【離婚】協議離婚
離婚する方法には,①協議離婚,②調停離婚,③審判離婚,④和解離婚,⑤認諾離婚,⑥判決離婚があります。
離婚の大半は協議離婚ですが,協議離婚ができない場合には,離婚調停をし,それでも離婚できない場合には,離婚訴訟をすることになります。
ここでは協議離婚について説明します。
一 協議離婚の方法
夫婦は,その協議で,離婚をすることができます(民法763条)。
協議離婚は,戸籍法の定めるところにより,届け出ることによって,その効力を生じます(民法764条,739条1項)。その届け出は,当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で,または,これらの者から口頭でしなければなりません(民法764条,739条2項)。
届け出は書面で行うのが一般的であり,役所や役場から離婚届の用紙をもらってきて,その用紙に必要事項を記入し,夫婦双方が署名押印し,証人2人に署名押印をしてもらい,本籍地または所在地の役所や役場に離婚届を提出します。
離婚届は,民法764条において準用する民法739条2項,民法819条1項その他の法令の規定に違反しないことが認められた後でなければ,受理されませんが(民法765条1項),違反して受理された場合であっても,離婚の効力は妨げられません(民法765条2項)。
なお,離婚届作成後,離婚意思がなくなった場合には,役所・役場に離婚届が受理される前に不受理申出をしておけば,離婚届は受理されなくなります(離婚届不受理申出制度)。
また,婚姻によって氏を改めた夫又は妻は,離婚をすると婚姻前の氏に復しますが,離婚の日から3か月以内に戸籍法の定めるところにより届け出れば,離婚の際に称していた氏を称することができます(民法767条)。
二 離婚以外に協議すべきこと
1 親権者の指定
父母が協議離婚をするときは,その協議で,父母の一方を親権者と定めなければなりません(民法819条1項)。
親権者を定めない場合には,離婚届が受理されませんので(民法765条1項),協議離婚自体ができないことになります。
そのため,どちらが親権者となるかで協議がまとまらない場合には,協議離婚ができないので,家庭裁判所に離婚調停の申立てをすることになります。
2 養育費
養育費について協議がまとまった場合には,合意書を作成しておくべきです。
その際,執行認諾文言付き公正証書にしておけば,養育費の支払がない場合には,強制執行をすることができます。
また,協議がまとまらない場合やできない場合には,家庭裁判所に養育費請求の調停や審判の申立てをして,調停や審判で養育費の額を定めることができます(なお,調停前置主義により,まずは調停をするのが原則です。)。
3 面会交流
子との面会交流についても協議しておくべきです。
協議がまとまらない場合には,家庭裁判所に面会交流の調停や審判の申立てをして,調停や審判で養育費の額を定めることができます(なお,調停前置主義により,まずは調停をするのが原則です。)。
4 慰謝料
協議離婚に至った原因が,配偶者の不貞行為等の有責行為にある場合には,慰謝料請求をすることができます。
慰謝料について協議がまとまった場合には,合意書を作成しておくべきです。
その際,執行認諾文言付き公正証書にしておけば,慰謝料の支払がない場合には,強制執行をすることができます。
また,協議がまとまらない場合やできない場合には,地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起します。
5 財産分与
協議上の離婚をした者の一方は,相手方に対し,財産分与請求をすることができます(民法768条1項)。
財産分与について協議がまとまった場合には,合意書を作成しておくべきです。
財産分与として金銭の支払を合意した場合,執行認諾文言付き公正証書にしておけば,金銭が支払われないときに強制執行をすることができます。
また,協議がまとまらない場合やできない場合には,家庭裁判所に財産分与の調停や審判の申立てをして,調停や審判で財産分与の方法や額を定めることができます(なお,調停前置主義により,まずは調停をするのが原則です。)。
なお,財産分与の調停や審判の申立ては,離婚の時から2年以内にしなければなりません(民法768条2項)。
6 年金分割
離婚する場合には,年金分割請求をすることができます。
年金分割には,合意分割(当事者が合意または裁判で分割割合を定める年金分割)と3号分割(第3号被保険者である期間についての年金分割)があります。
3号分割については,年金分割請求をすれば,自動的に2分の1の割合で按分されることになるため,按分割合についての協議は不要ですが,合意分割については,按分割合について協議が必要となります。
合意分割の按分割合について協議がまとまった場合には,当事者双方(またはその代理人)が年金事務所に直接行って合意書を提出するか,公正証書を作成するか,私署証書を作成して,公証人の認証を受けます。
また,協議がまとまらない場合やできない場合には,家庭裁判所に年金分割の割合を定める調停や審判の申立てをして,調停や審判で按分割合を定めることができます(なお,調停前置主義により,まずは調停をするのが原則です。)。
なお,年金分割については,原則として離婚から2年以内に請求しなければならないので,ご注意ください。
三 まとめ
以上のように,協議離婚するにあたって協議すべき事項は多岐にわたります。
最低限,離婚と親権者の指定について協議がまとまれば,協議離婚することができ,それ以外の離婚条件(養育費,面会交流,慰謝料,財産分与,年金分割の按分割合)については,別途,協議や調停等により解決することもできますが,離婚後に改めて協議等をすることは手間がかかりますし,思った通りに行かず,離婚したことを後悔することもありますので,一刻も早く離婚したいというのではない限り,離婚条件について全て合意ができてから離婚すべきでしょう。