【交通事故】自賠責保険と任意保険との関係

2017-12-06

自動車保険には自賠責保険と任意保険がありますが,どのような関係にあるでしょうか。

 

一 自賠責保険と任意保険

自賠責保険は,すべての自動車について加入が義務づけられている強制保険であり,自動車の運行によって他人の生命・身体を害した場合に加害者が損害賠償責任を負うことによる損害を填補する保険です。
これに対し,任意保険は,任意に加入する保険であり,自賠責保険では填補されない損害を補償する保険です。任意保険では人損事故に限らず,対物事故も対象となりますし(対人賠償責任保険,対物賠償責任保険),自損事故保険,無保険車傷害保険,搭乗者傷害保険,人身傷害補償保険,弁護士費用保険,車両保険等,様々な特約があります。

人損事故の損害賠償責任保険としては,自賠責保険と任意保険(対人賠償責任保険)がありますが,対人賠償責任保険では自賠責保険で支払われる金額を超える金額のみ支払われます。そのため,対人賠償責任保険は自賠責保険の上積み保険または上乗せ保険であるといわれています。
ただし,自賠責保険では,運行によって他人の生命又は身体を害した事故が対象となるのに対し,対人賠償責任保険では,自動車の所有,使用または管理に起因して他人の生命または身体を害した事故が対象となり,「所有,使用または管理」は「運行」よりも広いので,自賠責保険では支払われない場合であっても,対人賠償責任保険で支払われることがあります。

 

二 一括払制度

1 一括払制度とは

一括払制度とは,対人賠償責任保険の保険会社が,被害者に対し自賠責保険から支払われる金額を含めて損害賠償金額の全額を一括して支払ってから,自賠責保険支払分を自賠責保険会社に請求する制度です。
自賠責保険と任意保険から個別に支払を受けなければならないとすると手続が煩雑になりますので,一括払制度により,任意保険会社が自賠責保険分も含めて支払をすることができます。
なお,自賠責保険と任意保険で保険会社が異なる場合でも一括払制度を利用することはできます。

 

2 被害者にとってのメリット

一括払制度により,加害者の任意保険会社が医療機関に被害者の治療費を直接支払ってくれます。
また,示談代行制度により任意保険会社は加害者に代わって被害者と示談交渉をすることができますので,被害者は任意保険会社と示談交渉することで,任意保険会社から自賠責保険分も含めて支払を受けることができます。

 

3 一括払制度を利用しない場合

被害者は,一括払制度を利用しないこともできます。
その場合には,被害者は,自賠責保険に被害者請求をしてから,不足分について加害者の任意保険会社から支払を受けることができます。

 

三 事前認定

任意保険会社は,一括払いをする場合,自賠責保険から支払われるのか知るため,加害者の損害賠償責任の有無,重過失減額の有無,後遺障害の有無・程度(等級)について,損害保険料算出機構の下部組織である自賠責調査事務所に事前認定をしてもらうことができます。
事前認定の結果を基に,任意保険会社は被害者と示談交渉を行いますし,被害者も事前認定された後遺障害の等級を基に損害額を計算し,損害賠償請求をすることができます。
また,被害者は,事前認定の結果に不服がある場合には,任意保険会社宛てに異議申立てをすることができます。

 

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