【交通事故】休業損害(事業所得者)

2016-03-30

1 事業所得者の休業損害

休業損害とは,交通事故による傷害の治療のため,休業し,収入を得ることができなかったことによる損害です。

事業所得者の場合,①前年の所得と休業した年の所得を比較し,その減少分から休業損害額を算定する方法や,②確定申告書等の資料に基づいて,1日あたりの基礎収入額を計算し,その金額に休業日数を乗じて休業損害額を計算する方法があります。

 

2 休業損害算定の資料

確定申告書とその添付書類(収支内訳書,青色申告決算書),課税証明書等の資料を基に計算します。

通常は,事故の前年の確定申告を基に計算しますが,変動がある場合には複数年分の資料に基づいて計算することもあります。

過少申告の場合には,実際の収入や所得に基づいて休業損害を算定することが考えられますが,申告以上の収入があったことを立証できるかどうか問題となります。

また,働いていたが確定申告をしていない場合には,収入をどのように立証するか問題となります。

 

3 固定費等の扱い

賃料,従業員の給料,減価償却費等の固定費については,休業中も支出を免れることができなかったので損害にあたると考えられます。

そこで,収入(売上)から固定費を差し引かない,または,申告所得に固定費を加えて休業損害を算定します。

例えば,1年間の収入(売上)が1000万円で経費が400万円(うち固定費が130万円)で所得が600万円の場合,1日当たりの基礎収入額は,2万円となり,これに休業日数を乗じて,休業損害額を計算します。

 

計算式:休業損害額=(所得600万円+固定費130万円)÷365日×休業日数

=2万円/日×休業日数

 

また,青色申告の場合には,収入(売上)から青色申告特別控除額を差し引かない,または,所得に青色申告特別控除額を加えて休業損害を算定します。

 

4 家族で事業をしている場合

事業所得の中に,家族の寄与がある場合には,被害者本人の寄与割合を考慮する必要があります。

また,家族に給与が支払われているが,家族は実際に働いていない場合には,被害者本人の申告所得額に家族に支払った給与額を加えて,休業損害額を算定することも考えられます。

 

五 赤字申告の場合

実際は,黒字であるのに赤字申告をしていた場合には,実際の収入や所得に基づいて休業損害を算定することが考えられますが,実際の収入を立証することができるかどうか問題となります。

また,申告内容が正しい場合であっても,固定費を考慮すれば,休業損害が認められることがありますし,休業により赤字が拡大した場合には,損失の拡大分について損害と認められることがあります。

 

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