【離婚】養育費・婚姻費用の履行確保

2015-04-30

一 事例

私は,先日,調停で夫と離婚しました。調停では,私が子供の親権者になること,夫が子供の養育費を支払うことが決まり,その旨調停調書に記載されました。

夫は,はじめのうちは養育費を支払ってくれていましたが,3か月ほど前から,何かと言い訳をして支払いを渋るようになりました。

子供は2人とも中学生でお金がかかりますので,私の給料だけではとても生活していけません。夫に養育費を支払わせるには,どうしたらいいでしょうか。

二 履行確保の方法

1 履行勧告

家庭裁判所の調停や審判で決まった金銭の支払いなどの義務を履行しない場合,権利者の申出により,裁判所は,義務者に対して義務の履行を勧告することができます(家事事件手続法289条)。

申出に費用はかかりませんし,簡易迅速な方法であるため,利用しやすい方法であるといえます。

ただし,義務者が勧告に従わなかった場合,義務の履行を強制することはできません。

 

2 履行命令

家庭裁判所の調停や審判で決まった金銭の支払いその他の財産上の給付を目的とする義務の履行を怠った場合,権利者の申立てにより,裁判所は,義務者に対して義務の履行を命ずる審判をすることができます(家事事件手続法290条)。

義務者が正当な理由なく命令に従わないときは,10万円以下の過料に処せられます。

義務者は命令に従わなくても過料に処されるだけですので,権利者が債権を回収することができるわけではありません。

 

2 強制執行

(1)金銭債権の執行

地方裁判所は,権利者の申立てにより,義務者の財産(不動産,動産,債権)を差し押さえて,その財産の中から金銭債権の弁済を受けます。

養育費や婚姻費用等の金銭債権については,以下の規定があります。

①将来分の差押え

養育費や婚姻費用等の定期金債権の一部に不履行がある場合には,期限が到来していない分についても,給料その他の継続的給付にかかる債権を差し押さえることができます(民事執行法151条の2)。

②差押禁止債権の範囲

差押禁止債権について,通常は,給料等の4分の3が原則として差押禁止ですが(民事執行法152条1項),婚姻費用や養育費等の債権を請求する場合には,差押禁止部分は原則として2分の1とされています(民事執行法152条3項)。

(2)間接強制

間接強制とは,権利者の申立てにより,地方裁判所が,義務を履行しない者に対し,一定の金銭の支払いを命じることにより,義務者に心理的強制を加え,自発的に支払を促すことができます(民事執行法172条1項)。

金銭債権の場合には間接強制ができないのが原則ですが,婚姻費用や養育費については,間接強制をすることもできます(民事執行法167条の15)。

ただし,義務者に支払能力がない場合や債務を弁済することにより生活が著しく窮迫する場合には,間接強制は利用できません(民事執行法167条の15第1項但書)。

また,婚姻費用や養育費などの定期金債権の一部に不履行がある場合には,6月以内に期限が到来する分についても間接強制による強制執行を開始することができます(民事執行法167条の16)。

 

三 まとめ

養育費や婚姻費用の履行を確保するには,以上のような方法があります。

家庭裁判所に履行勧告をしてもらい,それで相手方が履行してくれば解決しますが,強制力がないため,相手方が従わない場合には,強制執行を検討すべきでしょう。

なお,当事者が協議して養育費や婚姻費用の支払いの合意をしただけの場合には,債務名義がないので,民事訴訟をするなどして債務名義を得た上で強制執行の手続をとることになります。

 

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