【離婚】退職金の財産分与請求はできますか?
熟年離婚したいと思った妻が、まっさきに思い浮かべるのは、夫の退職金を財産分与請求したいということではないでしょうか。
とりわけ、妻が長年専業主婦をしてきた場合には、離婚後の生活の不安から、まとまった金額を受け取っておきたいと考え、夫の定年退職を待って離婚を迫るケースは多いようですが、将来もらえる退職金が財産分与の対象と認められることもあります。
退職金の財産分与額は離婚後の生活設計にも大きな影響がありますので、既に退職金が支払われた場合と将来支払われる場合にわけて、簡単に説明させていただきます。
一 既に退職金が支払われている場合
退職金は、労働の対価の後払としての性格があり、夫婦が協力して形成した財産であるといえますので、清算的財産分与の対象となります。
清算の対象となるのは、婚姻後別居するまでの期間(同居期間)に対応する分であり、婚姻前に働いていた期間に対応する分や、別居して夫婦の協力がない期間に対応する分については財産分与の対象になりません。
財産分与の対象額=退職金額×同居期間÷全勤務期間
そして、財産分与の対象となる退職金額のうち、財産分与請求者の寄与割合に相当する額が分与されることになります。
二 将来支払われる退職金の場合
将来退職金が支払われるかどうかは不確実ですが、退職金は労働の対価の後払としての性格があり、将来支払われる退職金についても夫婦が協力して形成した財産であるといえますので、支払われる蓋然性が高い場合には、財産分与の対象となります。
その場合の財産分与の対象となる退職金額の算定方法については、幾つかありますが、①別居時に自己都合退職したと仮定して、その際に支払われる退職金のうち、同居期間に対応する分を財産分与の対象とすることが多いといわれております。
財産分与の対象額=別居時に自己都合退職した場合の退職金額×同居期間÷全勤務期間
そして、財産分与の対象となる退職金額のうち、財産分与請求者の寄与割合に相当する額が分与されることになります。
なお、将来の退職金の財産分与対象額の計算方法としては、①のほかに、
②定年退職時に取得する退職金のうち、同居期間に対応する分から中間利息を控除したものを財産分与の対象とすること
(財産分与の対象額=定年退職した場合の退職金額×同居期間÷全勤務期間×退職時までの年数に対応するライプニッツ係数)、
③定年退職時に取得する退職金のうち、同居期間に対応する分を財産分与の対象とし、中間利息を控除する代わりに、退職した時に支払うものとすること
(財産分与の対象額=定年退職した場合の退職金額×同居期間÷全勤務期間)
等がありますが、事案によりふさわしい計算方法がとられるものと考えられます。