【交通事故】休業損害
一 休業損害とは
休業損害とは,交通事故による傷害の治療のため,休業し,収入を得ることができなかったことによる損害です。
治療が終了した日(症状固定日)より後に収入が得ることができなかった分については,後遺症逸失利益の問題となりますので,休業損害は,交通事故が発生してから治療が終了した日(症状固定日)までに休業したことによる損害です。
原則として,1日あたりの収入(基礎収入)に休業日数を乗じて計算します。
(計算式:給与所得者の休業損害=1日あたりの基礎収入×休業日数)
休業損害は,職業によって計算の仕方が異なりますので,以下,職業ごとに説明します。
二 給与所得者(会社員等)
給与所得者の休業損害については,休業損害証明書や源泉徴収票で立証します。
有給休暇を使用した場合も休業損害と認められます。
給与所得者の休業損害については別に説明します。
三 事業所得者(個人事業者)
原則として,確定申告書により基礎収入を計算します。
事業所得者の休業損害については別に説明します。
四 会社役員
会社役員の役員報酬については,労務提供の対価としての部分と利益配当としての部分があり,原則として,労務対価部分については休業損害と認められますが,利益配当部分については休業損害とは認められません。
労務対価部分と利益配当部分をどのように区分するのか問題となります。
五 不労所得者
不動産を賃貸している者等不労所得者は,休業しても収入が得られるので,原則として,休業損害は認められません。
ただし,被害者が事故前より不動産の管理を行っていたが,受傷により不動産の管理ができなり,他者に管理料を支払って管理してもらった場合等,労務の提供があった場合にはその範囲で損害と認められることはあるでしょう。
六 家事従事者
家事従事者には収入はありませんが,家事労働についても経済的な価値がありますので,受傷により家事労働できなかった場合には休業損害が認められます。
通常,賃金センサス第1巻第1表の産業計,企業規模計,学歴計,女性労働者の全年齢平均の賃金額(高齢者の場合には年齢別の平均賃金)を基礎収入とし,受傷により家事労働に従事できなかった期間について,休業損害が認められます。
パートタイマー等の兼業主婦については,現実の収入額と女性労働者の平均賃金額の高い方の金額を基礎収入として計算します。
なお,傷害の内容や程度によっては,受傷から治療終了までの間,全く家事労働ができないわけではないので,休業日数をどのように算定するか問題となり,例えば,入院期間中は100%,退院後,○か月間は○○%,その後は○○%というように,段階的に家事労働ができない割合を逓減させて,休業損害を計算することがあります。
七 失業者
収入の減少がないので,原則として休業損害は認められません。
ただし,労働能力及び労働意欲があり,就労の蓋然性がある場合には休業損害が認められることはありますが,基礎収入は平均賃金を下回るものと考えられます。
八 学生
原則として休業損害は認められませんが,収入があれば認められます。
就職が遅れたことによる損害は認められます。