【離婚】財産分与と未払婚姻費用(過去の婚姻費用)
夫婦の別居後,夫婦の一方が婚姻費用を分担していなかった場合,財産分与の中で,過去の未払婚姻費用の清算をすることはできるのでしょうか。
1 過去の婚姻費用分担請求
婚姻費用分担請求は,過去にさかのぼってすることができるとされております。
いつの時点から請求できるのかということについては,要扶養状態になった時から認められることもありますが,原則は,請求時(調停,審判の申立時。申立より前に請求していたことが内容証明郵便等で証明できるのであれば,その時)からです。
そのため,婚姻費用分担請求をしたい場合には,別居後,直ぐに請求すべきです。
また,離婚調停や離婚訴訟が行われている最中であっても婚姻費用分担請求調停や審判の申立をすることができますので,離婚が成立するまでの間の婚姻費用を支払わせたい場合には,速やかに婚姻費用分担請求調停や審判の申立てをすべきです。
なお,離婚後に婚姻費用分担請求ができるかどうかについては,必ずしもできないわけではないでしょうが,通常,請求できるのは,請求時から離婚時までの婚姻費用であることからすれば,離婚後に婚姻費用分担請求しても難しい場合が多いのではないでしょうか。
2 財産分与において,未払婚姻費用の清算をすることができるのか
義務者が婚姻費用を支払わない場合,婚姻費用分担について執行受諾文言付きの公正証書,調停調書,審判書があれば,強制執行することができますので,未払婚姻費用を財産分与で清算する必要はありません。
これに対し,婚姻費用分担請求の調停成立前や審判前に離婚する場合や離婚した場合には,財産分与の中で未払婚姻費用の清算ができるか問題となります。
財産分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して定められますので(民法768条3項),当事者双方が過去に婚姻費用をどのように分担していたかも,事情の一つとして考慮されます。
判例でも,当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の清算のための給付も含めて財産分与の額及び方法を定めることができるとされております。
そのため,配偶者の一方が過去に婚姻費用を支払わなかった場合には,その点についても考慮して財産分与額が定められることになります。
もっとも,未払婚姻費用が財産分与において考慮されるとしても,いつの時点の分から考慮されるのか,または,算定表どおりの金額が認められるのか問題となります。
必ずしも未払婚姻費用全額が財産分与額に上乗せされるわけではありません。
そのため,婚姻費用を支払わせたい場合には,離婚前に婚姻費用分担請求調停や審判で解決しておいたほうが良いでしょう。