【離婚】離婚と氏(姓)
夫婦は,婚姻の際に夫または妻の氏のいずれかを称することになります(民法750条)。
また,夫婦が婚姻中に生まれた子(嫡出子)は父母の氏を称します(民法790条1項本文)。
では,離婚した場合,夫婦や子の氏はどうなるのでしょうか。
一 夫婦の氏
1 離婚による復氏
婚姻によって氏を改めた夫または妻は,離婚によって婚姻前の氏に戻ります(民法767条1項,771条)。
原則として,婚姻前の戸籍に編入されますが,婚姻前の戸籍が除籍されている場合や復氏する者が新戸籍の編成を申し出た場合には,新戸籍を編成します(戸籍法19条1項)。
2 婚氏続称
婚姻前の氏に復した夫または妻は,離婚の日から3か月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって,離婚の際に称していた氏を称することができます(民法767条2項,771条)。
この場合には,家庭裁判所の許可は不要です。
3 氏の変更の許可
3か月以内に婚氏続称の届け出をしなかったが,婚氏を称したい場合や,婚氏続称の届け出をしたが,婚姻前の氏を称したい場合には,家庭裁判所の許可を得た上で,氏の変更の届け出をしなければなりません。その際には,「やむを得ない事由」がなければなりません(戸籍法107条1項)。
なお,婚氏続称することにした者が後に婚姻前の氏へ変更を求めた場合には,「やむを得ない事由」の要件は,一般の場合よりは緩和して解釈される傾向があります。
二 子の氏
1 離婚後の子の氏
両親が離婚しても,子の氏は変更されません。
そして,父の氏を称する子は父の戸籍に入り,母の氏を称する子は母の戸籍に入るため(戸籍法18条2項),例えば,離婚により母が子の親権者となっても,子が父の氏を称している場合には,子を母の戸籍に入れることはできません(なお,母が婚氏続称をしたとしても,婚姻中の氏と婚氏続称による氏は,法的には別の氏になりますので,やはり,子を母の戸籍に入れることはできません)。
そのため,子を母の戸籍に入れるには,子の氏を母の氏に変更する必要があります。
2 氏の変更の許可
子が父または母と氏を異にする場合には,子は,家庭裁判所の許可を得て,戸籍法の定めるところにより届け出ることによって,父または母の氏を称することができます(民法791条1項)。
氏の変更許可の申立ては子が申立人となりますが,子が15歳未満の場合には法定代理人(親権者等)が子に代わって申し立てをすることができます(民法791条3項)。
3 子の成人後の氏の変更
氏を変更した子は,成年に達した時から1年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって,従前の氏に復することができます(民法791条4項)。
この場合,子は新戸籍を編成することもできますし,従前の氏を称する親の戸籍に入籍することもできます。