【離婚】離婚事件の検討事項

2017-10-06

離婚事件では,①どうやって離婚するのか(離婚手続),②離婚できるのか(離婚原因),③離婚以外にどういったことを決めるのか(離婚条件),④生活をどうするか,⑤弁護士に依頼する必要があるか考えましょう。

 

一 離婚の手続

1 離婚協議

当事者の協議により離婚することを協議離婚といいます。
離婚協議がまとまった場合,離婚届を作成し,役所に提出します。

 

2 離婚調停

離婚協議がまとまらなかった場合には,家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
①離婚する旨の調停が成立(調停離婚),②調停に代わる審判が確定(審判離婚)することにより離婚できます。

 

3 離婚訴訟

離婚調停で解決しなかった場合,離婚訴訟を提起します。
①離婚を認める判決が確定(判決離婚),②離婚する旨の和解が成立(和解離婚),③被告が請求を認諾(認諾離婚)することにより離婚できます。

 

二 離婚原因

夫婦が合意により離婚する場合には離婚原因は不要ですが,合意ができず,判決で離婚する場合には,離婚原因(民法770条1項)が必要となります。
離婚原因は,①不貞行為,②悪意の遺棄,③3年以上の生死不明,④回復の見込みのない強度の精神病,⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由の5つです。
判決離婚以外の協議離婚,調停離婚,和解離婚等の場合には離婚原因は不要です。
もっとも,離婚協議や離婚調停がまとまらなければ離婚訴訟となり,最終的に離婚原因があれば判決で離婚が認められてしまうため,協議や調停で離婚するかどうかについても離婚原因の有無が影響してきます。
また,離婚原因がない場合,相手方が離婚に応じなければ,離婚できませんので,相手方が離婚を渋っているときには,離婚に応じるよう離婚条件を譲歩しなければならなりますので,離婚原因の有無は離婚条件にも影響してきます。

 

三 離婚条件

離婚をする際には,①親権者の指定,②養育費,③面会交流,④慰謝料,⑤財産分与,⑥年金分割の按分割合を定めることがなります。
このうち①親権者の指定をしなければ離婚することができませんので,離婚と同時に決めなければなりませんが,②から⑥については,離婚後に決めることもできます。

1 親権者の指定

未成年の子がいる夫婦が離婚するときには,その一方を親権者と定めなければなりません。どちらが親権者となるかは夫婦の合意で定めますが,合意ができない場合は裁判所が判断します。
父母の双方が親権を主張している場合,一般的には母親が有利であるといわれていますが,父親が親権者となることがないわけではありません。

 

2 養育費

離婚後に子を監護する親は,監護しない親に対し,養育費の支払を請求することができます。子の親権者が子を監護することが通常であり,親権者がそうでない親に対し養育費の支払を請求するのが通常です。
夫婦双方の収入を基に,簡易算定表や簡易算定方式により算定するのが通常です。

 

3 面会交流

離婚後,夫婦の一方が子を監護しますが,子を監護しない親は,子を監護する親に対し,子との面会交流を求めることができます。

 

4 慰謝料

夫婦の一方の有責行為により離婚に至った場合には,慰謝料請求をすることができます。
慰謝料請求する場合としては,不貞行為やDVがあった場合が考えられます。
性格の不一致が原因で離婚した場合に慰謝料請求することは難しいでしょう。

 

5 財産分与

離婚の時から2年以内であれば,離婚した夫婦の一方は,他方に対し,財産分与請求をすることができます。
財産分与には,①清算的財産分与(夫婦が婚姻中に築いた財産の清算),②扶養的財産分与(離婚後の扶養を考慮した財産分与),③慰謝料的財産分与(慰謝料的な要素を考慮した財産分与)があります。このうち財産分与の中心となるのは①清算的財産分与であり,②,③は補充的に考慮されるにとどまります。
清算的財産分与では,相手方にどのような財産があるか把握する必要があります。

 

6 年金分割

夫婦の一方または双方が婚姻期間中に厚生年金や共済年金に加入している場合には,原則として離婚から2年以内であれば,年金分割請求をすることができます。
年金分割には,①合意分割(当事者が合意または裁判で分割割合を定める年金分割)と②3号分割(第3号被保険者である期間についての年金分割)があります。
②3号分割では,年金分割請求をすれば,自動的に2分の1の割合で按分されるので,按分割合を決める必要はありません。
これに対し,①合意分割については,当事者の合意で按分割合を定めますが,合意ができなければ裁判所が按分割合を定めます。裁判所が按分割合を定める場合,2分の1となることがほとんどです。

 

四 生活をどうするか

1 離婚するまでの間の生活

離婚事件では,夫婦が別居している場合が多いですが,別居中の生活費については,夫婦の一方から他方に対し,婚姻費用分担請求をすることができます。
婚姻費用の分担額は,夫婦双方の収入を基に,簡易算定表や簡易算定方式により算定するのが通常です。

 

2 離婚後の生活

夫婦は,子の監護については別として離婚後は自分の生活は自分で維持しなければなりませんので,仕事,住居,生活費等,離婚後の生活をどうするか予め考えておく必要があります。
離婚後の生活のことを考えないで,離婚や離婚条件を決めてしまうと,離婚後の生活が成り立たず後悔することになりかねません。特に,離婚したいという気持ちが強い場合や自分に離婚原因があるなど後ろめたいことがある場合には,後先を考えずに,相手の言いなりの条件で離婚してしまうことがありますが,後で非常に困ることになります。

 

五 弁護士に依頼するか否か

離婚協議,離婚調停,離婚訴訟の順で弁護士の関与が増えていきます。
協議離婚では弁護士の関与は少ないですし,離婚調停でも弁護士に依頼しない人が多いですが,弁護士に依頼した場合には主張できたはずのことが主張できず,不利な条件で離婚が成立していることが少なくありません。
離婚原因や離婚条件が争いとなっている場合には,弁護士に相談・依頼したほうがよいでしょう。

 

 

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