【交通事故】交通事故による損害賠償請求権の消滅時効

2015-10-28

交通事故の傷害の程度が重い場合や,後遺障害の等級認定が問題となる場合には交通事故が発生してから何年間も損害賠償の問題が解決しないことがあります。

その場合には,損害賠償請求権が消滅時効にかからないように注意しましょう。

※令和2年4月1日に施行された改正民法により,消滅時効制度の内容が変わりました。このページは改正前の制度について説明しておりますのでご注意ください。

一 時効期間

交通事故による損害賠償請求権は,不法行為に基づく損害賠償請求権です。

不法行為による損害賠償請求ができる期間について,民法724条は「不法行為による損害賠償の請求権は,被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知ったときから3年間行使しないときは時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも同様とする。」と規定しております。

そのため,交通事故による損害賠償請求権についても,被害者または法定代理人が,「損害及び加害者を知ったときから3年間」で消滅時効にかかりますし,「不法行為の時から20年」の除斥期間を経過することにより権利行使ができなくなります。

なお,交通事故による損害賠償請求については,民法上の不法行為責任を追及するほか,自動車損害賠償保障法の運行供用者責任を追及することがありますが,運行供用者責任を追及することができる期間についても,民法724条が適用されます(自動車損害賠償保障法4条)。

 

二 消滅時効の起算点

1後遺障害がない場合

消滅時効の起算点(時効の進行が開始する時点)は「損害及び加害者を知ったときから」です。

「損害…を知ったとき」とは,損害の発生を現実に認識したときであると解されております。

また,「加害者を知ったとき」とは,加害者に対する損害賠償請求が事実上可能な状況のもとに,その可能な程度に知ったときであると解されております。

通常は事故があった日に損害が発生や加害者を知ることになりますので,交通事故があった日が起算点となります。

もっとも,損害や加害者を知ったのが事故日より後の場合には,知ったときが起算点となりますので,時効の起算点がいつか争いになることもあります。

 

2 後遺障害がある場合

後遺障害の場合には,通常,症状固定日には後遺障害に関する損害が発生したことを知ることができますので,症状固定日が起算点になると解されております。

もっとも,症状固定日後に予期せぬ後遺症が発症することもあり,その場合には,後遺症があらわれたときに損害が発生したことを知りますので,その後遺症があわられたときが起算点になると解されます。

 

三 時効の中断

損害賠償請求権が消滅時効にかかるのを防ぐには,時効を中断させる必要があります。

時効は,①請求,②差押え,仮差押え又は仮処分,③承認により中断します(民法147条)。

時効が中断した場合には,中断事由が終了したときから,新たに進行を始めます(民法157条1項)。

 

1 請求

被害者が,加害者に対し,裁判上の請求その他の裁判所の関与する手続をとること(民法149条から152条)や,裁判外で催告すること(民法153条)により,時効は中断します。裁判外で催告した場合には,6か月以内に,裁判上の請求その他の裁判所の関与する手続をとらなければ,時効中断の効力は生じません(民法153条)。

なお,自賠責保険の後遺障害等級認定に異議申立てをしても,請求にはあたりませんので,時効は中断しません。

2 承認

加害者が債務の存在を認めたり,一部弁済をしたりすることは,債務の承認にあたり,時効は中断します。

また,任意保険会社が被害者に対し支払をすることも,任意保険会社は加害者を代理して行っておりますので,債務の承認にあたると解されます。

これに対し,被害者が自賠責保険に被害者請求して保険金の支払を得たり,自賠責保険会社から時効中断承認書をもらったりしても,加害者が債務を承認したことにはなりませんので,時効は中断しません。

 

四 まとめ

以上のとおり,交通事故の損害賠償請求権は短期消滅時効にかかるため,損害賠償請求は時効にかからないよう早めにおこないましょう。

また,解決まで長期間を要する場合には,時効が中断しているかどうか注意しましょう。

 

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