【交通事故】症状固定日

2020-08-04

交通事故の被害者の方は完全に治るまで治療を受けたいとお考えでしょうが,加害者に損害賠償請求できる治療費は原則として症状固定日までの治療費です。

症状固定日後に障害が残存する場合には後遺障害の問題となります。

 

一 症状固定とは

症状固定とは,治療を継続しても,それ以上症状の改善が期待できない状態のことです。症状固定後に障害が残存する場合は後遺障害の問題となります。

 

二 症状固定日の認定

治療により症状が改善できるかどうかの判断は医学的な判断が基礎となりますので,後遺障害診断書の症状固定日として記載された日が,症状固定日と認定されるのが通常です。

 

ただし,損害賠償は法的な問題であり,症状固定日も法的に判断されますので,事故態様や治療の状況等から,後遺障害診断書の記載と異なる日が症状固定日と認定されることもあります。

 

三 症状固定日が問題となる場合

1 治療関係費

治療費が損害と認められるのは,原則として症状固定日までの治療費です。

症状固定後は治療による症状の改善が見込めないので,症状固定日後の治療費は損害賠償の対象とならないのが原則です。

 

ただし,症状固定日後であっても,症状の内容や程度によっては,症状悪化を防止するためのリハビリ費用や手術の費用等が,将来治療費として損害と認められることがあります。

 

入院雑費や通院交通費等,入通院に伴って発生する費用についても,症状固定日までに発生したものが損害となるのが原則ですが,将来治療費が損害と認められる場合にはそれに伴って生じる交通費等も損害と認められることがあります。

 

2 休業損害

休業損害は症状固定日までの休業による収入の減少が損害賠償の対象となります。

症状固定日後の休業による収入の減少については後遺障害逸失利益の問題となります。

 

3 入通院慰謝料

入通院慰謝料は入通院期間をもとに算定しますが,症状固定日までの入通院期間が対象となります。

症状固定日後は後遺障害逸失利益の問題となります。

 

4 後遺障害逸失利益

労働能力喪失期間は,原則として症状固定日から67歳までの期間です。

また,中間利息の控除についても症状固定日が基準時となると解されています。

 

5 消滅時効の起算点

後遺障害が残った場合の損害賠償請求権の消滅時効の起算点は,症状固定日であると解されています。

 

四 治療の打切りの問題

加害者側が被害者の治療費を支払っている場合,ある程度の期間が経過すると,加害者側から治療費の負担を終了する旨告げられることがあります。

被害者が,痛みや症状が続いており,治療の必要があると訴えたとしても,加害者側は,症状の固定を主張して,応じないということがあります。

 

被害者の中には症状固定後に痛みや症状が残っていたとしても,必ずしも後遺障害の等級認定がなされるとは限らないことから,もっと治療を続けたいと考えられる方もおられるかもしれませんが,その一方で,加害者に治療費を負担させることができず,被害者が治療費を自己負担しなければならなくなるおそれもありますので,治療を続けるかどうかは難しい問題となります。特に自由診療で治療を受けている場合には,治療費が高額となるので,より難しい問題となります。

 

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