【離婚】親権と監護権の分離

2016-09-28

離婚の法律相談の際,相談者の方から,「親権を相手に渡しても良いが,監護権は自分が取りたい。」あるいは「監護権は相手に渡しても良いが,親権は自分が取りたい。」と言われることがありますが,親権と監護権を分けるということはどういうことでしょうか。 親権と監護権の分離について説明します。

 

一 親権と監護権

1 親権

親権とは,親が未成年の子に対して有する身分上,財産上の監督,保護を内容とする権利,義務のことです。また,親権を有する者を親権者といいます。

親権の具体的な内容としては,身上監護権(民法820条から823条)と財産管理権(民法824条)があります。

父母の婚姻中は,父母が共同で親権を行使するのが原則ですが(民法818条3項),離婚する場合には,父母の一方が親権者となります(民法819条)。

 

2 監護権

監護権とは,未成年子の子を監督,保護する権利,義務のことです。また,監護権を有する者を監護者といいます。

父母が離婚をする場合,婚姻を取り消す場合,父が子を認知する場合に,父母は,子を監護すべき者(監護者)を協議で定めることができますし,協議が成立しない場合や協議ができない場合には,家庭裁判所が監護者を定めることができます(民法766条,民法771条,民法749条,民法788条)。監護者を指定するにあたっては,子の利益を最も優先して考慮しなければなりません(民法766条1項)。

また,父母が婚姻中の場合でも,別居しているときに,民法766条を類推適用して,監護者を指定することができると解されております。

監護者は,父母のいずれかがなることが通常ですが,父母に子を監護させることが適切でなく,父母以外の第三者が子を監護している場合には,その第三者を監護者と指定することもできると解されております。

 

3 親権と監護権の関係

親権の具体的内容として身上監護権があるため,親権者が子を監護するのが原則であり,親権者とは別に監護者を指定する必要は通常ありません。

もっとも,親権から監護権を分離して,親権者とは別に監護者を定めることはできます。

ただし,監護者を指定するにあたっては子の利益を最も優先して考慮しなければならないところ(民法766条1項),子を監護する者が親権者でない場合には,子を代理して財産管理を行うことができない等,子の監護に支障が生じるおそれがあるため,親権と監護権を分離することは,例外的であるといえます。

 

二 監護者を指定する場合

父母は協議により監護者を定めることができますが,協議が成立しない場合や協議ができない場合には,家庭裁判所に,監護者指定の調停を申し立て,調停で監護者を定めるか,審判で監護者を指定してもらうことになります。

監護者を指定する場合としては,以下のような場合があります。

 

1 別居している夫婦の間で,監護者を指定する場合

父母が婚姻中の場合でも,別居しているときに,父母のどちらが子を監護するかはっきりさせるために,民法766条を類推適用して,監護者を指定することができます。

婚姻中,夫婦は共同で親権を行使することになるため,双方が子を監護することになりりますが,別居した場合には,夫婦間で,子の引き渡しを求めて争いになることがあります。

そのため,別居中,夫婦のどちらが子を監護するかはっきりさせるため,監護者の指定をすることがあります。

 

2 離婚に際して,親権者とは別に監護者を指定する場合

離婚の際,どちらが親権者となるか夫婦で争いになり,妥協案として,親権者と監護者を分けることがあります。

しかし,離婚した父母が協力しあうことが難しい場合が多いため,親権者と監護者を分けると子の監護に支障が生じるおそれがあります。

そのため,子の利益の観点からは,親権者と監護権者を分けることは慎重であるべきでしょう。

 

3 離婚後に監護者を指定する場合

離婚後に親権を有しない親が子を監護している場合,子を監護する親が,自身を監護者に指定することを求めることがあります。

もっとも,親権者と監護者を分けると子の監護に支障が生じるおそれがありますので,親権者の変更で対応したほうが,子の利益に適う場合が多いと考えられます。

そのため,親権者と監護者を分けることは慎重であるべきでしょう。

 

三 まとめ

以上のとおり,親権と監護権を分離することはできますが,子の利益の観点からすれば,分離するかどうかについては慎重に考えるべきでしょう。

特に,離婚当事者間で争いになっている場合には,協力関係が期待できないので,なかなか分離が認められないのが実際のところです。

 

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