【離婚】内縁(事実婚)と内縁の解消
一 内縁(事実婚)とは
内縁(事実婚)とは,事実上婚姻と同様の関係にあるが,婚姻届が出されていない場合をいいます。
これに対し,婚姻届が出されている場合を法律婚といいます。
内縁については,かつては婚約(婚姻の予約)と捉えられていたこともありました。
内縁も婚姻の予約も,婚姻届が出されておらず,法律上の婚姻が成立していない点では共通しておりますが,婚姻の予約は,将来婚姻しようという意思がある場合をいうのに対し,内縁の場合は,婚姻としての実体がある場合をいいますので,現在では,内縁は,婚姻に準じるものとして扱われております。
二 内縁の成立要件
1 内縁の成立要件
内縁が成立するための要件としては,以下の要件をみたす必要があります。
①当事者間に社会通念上の婚姻の意思があること
②事実上の夫婦共同生活が存在すること
2 婚姻障害事由がある場合
婚姻障害事由がある場合には,法律上婚姻が認められませんが,婚姻障害事由のうち,婚姻適齢(民法731条),再婚禁止期間(民法733条),未成年者の婚姻についての父母の同意(民法737条)の各規定に違反する場合であっても,内縁の成立が認められると解されています。
これに対し,近親婚の制限(民法734条から736条)に違反する場合(近親婚的内縁)や,重婚の禁止の規定(民法732条)に違反する場合(重婚的内縁)には,倫理的な観点から,内縁として保護されるかどうかが問題となります。
三 内縁が成立する場合の法的効果
1 内縁が成立する場合に認められる法的効果
内縁が成立する場合,婚姻に準じるものとして扱われます。
そのようなことから,婚姻に準じて,内縁の夫婦間には,同居・協力・扶助義務,貞操義務,婚姻費用分担義務等が認められると解されます。
また,社会保障の法令や借地借家法36条等,内縁配偶者を保護する規定があります。
2 内縁には認められない効果
内縁が成立したとしても,法律上の夫婦と同様に扱われるわけではありません。
①内縁が成立しても,氏は変更しない,②内縁夫婦の子は嫡出子とならない,③内縁配偶者には相続権がない等,法律婚とは違いがあります。
四 内縁の解消
1 内縁が解消する場合
内縁関係が解消する場合としては,①一方が死亡した場合,②当事者の意思による場合があります。
2 死亡による内縁の解消
内縁夫婦の一方が死亡した場合には,内縁は解消します。
その際,亡くなった者の財産について,他方の内縁配偶者は相続権を有しません。
また,離婚の財産分与の規定(民法768条)を類推適用も,判例上,否定されております。
そのため,他方に財産を遺すためには,遺言を作成しておくべきです。
もっとも,死亡による解消の場合,内縁配偶者が全く保護されないわけではありません。
内縁配偶者に遺族年金の受給権が認められる等,社会保障上,内縁配偶者は保護されています。
また,亡くなった内縁配偶者に相続人が存在しない場合には,特別縁故者による相続財産分与請求権(民法958条の3)や,借家権の承継(借地借家法36条)による保護があります。
さらに,借家権を有する内縁配偶者が亡くなり,相続人が借家権を相続した場合,他方内縁配偶者は,貸し主に対し,相続人の借家権を援用することができますし,相続人からの明渡請求を権利の濫用として拒むことができると解されております。
3 当事者の意思による場合
内縁は,当事者の合意または一方の意思により解消することができます。
その際,以下のような点が問題となります。
(1)財産分与請求
内縁を解消した場合には,離婚の財産分与の規定(民法768条)を類推適用して財産分与請求をすることができます。
(2)慰謝料請求
当事者の一方が,正当な理由がなく,一方的に内縁を解消した場合(内縁の不当破棄)には,他方は,慰謝料請求をすることができます。
また,第三者が内縁関係を破綻させた場合には,その者に対する慰謝料請求もできます。
(3)親権,養育費
内縁夫婦の子の親権者は母であり,子は母の氏を名乗ります(民法790条2項)。
父が親権者となるには,父が子を認知した後,協議または家庭裁判所の審判で,親権者を父にしなければなりませんし(民法819条4,5項),子を父の氏とするには,家庭裁判所で子の氏の変更の許可を受けなければなりません(民法791条1項)。
また,父が子を認知した場合には,子に対する扶養義務を負いますので,父に対し,養育費の請求ができす。
(4)年金分割請求
内縁配偶者であっても,3号被保険者であった期間については,年金分割請求ができます。