交通事故における損害(後遺症)

2014-08-22

交通事故により被害者が傷害を受け、治療が終了しても被害者に後遺症(後遺障害)が残る場合があります。

交通事故により、被害者に後遺症がある場合の主な損害として

①後遺症逸失利益

②後遺症慰謝料

があります。

一般的な場合について簡単に説明します。

 

一 後遺症逸失利益

後遺症がなければ将来にわたって得られたであろう利益のことを後遺症逸失利益といいます。

1 後遺症逸失利益の計算式

逸失利益の額は、以下の計算式で計算します。

後遺症逸失利益

=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

2 基礎収入額

通常、被害者の事故前の収入や、賃金センサスの平均賃金を基礎として逸失利益を算定します。

例えば、給与所得者の場合、原則として、事故前の収入を基礎収入としますが、収入が平均賃金を下回る場合であっても、平均賃金が得られる蓋然性があれば、平均賃金を基礎収入とすることができます。

また、家事従事者の場合、賃金センサスの産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎収入とするのが通常です。

3 労働能力喪失率

労働能力喪失率は、後遺障害の等級によります。

原則として以下のとおりです。

 1級  100%
 2級  100%
 3級  100%
 4級  92%
 5級  79%
 6級  67%
 7級  56%
 8級  45%
 9級  35%
 10級  27%
 11級  20%
 12級  14%
 13級  9%
 14級  5%

4 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

(1)原則

労働能力喪失期間は原則として症状固定日から67歳までとされております。

もっとも、後遺症逸失利益は症状固定時を基準に算定することから、逸失利益の算定にあたっては、中間利益を控除する必要があります。

中間利息の割引率は年5%とされています。

また、中間利息の控除の方法として、ライプニッツ方式が用いられております。

(2)平均余命の2分の1とする場合

労働能力喪失期間を67歳までとすると、67歳以上の高齢者には逸失利益がないことになるのではないかと思われますが、その場合には平均余命の2分の1の期間を労働能力喪失期間として逸失利益を算定します。

また、67歳未満であっても、事故当時の平均余命の2分の1に当たる年数が67歳までの年数より長い場合には、平均余命の2分の1の期間を労働能力喪失期間として、逸失利益を算定します。

後遺症逸失利益

=平均賃金×労働能力喪失率×平均余命の2分の1に対応するライプニッツ係数

(3)18歳未満の場合

労働能力喪失期間は症状固定日からとされていますが、症状固定日が18歳未満の場合には18歳から(ただし、大学卒業を前提とする場合には、大学卒業予定時から)労働能力が喪失すると考えます。

そのため、被害者が18歳未満の未就労者の場合には、以下の計算式で計算します。

また、基礎収入については、賃金センサスの平均賃金を用いるのが通常です。

後遺症逸失利益

=平均賃金×労働能力喪失率×(症状固定時の年齢から67歳までのライプニッツ係数-18歳までのライプニッツ係数)

5 生活費控除はしません

後遺症逸失利益の場合には、生活費を控除しないのが原則です。

6 むち打ち症の場合

むち打ち症(むち打ち損傷)の場合、後遺症が永続するかどうか明らかではないため、後遺障害の等級が認定された場合であっても、労働能力喪失期間が限定される傾向にあります。

12級で10年程度、14級で5年程度に制限される場合が多いようです。

7 計算式

年収400万円の給与所得者(事故時40歳)に10級の後遺障害がある場合

 基礎収入額  400万円
 労働能力喪失率  27%
 労働能力喪失期間  27年
 27年に対応するライプニッツ係数  14.6430

逸失利益

=400万円×0.27×14.6430

=1581万4440円

二 後遺症慰謝料

裁判基準(「赤い本」の基準)では、被害者に後遺障害がある場合の慰謝料額は以下のとおりです。おおよその金額ですので、事案により慰謝料額が異なります。。

 1級  2800万円
 2級  2370万円
 3級  1990万円
 4級  1670万円
 5級  1400万円
 6級  1180万円
 7級  1000万円
 8級  830万円
 9級  690万円
 10級  550万円
 11級  420万円
 12級  290万円
 13級  180万円
 14級  110万円

なお、14級にいたらない後遺症の場合であっても、後遺症慰謝料が認められることはあります。

また、重度の後遺障害があり、死亡に比肩するような精神的苦痛を受けた場合には近親者の慰謝料も認められます。

 

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