【親子問題】普通養子縁組の離縁

2015-06-17

一 離縁とは

離縁とは,養子縁組を解消することです。

普通養子縁組の離縁と特別養子縁組の離縁とでは,離縁ができる場合や手続が異なります。

特別養子縁組の離縁については,特別養子縁組のページで説明しますので,以下は,普通養子縁組の離縁について説明します。

 

二 離縁の手続

1 協議離縁

(1)協議による離縁

養子縁組の当事者は,協議で離縁をすることができます(民法811条1項)。

(2)養子が15歳未満のとき

養子が15歳未満のときは,離縁は,養親と養子の離縁後に法定代理人となるべき者との協議で行います(民法811条2項)。

養子の父母が離婚しているときは,協議または家庭裁判所の審判で,離縁後に親権者となるべき者を定めます(民法811条3項,4項)。

また,法定代理人となるべき者がいないときは,家庭裁判所は離縁後に未成年後見にとなるべき者を選任します(民法811条5項)。

(3)夫婦である養親と未成年者との離縁

養親が夫婦である場合,未成年者と離縁するには,夫婦が共に離縁しなければなりません(民法811条の2本文)。

ただし,夫婦の一方が意思表示をすることができない場合を除きます(民法811条2の但書)。

(4)離縁の届出

離縁は,戸籍法の定めるところにより届け出ることによって,効力を生じます(民法812条で準用する民法739条1項)。

また,届出は,当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面またはこれらの者からの口頭でしなければなりません(民法812条で準用する民法739条2項)。

離縁の届出は,法令の規定に違反しないことが認められなければ受理されませんが(民法813条1項),違反して受理された場合であっても,離縁の効力は妨げられません(民法813条2項)。

 

2 調停離縁・審判離縁

離縁事件は人事訴訟の対象ですが(人事訴訟法2条3号),調停前置主義の適用があるため(家事事件手続法257条1項),訴訟提起をする前に,離縁を求める調停を申し立てます。

離縁をする旨の調停が成立した場合,調停に代わる審判が確定した場合により,離縁の効力が生じます。

調停成立または調停に代わる審判確定後,離縁の届出をします(戸籍法73条1項,63条)。

 

3 裁判離縁

(1)離縁原因

離縁の訴えをするにあたっては,以下の離縁事由がなければなりません(民法814条1項)。

①他の一方から悪意で遺棄されたとき(民法814条1項1号)

②他の一方の生死が3年以上明らかでないとき(民法814条1項2号)

③その他縁組みを継続し難い重大な事由があるとき(民法814条1項3号)

なお,①②の事由がある場合であっても,裁判所は,一切の事情を考慮して養子縁組の継続を相当と認めるときは,請求を棄却することができます(民法814条2項,民法770条2項)。

(2)有責当事者からの離縁請求

また,有責当事者からの離縁の請求は,原則として認められないと解されております。

(3)養親が15歳未満である場合の離縁の訴えの当事者

養子が15歳に達しない間は,養親と離縁の協議をすることができる者が,離縁の訴えの当事者となります(民法815条)。

(4)夫婦共同縁組の場合

養親が夫婦である場合,未成年者と離縁するには,夫婦が共に離縁しなければならないため(民法811条の2本文),必要的共同訴訟となります。

(5)訴えの終了

離縁の訴えは,判決によって終了するほか,訴訟上の和解,請求の放棄・認諾もできます(人事訴訟法44条,37条1項)。

 

三 死後離縁

養子縁組の当事者の一方が死亡した後に,生存当事者が離縁をするには,家庭裁判所の許可を得なければなりません(民法811条6項)。

離縁を許可する審判が確定した後,離縁の届出をすることにより(戸籍法72条),離縁の効力が生じます。

四 離縁による慰謝料請求

相手方が有責である場合には,離縁の請求のほかに,慰謝料請求をすることが考えられます。

 

五 離縁の効果

1 離縁による親族関係の終了

養子とその配偶者,養子の直系卑属とその配偶者と養親及びその血族との親族関係は離縁により終了します(民法729条)。

ただし,離縁後も婚姻障害は続きます(民法736条)。

2 離縁による復氏

養子は,離縁により縁組前の氏に復します(民法816条1項本文)。

ただし,配偶者とともに養子をした養親の一方とのみ離縁した場合は除きます(民法816条1項但書)。

縁組の日から7年を経過した後に縁組前の氏に復した者は,離縁の日から3か月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって,離縁の際に称していた氏を称することができます(民法816条2項)。

3 祭祀供用物の承継

養子縁組によって氏を改めた者が祭祀供用物を承継した後,離縁をした場合には,当事者その他の関係人の協議で,その権利を承継すべき者を定めなければなりません(民法817条で準用する民法769条1項)。

協議が調わないとき,または協議ができないときは,家庭裁判所が定めます(民法817条で準用する民法769条2項)。

 

 

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