【離婚】離婚せずに不貞の慰謝料請求をする場合に考えておくこと

2017-09-08

夫婦の一方が不貞行為をした場合であっても,不貞行為をされた側は,①小さい子がいるので離婚できない,②オーバーローンの自宅があり,離婚に伴い処分すると負債だけが残るので,離婚したくても離婚できない,③専業主婦であり,離婚したら生活が成り立たない等,さまざまな理由から,離婚しないという選択をすることが少なくありません。

その場合,せめて配偶者の不倫相手に慰謝料請求をしたいと考えるかもしれませんが,離婚せずに慰謝料請求する場合には,どのようなことに気を付けておくべきでしょうか。

 

一 不貞行為の慰謝料請求

不貞行為(配偶者以外の者と肉体関係をもつこと)は婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害する行為であり不法行為となります。
そのため,不貞行為をされた配偶者は,不貞行為をした配偶者とその不倫相手に対し,不貞行為により精神的苦痛を被った慰謝料請求をすることができます。
もっとも,離婚せず,今後も婚姻関係を継続していく場合には,夫婦は経済的に一体であるので,実際には不貞行為をした配偶者に対し慰謝料請求しないことが多いのではないでしょうか。

 

二 離婚する場合としない場合で慰謝料請求には,どのような違いがあるか

1 慰謝料額

不貞行為の慰謝料額については,不貞行為の期間,不貞行為の態様,不貞行為への主導性,婚姻生活の状況,婚姻関係破綻の有無,請求者側の落ち度の有無等様々な事情を考慮して決まります。
慰謝料額について統一的な基準があるわけではありませんが,不貞行為が原因で離婚に至った場合と離婚に至らなかった場合を比較すると,一般的には,離婚に至った場合のほうが,精神的苦痛が大きいと考えられますので,離婚しない場合の慰謝料額は,離婚した場合より低くなる傾向にあります。
慰謝料額の大まかな目安は,具体的な事情にもよりますが,離婚に至った場合には,200万円から300万円,離婚に至らなかった場合には100万円から150万円ほどになることが多いものと思われます。

 

2 求償

不貞行為は,不貞行為をした配偶者とその不倫相手の共同不法行為であり,両者の損害賠償債務は不真正連帯債務となります。共同不法行為の場合,被害者は各共同不法行為者に損害賠償額全額を請求できますが,共同不法行為者の一人が自分の負担部分を超えて支払った場合には,他の共同不法行為者に求償することができますので,不倫相手のみに慰謝料を請求して支払わせたときには,不倫相手は不貞行為をした配偶者に求償することができます。
離婚せず,婚姻関係を続けようと考えている場合,不倫相手に慰謝料を支払わせた後に不倫相手から求償があると,最終的な解決が長引き,夫婦関係に悪影響が生じかねません。
不倫相手に慰謝料請求はするが,夫に対して求償されたくないときには,求償しないことを条件として慰謝料額を相当程度減額して和解することが多いでしょう。

 

3 夫婦関係への影響

離婚しないで婚姻関係を継続しようと考えている場合,不倫相手に慰謝料請求をするときには夫婦関係への影響を考慮する必要があります。
不倫相手に慰謝料請求をすることで,不倫相手が配偶者から離れ不倫関係が終了することも多いでしょうが,場合によっては,不倫相手に慰謝料請求をして争っていることで夫婦関係が悪化し,離婚に至ってしまうこともないわけではありません。
この点については,一概には言えませんが,具体的な状況を見て対応を検討するほかないでしょう。

 

三 まとめ

離婚をしない場合,不貞行為をした配偶者との婚姻関係が続いていくことになります。
不貞行為は不貞行為した配偶者とその不倫相手の共同不法行為であり,不倫相手だけに慰謝料請求をした場合であっても,不貞行為をした配偶者が無関係というわけではありません。
そのため,不倫相手に慰謝料請求をする場合には,弁護士に相談・依頼する等して慎重に対応したほうがよいでしょう。

 

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