【離婚】有責配偶者の離婚請求
離婚のご相談を受けていると,相談者の方から,相手方が不倫・浮気をしたのですから,相手方から離婚請求をすることはできないですよねと聞かれることが多いです。
不倫・浮気等をして破綻原因を作った一方配偶者を有責配偶者といいますが,有責配偶者からの離婚請求が認められるかは大きな問題です。
1 有責配偶者からの離婚請求は認められるのか
かつては,裁判所は,道徳を守ることが法の職分であるとして,有責配偶者からの離婚請求を認めていなかった時代もありました(昭和27年の最高裁判所判決,いわゆる「踏んだり蹴ったり判決」では,そのような離婚請求が認められたら,「踏んだり蹴ったり」であると,述べています)。
しかし,昭和62年に,最高裁判所は,一定の要件があれば有責配偶者からの離婚請求でも認めるという判断をしました。
最高裁判所は,婚姻が破綻している場合には戸籍上の婚姻を存続させるのは不自然であるとしながら,離婚請求は信義誠実の原則に照らして容認されるものでなければならないとして,一定の要件のもとで,有責配偶者からの離婚請求を認めました。
2 有責配偶者からの離婚請求が認められる要件
昭和62年の判決で最高裁判所は,以下の要件を挙げています。
(1)婚姻関係が破綻していること
(2)有責配偶者からの離婚請求が信義則上容認されること
離婚を認めても信義則に反しないかは,以下の①から③を総合的に考慮して判断されます。
①別居期間が両当事者の年齢及び同居期間を対比して相当の長期間に及ぶこと
②未成熟の子が存在しないこと
③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的にきわめて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと
3 まとめ
以上のように,有責配偶者からの離婚請求は,原則として認められませんが,一定の要件のもとで認められます。
そのため,有責配偶者だからといって離婚請求を諦めるべきだとはいえませんし,離婚請求された側にとっても,請求者が有責配偶者だからといって油断してはいけません。
また,実際に当事者間で争いとなる場合には,そもそも離婚請求者が有責配偶者であるかどうか争いとなったり,相手方に婚姻関係が破綻した原因があると主張して争いになったりして,そもそも有責配偶者からの離婚請求といえるかどうか分かりませんので,注意が必要です。