事実の主張がないと、法律効果が発生せず、請求が認められなくなってしまいます。
要件事実の主張し忘れがないよう、ご注意ください。
2 実質的記載事項
訴状には、②の請求の趣旨及び原因(請求の特定するのに必要な事実)を記載するほか、
③請求を理由づける事実を具体的に記載し、かつ、
④立証を要する事由ごとに、当該事実に関連する事実で重要なもの及び証拠
を記載しなければなりません(民事訴訟規則53条1項)。
その際、できる限り、請求を理由づける事実についての主張と当該事実に関連する事実についての主張とを区別して記載しなければなりません(民事訴訟規則53条2項)。
3 その他の記載事項
⑤当事者の氏名又は名称・住所、代理人の氏名・住所(民事訴訟規則2条1項1号)
⑥事件の表示(民事訴訟規則2条1項2号)
⑦附属書類の表示(民事訴訟規則2条1項3号)
⑧年月日(民事訴訟規則2条1項4号)
⑨裁判所の表示(民事訴訟規則2条1項5号)
⑩当事者又は代理人の記名押印(民事訴訟規則2条1項)
⑪原告又は代理人の郵便番号、電話番号、ファックス番号(民事訴訟規則53条4項)
⑫送達場所、送達受取人(民事訴訟法104条1項、民事訴訟規則41条)
二 訴状の提出方法
訴えを提起するにあたっては、
Ⅰ 訴状(裁判所用の正本1通と被告用の副本を被告の人数分 民事訴訟規則58条1項)
Ⅱ 登記事項証明書等、訴状の添付書類(民事訴訟規則55条1項)
Ⅲ 書証の写し(裁判所分と被告の人数分 民事訴訟規則55条2項)
Ⅳ 訴訟委任状(代理人がいる場合 民事訴訟規則23条1項)
Ⅴ 収入印紙(訴額によって決められています。)
Ⅵ 郵便切手(裁判所によって異なります)
を、裁判所の事件受付に持参又は郵送します。
三 訴状の記載例
訴 状
○○年○月○○日 ←⑧
○○地方裁判所 御中 ←⑨
原告訴訟代理人弁護士 ○○ ○○ ○印 ←⑩
〒○○○-○○○○ ○○県○○市○○ ○丁目○○番○○号 ←①⑤
原 告 ○○ ○○
〒○○○-○○○○ ○○県○○市○○ ○丁目○○番○○号 ←⑤⑪
○○法律事務所(送達場所) ←⑫
上記原告訴訟代理人弁護士 ○○ ○○
電 話 ○○○-○○○-○○○○ ←⑪
FAX ○○○-○○○-○○○○
〒○○○-○○○○ ○○県○○市○○ ○丁目○○番○○号 ←①⑤
被 告 ○○ ○○
○○請求事件 ←⑥
訴訟物の価額 ○,○○○,○○○円
貼用印紙額 ○○,○○○円 ←Ⅴ
第1 請求の趣旨 ←②
1 被告は、原告に対し、金○○○万円及びこれに対する平成○年○月○日より支払い済みまで年○分の割合による金員を支払え
2 訴訟費用は被告の負担とする
との判決及び仮執行宣言を求める。
第2 請求の原因 ←②③
第3 関連事実 ←④
証 拠 方 法 ←④
1 甲第1号証 ○○○○
2 甲第2号証 ○○○○
附 属 書 類 ←⑦
1 訴状副本 1通 ←Ⅰ
2 甲号証写し 各2通 ←Ⅲ
3 訴訟委任状 1通 ←Ⅳ

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交通事故 無償同乗(好意同乗)
交通事故を起こし、同乗者が損害を被った場合、自動車の運転者又は運行供用者の同乗者に対する損害賠償が問題となります。
その際、自動車に無償または好意で人を乗せていた場合に、自動車の運転者又は運行供用者の同乗者に対する損害賠償義務が制限されるかどうかというのが、無償同乗(好意同乗)の問題です。
この点について、無償や好意で同乗させていたこと自体から、同乗者への損害賠償額が減額されることは基本的にありません。
もっとも、運転者が飲酒運転していることを知りながら同乗した場合等、同乗者が運転者の危険な運転を容認していた場合や、同乗者が運転者の危険な運転を助長、誘発した場合や、同乗者に一定の運行支配が認められる場合には、過失相殺の規定を適用する等して、減額されることがあります。
また、慰謝料額算定の際、考慮されることがあります。

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どこの裁判所に訴えればいいのか~管轄
裁判所には、最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所がありますし、地域によって、東京地方裁判所、さいたま地方裁判所、横浜地方裁判所等様々あります。
例えば、当事務所付近でみても、板橋区、練馬区を管轄する裁判所は、東京地方裁判所・東京家庭裁判所・東京簡易裁判所ですが、和光市、朝霞市、新座市、志木市を管轄する裁判所は、さいたま地方裁判所・さいたま家庭裁判所・さいたま簡易裁判所となり、富士見市、ふじみ野市、川越市を管轄する裁判所は、さいたま地方裁判所川越支部・さいたま家庭裁判所川越支部・川越簡易裁判所となります。
このように、様々な裁判所があるため、民事訴訟をしようとお考えの方にとって、どこの裁判所に訴えればいいのか、分かりづらいと思います。
また、相手方が遠方に住んでいる場合、遠方の裁判所に訴えなければならないとすると、裁判所に行くのに費用と時間がかかりますので、訴訟をする場合、ご自身の近くの裁判所で裁判をしたいと考えるでしょう。
しかし、訴訟の提起は、どの裁判所にでもできるわけではなく、管轄のある裁判所にしなければなりません。
そこで、民事訴訟を提起する場合の管轄について簡単に説明します。
一 事物管轄
民事訴訟を提起する場合、訴訟の目的の価額(「訴額」ともいいます。訴えで主張する利益によって算定されます。)によって、簡易裁判所から地方裁判所のいずれかになります。
第一審裁判所が簡易裁判所になるか地方裁判所になるかの分担のことを事物管轄といいます。
訴額が140万円以下の場合 | 簡易裁判所 |
それ以外の場合 | 地方裁判所 |
なお、不動産に関する訴訟については、訴額が140万円以下であっても地方裁判所に提起することができます。
二 土地管轄
1 普通裁判籍
訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属します(民事訴訟法4条1項)。
被告が個人の場合、普通裁判籍は①住所、②日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所、③日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所地です(民事訴訟法4条2項)。
被告が法人の場合、普通裁判籍は①主たる事務所又は営業所の所在地、②それらがない場合には主たる業務担当者の住所です(民事訴訟法4条4項)。
2 特別裁判籍
被告の普通裁判籍以外の地を管轄する裁判所に提起することができる場合があります(民事訴訟法5条から7条)。
例えば、
①財産上の訴えは、義務履行地(民事訴訟法5条1号)
②不法行為に関する訴えは、不法行為があった地(民事訴訟法5条9号)
③不動産に関する訴えは、不動産の所在地(民事訴訟法5条12号)
を管轄する裁判所に訴えを提起することができます。
また、一つの訴えで数個の請求をする場合には、一つの請求について管轄権を有する裁判所に訴えを提起することができます。ただし、原告または被告が複数の訴えについては、訴訟の目的である権利又は義務が共通の場合、同一の事実上及び法律上の原因に基づく時に限ります(民事訴訟法7条)。これを関連裁判籍といいます。
三 合意管轄
当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができます(民事訴訟法11条1項)。
ただし、合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関するものであり、かつ書面でしなければなりません(民事訴訟法11条2項)。
合意管轄については、①特定の裁判所に専属的に管轄権を生じさせる場合と②法で定める管轄のほかに特定の裁判所に管轄権を付加する場合があります。
四 応訴管轄
原告が管轄違いの裁判所に訴えを提起した場合に、被告が異議を唱えることなく応訴(本案について弁論または弁論準備手続において申述)した場合には、裁判所は管轄権を有します(民事訴訟法12条)。
五 移送
管轄違いがある場合には、原則として管轄裁判所に移送されます(民事訴訟法16条)。
また、管轄のある裁判所に訴訟提起された場合であっても、遅滞を避けるため等一定の場合には移送されることがあります(民事訴訟法17条から19条)。
六 まとめ
以上のように、原則として、被告の住所地(被告が法人の場合には主たる事業所または営業所)を管轄する簡易裁判所(訴額140万円以下の場合)または地方裁判所に民事訴訟を提起することになりますが、場合により、それ以外の裁判所に訴訟提起することができます。
例えば、財産上の訴えについては、義務履行地も管轄が認められるところ、持参債務(債権者の住所地で弁済しなければならない債務)の場合には、債権者である原告の住所地を管轄する裁判所に訴訟提起することができます。
そのため、相手方が遠方に住んでいる場合であっても、近くの裁判所に訴訟提起することができる場合がありますので、どこの裁判所に訴訟提起できるかよく検討することをお勧めします。
また、訴えられた側としても、遠方の裁判所から呼び出しを受けた場合には、移送申立をすることで近くの裁判所に移送が認められる可能性があります。
どうしても遠方の裁判所で裁判しなければならない場合には、自ら裁判所に行く以外に、弁護士に依頼することが考えられます。弁護士に依頼した場合には、本人尋問等必要な場合を除き、当事者は裁判所に行かなくてすみます。
弁護士に依頼する場合、ご自身の近くの弁護士に依頼すると、通常、交通費等の実費のほか、日当がかかりますので、裁判所の近くの弁護士に依頼することを検討されてもいいでしょう。
遠方の弁護士に依頼する場合には、最低でも一度は、その弁護士に会いに行くことにはなりますが、依頼した後は、電話、FAX、手紙、メール等で打ち合わせができます。

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