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【交通事故】休業損害と逸失利益
交通事故被害者が休業して収入を得られなかった場合は休業損害が損害となります。また、交通事故被害者が後遺症や亡くなったことで収入を得られなくなった場合は逸失利益が損害となります。
一 休業損害と逸失利益
休業損害とは、交通事故被害者が負傷により休業し、収入を得られなかった損害です。
逸失利益は、交通事故被害者が後遺症又は死亡により、将来得られたはずの収入を得られなくなった損害です。逸失利益の考え方には、差額説(事故前後の収入の差額を損害ととらえる考え方)と労働能力喪失説(労働能力が喪失したこと自体を損害ととらえる考え方)がありますが、判例では差額説の立場がとられています。
休業損害と逸失利益は、いずれも交通事故被害にあっていなければ得られたはずの収入を得られなかった損害(消極損害)ですが、休業損害は事故が発生してから治療終了時まで期間の収入を得られなかった損害であるのに対し、逸失利益は治療終了(症状固定)後又は死亡後に収入を得られなくなった損害です。
休業損害については、損害賠償請求をする時点では治療が終了しているのが通常であるため、現実の収入減少額を把握することが可能であるのに対し、逸失利益については、将来の収入がどうなるか不確実であり、将来の収入減少額を正確に把握することが困難であるという違いがあります。
そのため、休業損害額については、現実の収入減少額が損害額となるのに対し、逸失利益の場合には将来の収入減少額を推計で計算します。
また、現実に収入が減少していなければ休業損害は認められないのが原則であるのに対し、現在収入が減少していなくても将来収入が減少しないとはいえないので、将来の収入減少につながる事情があれば逸失利益は認められます。
二 損害額の算定方法
1 休業損害
休業損害の損害額は、交通事故が発生してから治療終了時までの間の収入の減少額です。
休業損害の金額は「1日あたりの基礎収入額×休業日数」の計算式で計算するのが原則ですが、職業によって計算方法が異なります。
(1)基礎収入額
基礎収入額については、事故前の収入を基に計算します。給与所得者は、休業損害証明書や源泉徴収票、事業所得者は確定申告書等が資料になります。
会社役員の役員報酬については、労務提供の対価としての部分と利益配当としての部分があり、原則として、労務対価部分について休業損害が認められます。
不動産賃貸業等の不労所得者は休業しても収入が得られるので休業損害は認められないのが原則ですが、不動産の管理等、労務の提供があった場合にはその範囲で損害と認められることがあります。
家事従事者については、家事労働は現実の収入は得られないものの、経済的な価値があることから、交通事故被害により家事労働できなかった場合には休業損害が認められます。家事従事者の基礎収入額は、賃金センサスの女性労働者の全年齢又は年齢別の平均賃金を基に計算します。
(2)休業日数
休業日数については、現実に休業した日数です。
給与所得者の場合には休業損害証明書に休業日数が記載されるため、把握が容易ですが、家事従事者の場合等のように休業日数を把握することが困難な場合があります。休業日数の把握が困難な場合には、休業期間の何割かを休業日数とすることがあります。
2 逸失利益
差額説の立場からすれば、逸失利益の損害額は収入の減少額ですが、逸失利益は将来にわたって発生するものであり、将来の収入の減少が現実にどの程度発生するか把握することは困難ですので、推計で計算することになります。
(1)後遺症逸失利益
後遺症逸失利益は、被害者の収入(基礎収入)が労働能力の低下の割合(労働能力喪失率)に応じて一定期間(労働能力喪失期間)減少するものと推定します。また、一時金払いの場合には現在価値に換算するため、中間利息を控除します。
そのため、後遺症逸失利益の金額は、「基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」の計算式で計算するのが原則です。
基礎収入額は、事故前の年収とするのが原則です。ただし、将来、事故前の収入額以上の収入を得られる蓋然性がある場合には、その金額が基礎収入額となります。また、家事従事者や若年者労働者の場合には賃金センサスの平均賃金額が基礎収入額となります。
労働能力喪失率は,自賠責保険の後遺障害等級の労働能力喪失率によるのが基本ですが、被害者の職業・年齢・性別、後遺症の部位・程度、事故前後の稼働状況、収入の減少等の事情から総合的に評価されます。
労働能力喪失期間は、症状固定時の年齢から67歳までの期間とするのが原則ですが、高齢者の場合は平均余命の2分の1とします。また、若年者の場合は、18歳又は大学卒業予定時(大学卒業の蓋然性がある場合)の年齢から67歳までの期間が労働能力喪失期間となり、後遺症逸失利益を「平均賃金×労働能力喪失率×(症状固定時の年齢から67歳までのライプニッツ係数-18歳又は大学卒業予定時の年齢までのライプニッツ係数)」の計算式で計算します。
また、むち打ち症の場合には症状が永続するかどうか分かりませんので、後遺障害等級12級の場合で5年から10年程度、14級の場合で5年程度に制限する例が多いです。
(2)死亡逸失利益
死亡逸失利益は、被害者が亡くなったことにより、将来得られたはずの利益(基礎収入)を一定期間(就労可能年数)、得られなくなった一方で、被害者は生きていれば発生していた生活費の負担を免れることになりますので、生活費を控除します。また、将来にわたって得られたであろう利益を現在価値に換算することになるため,中間利息を控除します。
そのため、死亡逸失利益の金額は、「基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」の計算式で計算するのが原則です。
基礎収入額についての考え方は、後遺症逸失利益の場合と基本的に同じですが、死亡逸失利益の場合には、年金収入(退職年金、老齢年金、障害年金等、被害者が保険料を拠出しているもの)の逸失利益が認められます。
生活費の控除率については、被害者の家族構成(被害者が一家の支柱かどうか、被扶養者の人数)や性別等により異なります。また、年金収入が逸失利益となる場合は稼働収入の逸失利益の場合と比較して生活費控除率を高くする傾向があります。
就労可能年数は、死亡時の年齢から67歳までの期間とするのが原則ですが、高齢者の場合は平均余命の2分の1とします。また、若年者の場合は、18歳又は大学卒業予定時(大学卒業の蓋然性がある場合)の年齢から67歳までの期間が就労可能年数となりますので、死亡逸失利益の金額は「平均賃金×(1-生活費控除率)×(死亡時の年齢から67歳までのライプニッツ係数-18歳又は大学卒業予定時の年齢までのライプニッツ係数)の計算式で計算します。
三 収入が減少していない場合
1 休業損害
休業損害は収入を得ることができなかったことによる損害ですので、現実に収入が減少していない場合には休業損害が認められないのが原則です。
例えば、給与所得者が交通事故後も仕事を休まず、収入の減少がなかった場合には、痛みを堪えて働いていたとしても、基本的に休業損害は認められません。
ただし、事故後、有給休暇を利用した場合には収入の減少がなくても休業損害が認められます。
事故前、働いていなかった場合は収入の減少がないので、休業損害が認められないのが原則です。ただし、事故前に就職が決まっていたけれども、事故により働けなくなった場合等、就労する蓋然性があった場合には、休業損害が認められます。
2 逸失利益
差額説の立場からすれば、現実に収入の減少がなければ、逸失利益は認められないのが原則です。
もっとも、逸失利益は将来にわたって発生するものですから、請求した時点で収入が減少していなからといって、将来も収入が減少しないとはいえません。
そのため、収入が減少していなくても、後遺症により業務に支障が生じている場合、収入が減少しないことが、被害者が特別の努力や勤務先の特別な配慮による場合、昇給や昇格等で不利益な取扱を受けるおそれがある場合、転職や再就職で不利益な取扱を受けるおそれがある場合等、将来の収入減少につながる事情がある場合には後遺症逸失利益が認められます。
事故時は働いておらず、収入がない場合であっても、将来、就労する蓋然性がある場合には逸失利益が認められます。

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【相続・遺言】未成年者と親権者の利益相反となる場合の遺産分割
共同相続人に未成年者がいる場合、未成年の親権者が法定代理人として遺産分割を行うことになりますが、未成年者と親権者が利益相反となるときには、未成年者の特別代理人を選任して、遺産分割を行うことが必要となります。
一 親権者と未成年者の利益相反
共同相続人に未成年者がいる場合、未成年者の親権者が法定代理人として遺産分割を行うことになりますが(民法824条)、親権者と未成年者が利益相反となる場合には、親権者が代理して遺産分割を行うことはできません。
利益相反にあたるかどうかは、外形的、客観的に判断されます。親権者が主観的には子らの利益を害さないと考えていたとしても、外形的、客観的にみて利害が対立する場合には利益相反にあたります。
親権者も共同相続人である場合(例えば、父が亡くなり、母と未成年の子が共同相続人となる場合)には、親権者と子らの利害が対立し、親権者が子を代理して遺産分割を行うことは利益相反となりますので、親権者は、未成年の子の特別代理人を選任する必要があります(民法826条1項)。
親権者は共同相続人でないけれども、共同相続人となる未成年者が複数いる場合に親権者が複数の子らを代理して遺産分割をすること(例えば、母を子らの親権者として離婚した後に父が亡くなり、複数の子らが相続した場合や、父が亡くなった後に祖父が亡くなり、複数の子らが代襲相続した場合)は利益相反となります。その場合、親権者は子の一人を代理することができますが、他の子については特別代理人の選任が必要となります(民法826条2項)。
父母が親権者の場合、父母は未成年の子について共同で親権を行使することになりますが、親権者の一方と未成年の子の利益相反となるとき(例えば、夫の親が夫の未成年の子に一部包括遺贈をした場合、夫の親の相続について、夫と子は利益相反関係にありますが、夫の親の相続人ではない妻は子と利益相反関係にありません。)には、利益相反のある親権者は未成年の子の特別代理人を選任し、特別代理人と利益相反のない親権者が共同で未成年の子を代理することになります。
二 特別代理人選任の申立て
親権者と未成年者の利益が相反する場合、家庭裁判所に特別代理人選任の申立てをします。
特別代理人は、審判で決められた行為について、未成年者を代理することができます。
申立てができるのは、親権者と利害関係人です。
申立先は、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所です。
申立てをするにあたっては、申立書、親権者及び未成年者の戸籍謄本、特別代理人候補者の住民票又は戸籍の附票、利益相反に関する資料等を提出します。遺産分割協議をする場合には、遺産分割協議書案が利益相反に関する資料となります。
申立人は特別代理人の候補者を立てることができます。特別代理人について資格の定めはありませんので、親族を候補者とすることもできますが、家庭裁判所が希望どおりに認めるとは限りません。未成年者の利益を保護する観点から、弁護士等の専門家が特別代理人に選任されることもあります。
三 特別代理人を選任しないで遺産分割をした場合
利益相反に当たる場合に、特別代理人が選任されることなく、親権者が未成年者を代理して遺産分割をした場合には、無権代理行為となります。
未成年者が成人になった後に追認しない限り、有効にはなりません。

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【交通事故】物損 評価損
交通事故被害にあい、事故車両を修理した場合、評価損が認められるか争いとなることがあります。
一 評価損とは
評価損とは、車両を修理した場合に事故前よりも車両の価値が下落したことです。
評価損には、技術上の評価損(修理しても技術上の限界から機能や外観に欠陥が残る場合)と取引上の評価損(事故歴があることにより取引上の価格が低下する場合)があります。
二 評価損の請求権者
評価損を請求できるのは、原則として車両の所有者です。
ローン会社に所有権留保されている車両の買主やリース車両のユーザーは、車両の所有者でないことから、評価損を請求できるか争いとなります。
三 評価損が認められる場合
修理後、機能や外観に欠陥が残る場合(技術上の評価損)には評価損は認められやすいですが、機能や外観に問題はないけれども事故歴があることにより交換価値が低下する場合(取引上の評価損)は評価損が認められるか争いとなることが多いです。
取引上の評価損が認められるかどうかは、車種、初度登録からの年数、走行距離、損傷部位等の事情を総合考慮して判断されます。
外国産、国産の人気車種の場合、初度登録からの年数や走行距離が短い場合、損傷部位が中古車販売業者に表示義務がある部位の場合には、評価損が認められやすくなります。
四 損害額
評価損の損害額の算定方法については、事故前の車両の時価と修理後の車両の時価の差額を損害額とする方法、車両の時価の一定割合を損害額とする方法、修理費の一定割合を損害額とする方法、諸要素を考慮して損害額を定める方法があります。
損害額算定にあたっては、事故減価額証明書が参考となりますが、事故減価額証明書の金額がそのまま損害と認められるとは限りません。
裁判では、修理費の一定割合を損害額とすることが多いです。割合については、車種、初度登録からの年数、走行距離、損傷部位等の事情が考慮されます。損害額を修理費の1割から3割程度とされることが多いですが、事案によっては、修理費の3割を超える額が損害と認められることがあります。

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【お知らせ】令和5年夏季休業のお知らせ
当事務所は、令和5年8月11日(金)から令和5年8月15日(火)まで、夏季休業とさせていただきます。
8月16日(水)からは通常通り営業いたします。

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【相続・遺言】具体的相続分による遺産分割ができる期間
民法改正(令和5年4月1日施行)により、具体的相続分による遺産分割ができる期間が制限されました。
一 具体的相続分による遺産分割
遺産分割は各共同相続人の法定相続分や指定相続分(遺言で相続分が指定された場合)を基に行いますが、共同相続人の中に特別受益や寄与分がある相続人がいる場合には、特別受益や寄与分により修正した相続分(具体的相続分)により遺産分割を行います。
共同相続人の中に特別受益(被相続人からの遺贈又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与)を受けた相続人がいる場合は、被相続人の相続開始時の財産の価額に贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、法定相続分又は指定相続分の中から遺贈又は贈与の価額を控除した残額がその相続人の具体的相続分となります(民法903条1項)。
共同相続人の中に寄与分(被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与)がある相続人がいる場合には、被相続人の相続開始時の財産の価額から寄与分を控除したものを相続財産とみなし、法定相続分又は指定相続分に寄与分を加えた額がその相続人の具体的相続分となります(民法904条の2)。
これまで、特別受益の主張や寄与分の請求ができる期間については制限がありませんでしたが、民法改正(令和5年4月1日施行)により特別受益の主張や寄与分の請求ができる期間に制限が設けられることになりました。早期の遺産分割を促すためです。
二 具体的相続分による遺産分割ができる期間
民法改正により、特別受益や寄与分の規定(民法903条から民法904条の2)は、原則として、相続開始時から10年を経過した後の遺産分割については適用されません(民法904条の3)。そのため、相続開始から10年を経過すると、特別受益の主張や寄与分の請求ができなくなり、法定相続分又は指定相続分で遺産分割をしなければならなくなります。
ただし、①相続開始時から10年を経過する前に相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき、②相続開始から10年の期間満了前6か月以内の間に、遺産分割請求ができないやむを得ない事由が相続人にあった場合に、その事由が消滅してから6か月以内に当該相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたときは、相続開始から10年が経過しても具体的相続分による遺産分割ができます。
また、民法904条の3の規定は、施行日前に開始した相続の遺産分割についても適用されますが、施行時から5年間の猶予期間が設けられました。
そのため、施行日前に相続が開始した場合には、①相続開始時から10年経過する時か改正法施行時から5年経過する時のいずれか遅い時までに、相続人が家庭裁判所に遺産分割請求したとき、②相続開始から10年の期間(相続開始の時から10年の期間の満了後に改正法施行時から5年の期間が満了する場合には、施行時から始まる5年の期間)満了前6か月以内の間に、遺産分割請求をすることができないやむを得ない事由が相続人にあった場合に、その事由が消滅してから6か月以内に当該相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたときは、具体的相続分による遺産分割をすることができます。
三 具体的相続分による遺産分割ができる期間を経過した場合の遺産分割
具体的相続分による遺産分割ができる期間を経過した場合には、特別受益の主張や寄与分の請求ができなくなりますので、法定相続分又は指定相続分で遺産分割を行うことになります。
そのため、特別受益の主張や寄与分の請求をし、具体的相続分による遺産分割をしたい場合には、期間を経過する前に遺産分割をする必要があります。
なお、期間経過後であっても、共同相続人間で合意ができれば、具体的相続分による遺産分割をすることはできます。

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【労働問題】残業代と付加金
残業代の請求とあわせて、付加金を請求することができるのは、どのような場合でしょうか。
一 付加金とは
裁判所は、労働基準法20条(解雇予告手当)、26条(休業手当)、37条(時間外、休日、深夜の割増賃金)の規定に違反した使用者又は39条9項(有給休暇中の賃金)の規定に違反した使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一の付加金の支払を命ずることができます(労働基準法114条)。
労働基準法37条に違反する残業代について付加金を請求することができますので、法外残業の場合には付加金は請求できますが、同条に違反しない法内残業の場合には付加金は請求できません。
また、付加金が認められるかどうかは裁判所の裁量にゆだねられていますので、労働基準法37条等の規定に違反した場合であっても当然に付加金の支払が認められるわけではありません。裁判所は具体的な事情を考慮して付加金の支払を命じるかどうか判断しますので、付加金を請求する場合には、違法性の大きさや労働者の不利益の大きさ等具体的な事情を主張立証する必要があります。
二 請求方法
付加金は裁判所が支払を命じるものであることから、労働者が示談交渉で付加金を請求することはできません。
付加金を請求する場合には、訴訟提起して請求する必要があります。
残業代とあわせて付加金請求する場合、付加金請求は残業代請求の附帯請求になりますので、付加金請求部分は訴額に算入されず、その分の印紙は不要であると解されています。
また、付加金の支払を命じることができるのは裁判所であるところ、労働審判を行うのは労働審判委員会であるため、労働審判では付加金は認められないと考えられております。もっとも、労働訴訟は通常訴訟に移行する可能がありますし、付加金の請求には期間制限があり、時間が経つと請求できなくなるおそれがあることから、労働審判においても残業代請求とあわせて付加金を請求しておくべきです。
三 付加金の遅延損害金
付加金の支払義務は裁判所が支払を命じることにより生じることから、付加金についての遅延損害金は、判決確定の日の翌日から生じます。
また、遅延損害金の利率は年3%の割合になります。
四 付加金が請求できる期間
付加金が請求できる期間は、労働基準法114条但書では違反があったときから5年間と規定されていますが、当分の間は3年間となっています(附則143条2項)。
この期間は時効期間ではなく、除斥期間だとされています。
残業代については発生してから3年で時効にかかり(労働基準法115条、附則143条3項)、催告することにより6か月は時効が完成しませんので(民法150条)、時効が問題となりそうな場合には、時効の完成を防ぐために、まず内容証明郵便等で催告してから示談交渉します。
これに対し、付加金については時効期間ではなく、除斥期間であるため、催告しても期間が経過すれば請求することができなくなります。
そのため、残業代の支払について示談交渉が長引き、訴訟提起が遅れると、付加金の請求ができなくなる事態がでてきますので注意が必要です。

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【相続・遺言】相続放棄の撤回・取消し
相続放棄をした後に相続放棄をなかったことにすることはできるでしょうか。
一 相続放棄の撤回
相続放棄は、相続放棄ができる期間内であっても、撤回することはできません(民法919条1項)。
そのため、家庭裁判所に相続放棄の申述受理の申立てをして受理された場合には、後で気が変わって相続放棄を撤回したいと思っても、撤回できないので注意しましょう。
二 相続放棄の取消し
前述のとおり相続放棄は撤回することはできませんが、総則及び親族の規定により取り消すことができる場合には相続放棄を取り消すことができます(民法919条2項)。
そのため、相続放棄が錯誤取消しの要件を満たす場合、詐欺・強迫により相続放棄をした場合、未成年者が親権者の同意なく相続放棄をした場合、成年被後見人本人が相続放棄をした場合等、総則及び親族の規定による取消原因がある場合には相続放棄を取り消すことができます。
この取消権は、追認することができるときから6か月間行使しないときは時効により消滅します。また、放棄の時から10年経過したときも取消しはできなくなります(民法919条3項)。
取消しをする場合には、家庭裁判所に相続放棄取消しの申述をする必要があります(民法919条4項)。
なお、家庭裁判所に取消しの申述が受理されたとしても、取消原因の存在を終局的に確定するものではないと解されておりますので、受理された後に相続人から争われる可能性があります。
三 まとめ
以上のように、相続放棄を撤回することはできませんし、相続放棄の取消しも容易に認められるものではありません。
そのため、相続放棄をする場合には、事前に、相続放棄をしてもよいかどうか慎重に検討する必要があります。

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【交通事故】労災保険の利用
労働者として働いている人が勤務中や通勤中に交通事故被害にあった場合、労災保険を利用することができます。
一 労災保険
労働者が業務中又は通勤中の事故により、負傷したとき、病気になったとき、後遺障害が残ったとき、死亡したときには、労働者は労働者災害補償保険(労災保険)による給付を受けることができます。
交通事故等、事故が第三者の行為によって生じた場合(第三者行為災害)にも労災保険を利用することができます。労災保険の給付は被害者の損害を填補するものであり、損害賠償と労災保険の給付を二重に受けることはできませんので、被害者の第三者に対する損害賠償請求と労災保険の給付との間で調整が行われます。そのため、労災保険の給付がなされた場合には、保険者である政府が給付の価額の限度で第三者に対し求償権を取得しますし(労働者災害補償保険法12条の4第1項)、損害賠償を受けた場合には、政府はその価額の限度で保険給付をしないことができます(同条2項)。
二 保険給付
業務災害(労働者の業務上の負傷、疾病、障害、死亡)の場合、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年金、介護補償給付を受けることができます(労働者災害補償保険法12条の8第1項)。
また、通勤災害(労働者の通勤による負傷、疾病、障害、死亡)の場合には、療養給付、休業給付、障害給付、遺族給付、葬祭給付、傷病年金、介護給付を受けることができます(労働者災害補償保険法21条)。
療養補償給付・療養給付は、療養の給付(現物支給)又は療養の費用の支給です。
休業補償給付・休業給付は、傷病による療養のため労働できず賃金をもらえないときに受けられる給付です。休業4日目から1日につき給付基礎日額の60%が支払われます。
障害補償給付・障害給付は、症状固定後に障害が残ったときに受けられる給付です。認定された障害等級によって、一時金として給付される場合(14級から8級)と年金として給付される場合(1級から7級)があります。
遺族補償給付・遺族給付は、労働者が死亡した場合に遺族が受けられる給付です。年金として給付される場合と一時金として給付される場合があります。
葬祭料・葬祭給付は、労働者が死亡した場合に葬祭を行う人が受けられる給付です。
療傷病補償年金・傷病年金は、療養開始後1年6か月を経過しても治癒せず、傷病による障害の程度が重い場合(傷病等級1級から3級に該当する場合)に受けられる給付です。
介護保障年金・介護年金は、労働者に常時又は随時介護を要する重度の障害があり、介護を受けている場合に受けられる給付です。
また、労災保険の社会復帰等促進事業として特別支給金制度があります。
休業補償給付・休業給付、障害補償給付・障害給付、遺族補償給付・遺族給付、傷病補償年金・傷病年金に上乗せして、特別支給金が給付されます。
四 労災保険を利用した場合の損害賠償請求への影響
1 損益相殺
事故が第三者の行為によって生じた場合(第三者行為災害)に保険給付がなされたときは、保険者である政府は給付の価額の限度で第三者に対し求償権を取得しますので、被害者が加害者に損害賠償請求するにあたって、損害額から給付額が控除されます。
労災保険の給付が年金の場合には、既に給付された分だけでなく、給付が確定した部分(訴訟の場合は、事実審の口頭弁論終結時の時点で給付が確定した部分)が控除されます。給付が確定していない将来分については控除されません。
控除は、給付と同一性のある損害項目に限られます。
療養補償給付・療養給付は治療費(入院雑費、通院交通費、文書料等からも控除するかどうか、控除の範囲については見解が分かれています。)から、休業補償給付・休業給付、障害補償給付・障害給付、遺族補償給付・遺族給付、傷病補償年金・傷病年金は休業損害や逸失利益から、葬祭料・葬祭給付は葬儀関係費用から、介護補償給付・介護給付は将来介護費用から、それぞれ控除されます。これらの給付が慰謝料から控除されることはありません。また、労災保険は人損についての給付ですので、物損からは控除されません。
特別支給金については、損害を填補するものではなく、政府は第三者に対し求償権を取得しません。そのため、特別支給金の給付を受けても損害額から控除されませんので、被害者には労災保険を利用するメリットがあります。
2 過失相殺
交通事故被害者に過失があった場合、過失相殺後の損害額から給付額を控除します。
その際、控除されるのは給付と同一性のある損害項目に限られ、同一性のない損害項目から控除されることはありません。そのため、被害者に過失がある場合には、労災保険を利用するメリットがあります。
3 後遺障害の等級認定
労災保険を利用した場合は障害等級の認定がなされますが、交通事故の場合は自賠責保険の後遺障害の等級認定に基づいて損害賠償請求するのが通常です。
そのため、交通事故被害者が労災保険の等級認定を受けた場合でも、加害者に損害賠償請求をする際は、別途、自賠責保険の等級認定を受けることになります。
その際、労災保険と自賠責保険の等級認定の結果が異なることがあります。労災保険で認定される等級のほうが自賠責保険で認定される等級よりも高くなる傾向があります。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【お知らせ】令和4年 年末年始の営業について
今年も大変お世話になりました。当事務所の年末年始の営業についてお知らせいたします。
令和4年12月29日(木)から令和5年1月4日(水)まで休業いたします。
令和4年は,12月28日(水)午後6時まで営業いたします。
令和5年は,1月5日(木)午前10時より営業いたします。
よいお年をお迎えください。

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【交通事故】交通費
交通事故被害者が通院等で交通費を負担した場合には、交通費が損害となります。
一 通院交通費
1 通院交通費とは
交通事故被害者が、入院、退院、転院、通院した場合の交通費は損害にあたります。
原則として実費が損害となりますが、どのような交通手段を利用した場合でも全額が損害と認められるわけではなく、相当性のある範囲で損害となります。
2 交通手段
電車やバス等の公共交通機関を利用した場合には、電車代やバス代等が損害となります。「運賃×2(往復)×通院日数」で計算します。
自家用車を利用した場合にはガソリン代や高速道路代・有料道路代、駐車場代が損害となります。ガソリン代については正確な金額を算定することが困難ですので、1kmあたり15円で計算することが多いです。
タクシーを利用した場合には、怪我の内容や程度等具体的な事情のもと相当性があるときはタクシー代が損害となりますが、相当性がないときは公共交通機関の料金の範囲で損害となります。
3 通院交通費を請求するための資料
通院交通費を請求するため、いつ、どのような交通手段を利用したのか記録に残しておくことが必要です。また、タクシー等、領収証が取れるものについては領収証を取っておくことが必要です。
自賠責保険に被害者請求する場合や任意保険会社に請求する場合には、通院交通費明細書を作成する必要があります。
公共交通機関やタクシーを利用した場合は、日付、区間、運賃等を記載します。電車代、バス代については領収証の添付は不要ですが、タクシー代については領収証の添付が必要です。
自家用車を利用した場合には、日付、区間、距離等を記載します。ガソリン代については領収証の添付は必要ありませんが、駐車場代、高速道路代・有料道路代については領収証等の添付が必要となります。
4 将来の通院交通費
治療終了日(症状固定日)後に通院した場合の交通費については損害とならないのが原則です。
もっとも、症状の内容や程度等によっては、治療終了日(症状固定日)後の治療費が損害となることがあり、その場合には交通費も損害となりえます。
二 通院交通費以外の交通費
1 近親者の付添や見舞の交通費
近親者の付添や見舞の交通費についても事故と相当因果関係があれば損害となりますが、付添費や入院雑費に含まれるものとして扱われ、別途、損害とは認められないことがあります。
近親者が遠隔地から付添や見舞に来た場合には交通費が高額となりますので、交通費が損害と認められるか問題となります。
2 通勤、通学等の交通費
被害者が通勤や通学をした場合の交通費等、通院以外の交通費についても、事故と相当因果関係があれば損害となります。
怪我のためタクシーで通勤した場合等、事故により通常とは異なる交通手段を利用することになった場合に交通費が損害と認められるか問題となります。

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