姻族関係の終了(姻族関係終了届)
婚姻により,配偶者の親や兄弟姉妹等の血族との間には姻族関係ができます。
姻族関係は配偶者が亡くなっても継続しますが,生存配偶者は,姻族関係終了届を出すことにより,亡くなった配偶者の血族との姻族関係を終了させることができます。
一 姻族関係
1 姻族関係とは
配偶者の一方と他方の血族との関係を姻族関係といい,三親等以内の姻族(配偶者の父母,祖父母,曽祖父母,おじおば,兄弟姉妹,甥姪)は親族になります(民法725条3号)。
2 姻族関係の効果
(1)扶養義務
直系血族および兄弟姉妹は互いに扶養義務を負いますが(民法877条1項),特別な事情がある場合には,三親等内の親族間でも扶養義務を負うことがあります(民法877条2項)。
そのため,姻族の間であっても扶養義務を負うことがあります。
(2)婚姻障害
直系姻族の間では婚姻することができません。姻族関係が終了した後も婚姻はできません(民法735条)。
(3)その他
成年後見の申立権者になれるなど,姻族関係(親族関係)があることによるさまざまな効果があります。
3 姻族関係の終了
(1)離婚
姻族関係は,配偶者と離婚したことにより終了します(民法728条1項)。
(2)配偶者の死亡
配偶者の一方が死亡した場合には,生存配偶者と死亡配偶者の血族との間の姻族関係は当然には終了しません。生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときに終了します(民法728条2項)。その意思表示は姻族関係終了届の届出により行います。
二 姻族関係終了届について
1 姻族関係終了届とは
民法728条2項の規定によって姻族関係を終了させる意思を表示しようとする者は,死亡した配偶者の氏名,本籍及び死亡の年月日を届出書に記載して,その旨を届け出なければなりません(戸籍法96条)。この届け出のことを姻族関係終了届といいます。
2 届出人
届出ができるのは,生存配偶者です(民法782条2項)。それ以外の人(死亡配偶者の血族等)が届出をすることはできません。
3 届出場所
姻族関係終了届は,届出人の本籍地又は所在地の市区町村役場の窓口に届け出ます(戸籍法1条,25条1項)。
4 届出期間
配偶者の死亡後に届け出ができます。提出期限はありません。
届出をした日から法律上の効力が発生します。
三 姻族関係終了届の効果
1 姻族関係の終了
生存配偶者が姻族関係終了届を出すことにより,亡くなった配偶者の血族との姻族関係が終了します。
子と亡くなった配偶者の血族との親族関係には影響しません。
2 扶養義務
生存配偶者と亡くなった配偶者の血族との間の姻族関係が終了することにより,扶養義務を負うこともなくなります。
3 婚姻障害
直系姻族の間では,姻族関係が終了した後であっても婚姻はできません(民法735条)。
4 氏や戸籍
姻族関係終了届を出しても,氏や戸籍の変動はありません。
生存配偶者は,復氏届を提出することにより婚姻前の氏に復することができます(民法751条1項,戸籍法95条)。
5 相続
姻族関係終了届を出しても,亡くなった配偶者の相続人としての資格はなくなりませんので,生存配偶者は亡くなった配偶者の遺産を取得することができます。
6 遺族年金
配偶者が亡くなった場合,生存配偶者は要件を充たせば遺族年金を受給することができます。姻族関係終了届を出しても遺族年金が受け取れなくなるわけではありません。