【離婚】子の親権者の指定の判断基準
協議や調停において当事者間でどちらが親権者となるか合意ができなかった場合には,審判や訴訟で裁判所が親権者を指定します。
子の親権者の指定については,子の利益や福祉のために,父母のどちらが親権者としてふさわしいか判断されます。
親権者の指定は子の利益や福祉の観点から判断されますので,離婚の有責性は余り考慮されません。
判断にあたっては,子の利益や福祉の観点から,父母側の事情(監護能力,資産・収入等の経済力,居住環境,教育環境,子に対する愛情,従来の監護状況,親族の援助があるかどうか等)や子の側の事情(年齢,性別,心身の発育状況,兄弟姉妹との関係,従来の環境への適応状況,環境の変化への適応性,子の意思,父母・親族との結びつき等)を総合的に考慮されます。
具体的には,以下のような基準があるとされています。
1 母性優先の原則
子供が乳幼児のうちは,母親の監護養育に委ねることが子の福祉に合致するとの考えです。
ただし,母親が親権者として不適格な場合や父親が養育監護を継続している場合には,母親だからといって親権者になることができるとは限りません。
2 継続性の原則
養育監護している者の変更は,子を心理的に不安定にさせることになるので,現実に子を養育監護している者が優先されるという考えです。
なお,現実に子を養育監護する者を優先すると,親の間で子の奪い合いが誘発されるという問題がありますが,子を違法に奪取した場合には,親権者としての適格性に問題があると判断されることもあります。
3 子の意思の尊重
親権者の指定は子の利益の観点から判断されるため,子の意思は尊重されます。
親権者の指定の裁判をするにあたっては,15歳以上の子の意見聴取をしなければならないとされておりますが(人事訴訟法32条4項),15歳未満であっても,意思を表明する能力があれば,子の意思表明は考慮されます。
4 兄弟姉妹の不分離
幼児期の子に兄弟姉妹がいる場合には,一緒に養育すべきであり,分離すべきではないという考えです。
離婚により,兄弟姉妹が離れ離れになることは,子にとって更なる心理的な苦痛となるからです。
5 面会交流を許容しているかどうか
子が別居している親の存在を知り,良好な関係を保つことは,子の人格形成のために重要です。
そのため,子に他方の親のことを肯定的に伝えることができ,他方の親と子の面会交流を認めることができるかどうかも,親権者としての適格があるかどうかの判断の基準となります。