適正な慰謝料の基準について

 

1 交通事故の損害賠償の算定基準については以下の基準があるといわれております

長 所 短 所
自賠責基準
(自賠責保険の基準)
被害者請求ができる
(被害者請求後、損害賠償額の不足額を加害者に請求できます。)
被害者の過失が大きくても、減額される割合が低い
支払金額に上限がある
物損は対象外
他の基準より金額が低め
任意保険基準
(保険会社の基準)
早期に解決できる 通常、裁判基準より金額が低め
裁判基準
(訴訟の場合の基準)
他の基準より金額が高くなる場合が多い 専門知識が必要
被害者の過失が大きい場合、自賠責保険を請求した場合より金額が低くなることがある

自賠責基準については「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」に定められております。

任意保険基準は、保険会社ごとの基準ですので、一律の基準ではありません。

また、「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」(いわゆる「赤い本」)の基準が、裁判基準であるといわれています。

 

2 慰謝料の種類について

交通事故の損害賠償において認められる慰謝料(精神的損害についての賠償金)には、
傷害を負ったことによる精神的損害についての傷害慰謝料(入通院慰謝料)
後遺症を負ったことによる精神的損害についての後遺症慰謝料
死亡したことによる精神的損害についての死亡慰謝料

があります。

重度の後遺症の場合や死亡の場合には、近親者の慰謝料も認められます。

なお、物損についての慰謝料は、原則として認められていません。

 

3 各基準における慰謝料

裁判基準は、裁判例の積み重ねを通じて形成されたものであり、裁判基準による賠償が適正な賠償であるといえます。

他方、自賠責保険は、被害者救済のための制度ですが、支払金額には上限がありますし(傷害の場合120万円、後遺障害の場合等級に応じて4000万円から75万円、死亡の場合3000万円)、損害額の算定基準についても裁判基準より低めとなっております。
例えば、入通院慰謝料について、自賠責基準では、1日あたり4200円、対象となる日数については通常、入院日数を含む実治療日数の2倍に相当する日数(ただし、治療期間の範囲内)で計算するため、治療期間180日(6か月)のうち実際に通院したのが60日の場合、入通院慰謝料は、50万4000円(計算式:4200円×60×2=50万4000円)となります。

これに対し、裁判基準では、治療期間(通院のみで入院がない場合)が6か月の場合、通常、入通院慰謝料は116万円(むち打ち症で他覚症状がない場合は89万円)となります(「赤い本」の入通院慰謝料別表Ⅰ、Ⅱ)。

また、死亡慰謝料について、自賠責基準では、①本人の慰謝料350万円、②遺族の慰謝料として1人の場合550万円、2人の場合650万円、3人以上の場合750万円、③被害者に被扶養者がいる場合には200万円を加算することとなっておりますが、裁判基準では、一家の支柱の場合、2800万円、母親・配偶者の場合2400万円、その他の場合2000万円~2200万円が目安とされております。

また、任意保険基準については、一律の基準はありませんが、通常、裁判基準より低めです。

したがって、交通事故被害者の方が、適正な慰謝料の支払を得るためには、裁判基準での請求を検討すべきであるといえるでしょう。

ただし、裁判基準では過失相殺を厳密に行うため、被害者の過失が大きい場合には自賠責基準を下回ることがありますので、慎重な検討が必要となります。

 

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