【労働問題】労働契約が終了する場合

2016-06-20

労働契約が終了する場合として,①解雇,②辞職,③合意解約,④定年,⑤有期労働契約における期間の満了,⑥当事者の消滅があります。どのような原因で労働契約が終了したかによって,規制の内容が異なります。以下,簡単に説明します。

 

1 解雇

解雇とは,使用者から労働契約を解約することです。

解雇には,普通解雇と懲戒解雇(懲戒処分として行われる解雇)があります。

また,経営上の必要から人員削減のために行われる整理解雇があります。

解雇は労働者の不利益が大きいことから,解雇濫用規制(労働契約16条),解雇予告・解雇予告手当(労働基準法20条)等,規制されています。

 

2 辞職

辞職とは,労働者から労働契約を解約することです。

辞職は,労働者の一方的な解約の意思表示であり,使用者に意思表示が到達した時点で効力が生じるため,到達後は撤回できません。

また,辞職には解雇の規制は及ばないため,使用者が,解雇の規制を免れようとして労働者に退職勧奨をし,辞職させようとすることがあります。

使用者が退職勧奨すること自体は問題ありませんが,執拗に退職勧奨した場合には不法行為となることがありますし,辞職の意思表示に瑕疵があるものとして無効・取消し原因となることがあります。

 

3 合意解約

合意解約とは,使用者と労働者が,合意により,労働契約を将来に向けて解約することです。

依願退職は,労働者が退職願を出し,使用者が承諾して退職するのが通常であるため,合意解約であると解されます。

退職願は合意解約の申し込みであり,使用者が承諾することで合意解約が成立するため,使用者が承諾するまでは撤回することができます。

また,合意解約には解雇の規制は及ばないため,使用者が,解雇の規制を免れようとして労働者に退職勧奨をし,労働契約を合意解約しようとすることがありますが,執拗な退職勧奨は不法行為となることがありますし,退職の意思表示の無効・取消し原因となることがあります。

 

4 定年

労働者が一定の年齢に達したときに労働契約が終了する制度を定年制といい,その年齢のことを定年といいます。

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)により,原則として,定年は60歳を下回ることはできません(同法8条)。また,事業主は,65歳までの安定した雇用を確保するため,定年の引上げ,継続雇用制度,定年制の廃止のいずれかを講じなければなりません(同法9条)。

使用者が雇用継続制度を導入する場合,使用者と労働者は新たに労働契約を締結することになりますが,使用者が再雇用を拒否した場合には,解雇権濫用法理が類推適用され,再雇用が拒否できないことがあります。

 

5 有期労働契約における期間の満了

期間の定めがある労働契約(有期労働契約)は,期間の満了により終了します。

期間満了前は,やむを得ない事由がある場合でなければ解雇できません(労働契約法17条1項)。

有期労働契約については,更新されることがあります。

更新により契約期間が一定期間に達した場合,労働者の申込みにより,有期労働契約は期間の定めのない労働契約に転換されます(労働契約法18条)。

また,更新が繰り返されている場合に,使用者が更新を拒否すること(雇止め)については,従前は解雇権濫用法理を類推適用されていましたが(雇止め法理),現在は労働契約法19条により規制されています。

 

6 当事者の消滅

労働契約の当事者が死亡したときや,会社が解散して清算手続が完了し法人格がなくなったときには,労働契約は終了します。

なお,事業が承継された場合には,労働契約も承継されるか問題となります。

 

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