【労働問題】労働審判手続

2015-04-20

労働審判手続は、原則として3回以内の期日で終了するため紛争の迅速な解決が図れます。

その一方で、労働審判手続では、期日が限られていることから、事前の準備が非常に重要となります。当事者双方とも、第1回期日が始まるまでに、事案を把握し、主張や証拠提出の準備をほぼ終えていなければ対応できませんので、労働審判手続においては専門知識に基づく迅速な対応が不可欠です。

以下、労働審判手続について簡単に説明します。

 

一 労働審判手続とは

労働審判手続とは、個別労働関係民事紛争に関し、裁判所において、労働審判委員会が、当事者の申立てにより、事件を審理し、調停の成立による解決の見込みがある場合にはこれを試み、その解決にいたらない場合には労働審判を行う手続であり、紛争の実情に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的としています(労働審判法1条)。

二 労働審判の対象となる事件(個別労働関係民事紛争)

労働審判の対象は、「労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争」(個別労働関係民事紛争)です(労働審判法1条)。

解雇事件,残業代請求事件,退職金請求事件等、労働者と使用者との間の労働関係に関する民事紛争が労働審判手続の対象となります。

これに対し、集団的労使紛争、労働者間の紛争、行政事件(労災認定に対する不服申立て等)は、労働審判手続の対象とはなりません。

三 労働審判委員会

労働審判委員会は、労働審判官(地方裁判所の裁判官)1人と労働審判員(労働関係に関する専門的な知識経験を有する者 )2人で組織されます(労働審判法7条)。

四 労働審判の手続

労働審判手続は、特別の事情がある場合を除き、3回以内の期日において終了します(労働審判法15条2項)。

そのため、各当事者は、事前準備を十分に行うとともに、本人や関係者が期日に出席することができるようにスケジュールの調整を行うことが必要となります。

1 申立て

(1)申立書の提出

労働審判の申立ては、管轄裁判所に申立書を提出して行います(労働審判法5条2項)。

申立書には,申立ての趣旨及び理由(労働審判法5条3項2号)のほか、予想される争点、争点に関連する重要な事実、予想される争点ごとの証拠、当事者間の交渉その他の申立てに至る経緯の概要等を記載します(労働審判規則9条1項)。

(2)管轄裁判所

①相手方の住所、居所、営業所、事務所の所在地を管轄する地方裁判所

②労働者が現に就業する(または最後に就業した)事業主の事業所の所在地を管轄する地方裁判所

③当事者が合意で定める地方裁判所

が管轄裁判所となります(労働審判法2条1項)。

なお、労働審判手続は、全ての地方裁判所で行われるわけではなく、一部の支部を除き、本庁でのみ行われています。

2 申立後から第1回期日まで

(1)答弁書の提出

相手方は、提出期限までに、答弁書を作成して提出しなければなりません。

答弁書では具体的な反論をしなければならず、民事訴訟のように「追って主張する。」ではいけません。

(2)補充書面の提出

答弁書に対する反論は労働審判期日に口頭で行いますが,補充書面を提出することもできますので(労働審判規則17条1項)、申立人は、第1回期日までに答弁書の内容を確認し、答弁書に対する反論があれば、補充書面を準備します。

3 第1回期日

労働審判委員会は、第1回期日に、争点及び証拠の整理を行い、可能な証拠調べを行います(労働審判規則21条1項)。第1回期日から本人や関係者の審尋も行われますので、本人や関係者が期日に出席できるよう予め準備しておく必要があります。

また、第1回期日から調停が試みられることや(労働審判規則22条)、審理が終結することもあります(労働審判法19条)。

4 第2回期日

やむを得ない事由がある場合を除き、主張や証拠書類の提出は第2回期日で終了します(労働審判規則27条)。

主張や証拠書類の提出が終了した後、労働審判委員会から調停案が示され、調停が行われることが通常です。

5 第3回期日

通常、第2回期日までに主張や証拠書類の提出は終了していますので、第3回期日では調停が行われます。

調停により解決できなかった場合には、審理が終結し、労働審判がなされます。

五 異議の申立て・労働審判の確定

労働審判に不服がある場合、当事者は、審判書の送達を受けた日(期日で告知を受けた場合には告知を受けた日)から2週間以内に裁判所に異議を申し立てることができます(労働審判法21条1項)。

適法な異議の申立てがあったときは、労働審判はその効力を失い(労働審判法21条2項)、申立て時に、訴えの提起があったものとみなされます(労働審判法22条1項)。

また、適法な異議の申立てがなかったときは、労働審判は裁判上の和解と同一の効力を有します(労働審判法21条4項)。

 

 

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