【交通事故】後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)

2018-01-07

交通事故の被害者に後遺障害が残存する場合の損害として,①後遺障害逸失利益と②後遺障害慰謝料があります。ここでは後遺障害慰謝料について説明します。

 

一 後遺障害慰謝料とは

後遺障害とは,これ以上治療しても症状の改善が望めない状態になったとき(症状固定時)に残存する障害のことであり,後遺障害慰謝料とは後遺障害による精神的損害に対する損害賠償のことです。
自賠責保険には後遺障害等級認定制度があり,後遺障害慰謝料の額は,基本的に自賠責保険で認定された後遺障害等級認定を基に決まります。

 

二 近親者の慰謝料

民法711条は「他人の生命を侵害した者は,被害者の父母,配偶者及び子に対しては,その財産権が侵害されなかった場合にはおいても,損害の賠償をしなければならない。」と規定していますが,被害者が死亡していない場合であっても,死亡した場合と比肩すべき精神的苦痛を被ったと認められるときは,民法709条,710条により近親者に固有の慰謝料請求権が認められると解されています。
そのため,被害者が後遺障害を負った場合にも,1級,2級等介護を要するような重度の後遺障害の場合には,近親者に固有の慰謝料請求権が認められることがあります。

 

三 自賠責基準

自賠責保険の支払基準では,後遺障害に対する慰謝料等の額は,認定された等級に応じて以下のように定められています。

 

1 自動車損害賠償法施行令別表第1(介護を要する後遺障害)の場合

1級1600万円,2級1163万円です。 被扶養者がいるときは,1級1800万円,2級1333万円です。

また,初期費用等として,1級の場合は500万円,2級の場合は250万円が加算されます。

 

2 自動車損害賠償法施行令別表第2(別表第1以外の後遺障害)の場合

1級1100万円,2級958万円,3級829万円,4級712万円,5級599万円,6級498万円,7級409万円,8級324万円,9級245万円,10級187万円,11級135万円,12級93万円,13級57万円,14級32万円です。
被扶養者がいるときは,1級1300万円,2級1128万円,3級973万円です。

 

四 裁判基準

裁判基準でも,自賠責保険で認定された後遺障害等級を基に後遺障害慰謝料額が決まるのが通常です。
ただし,裁判所は,自賠責保険の等級認定に拘束されず,独自に等級認定することができますので,訴訟では自賠責保険で認定された等級とは異なる等級が認定されることがあります。

赤い本の基準では,被害者本人の後遺症慰謝料は,1級2800万円,2級2370万円,3級,1990万円,4級1670万円,5級1400万円,6級1180万円,7級1000万円,8級830万円,9級690万円,10級550万円,11級420万円,12級290万円,13級180万円,14級110万円が基準とされています。また,1級や2級等の重度の後遺障害の場合には,別途,近親者の慰謝料請求が認められるとしていますが,慰謝料額については基準は定められていません。

慰謝料額は被扶養者の数が多い場合や加害者が悪質な場合には増額されることがありますし,逸失利益の算定が困難または不可能な場合や将来の手術費の算定が困難または不可能な場合には慰謝料で考慮されることがあります。
また,14級に至らない後遺症がある場合でも慰謝料が認められることがありますし,後遺障害の等級が認定されているけれども,より上級の等級に至らない場合には,症状によっては認定等級の慰謝料額に相当額が加算されることがあります。

 

ページの上部へ戻る

Copyright(c) 2016 ながせ法律事務所 All Rights Reserved.