【相続・遺言】負担付遺贈
一 負担付遺贈とは
遺贈は,遺言によって,遺産の全部または一部を,他者に無償で与えることですが,条件を付けること(条件付遺贈)や期限を付けること(期限付遺贈)もできますし,受遺者に一定の義務を負担させること(負担付遺贈)もできます(なお,これらが付されていない遺贈のことを単純遺贈といいます。)。
負担付遺贈は,包括遺贈,特定遺贈いずれの場合でもできます。
また,負担の内容は遺贈の目的物と関係がなくてもかまいませんし,負担の受益者に制限はなく,相続人以外の第三者でも一般公衆でも受益者になれます。
二 条件付遺贈と負担付遺贈
「○○を負担することを条件として,○○を遺贈する」という表現の場合,条件付遺贈なのか,負担付遺贈なのか問題となります。
条件付遺贈の場合,条件成就時に遺言の効力が生じるか(停止条件),効力がなくなる(解除条件)だけであり,受遺者が義務を負うわけではありません。
これに対し,負担付遺贈の場合,受遺者は一定の義務を負いますが,義務を履行するか否かに関わらず,遺言の効力が生じます。
そのため,受贈者に義務を負わせる趣旨である場合には,負担付遺贈となります。
三 受遺者の義務
負担付遺贈を受けた人は,遺贈の目的物の価額を超えない限度で,負担した義務を履行する責任を負います(民法1002条1項)。
また,負担付遺贈の目的の価額が相続の限定承認または遺留分減殺請求によって減少したときは,遺言者が遺言で別段の意思表示をした場合を除き,受遺者は,その減少の割合に応じて,負担した義務を免れます(民法1003条)。
四 受遺者が義務を履行しない場合
受遺者が負担した義務を履行しないときは,相続人は,相当の期間を定めて履行の催告をすることができます。期間内に履行がないときは,負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができます(民法1027条)。
五 受遺者が遺贈の放棄をした場合
受遺者が遺贈の放棄をしたときは,遺言者が遺言で別段の意思表示をしたときを除き,負担の利益を受ける人は,自ら受遺者となることができます(民法1002条2項)。