別居した配偶者に同居を求める方法(同居調停・審判,円満調停)

2017-06-10

夫婦の一方が家から出ていって戻ってこない場合,家庭裁判所に調停や審判の申立てをして同居を求めることができるでしょうか。

 

一  同居調停・審判

夫婦は同居し,互いに扶助,協力する義務を負いますので(民法752条),夫婦の一方が正当な理由なく別居した場合には同居義務に違反します。

 

家事事件手続法別表第2記載の事件は家庭裁判所に調停及び審判の申立てができますが,別表第2の1項「夫婦間の協力扶助に関する処分」には同居に関する処分も含まれると解されていますので,夫婦の一方が別居した場合,夫婦の他方は家庭裁判所に同居を求める調停や審判の申立てをすることができます。

 

調停で,相手方が同居に合意すれば解決しますが,相手方が同居に応じず,調停が不成立となった場合には審判に移行します(家事事件手続法272条4項)。

審判では,別居しているというだけで同居が命じられるわけではありません。婚姻関係が破綻しておらず,同居を拒否することに正当な理由がない場合には同居が命じられることがありますが,婚姻関係が破綻している場合,別居の原因が申立人にある場合,相手方の同居拒否の意思が強く翻意する可能性がない場合等には申立てが却下されます。

 

また,同居を命じる審判がなされても,相手方を強制的に同居させることはできませんので(直接強制も間接強制もできません。),相手方が任意に履行することを期待するほかありません。

なお,同居を命じる審判がなされたのに相手方が同居しない場合は,相手方の同居義務違反となり,離婚原因として考慮されることがあります。

 

二 円満調停

同居を命じる審判がなされても,相手方の意に反して強制的に同居させることができるわけではありません。また,相手方が同居を拒んでいるからといって,審判をして同居させようとするのでは,夫婦関係を悪化させることになりかねません。

本当に相手方に同居してもらいたいのであれば,相手方との関係を修復して,相手方に同居に応じてもらえるようにすべきでしょう。

そのようなことから,相手方に同居を求める場合であっても,同居の調停・審判の申立てではなく,夫婦関係調整(円満)調停の申立てをすることが多いです。

円満調停は,調停が不成立になっても審判には移行しないため,調停のみの手続ですが,家庭裁判所の関与のもと,相手方との関係を修復し,同居に応じてもらえるよう話し合いをすることができます。

 

ページの上部へ戻る

Copyright(c) 2016 ながせ法律事務所 All Rights Reserved.