【後見】後見制度支援信託

2016-06-15

後見人が本人(被後見人)の財産を横領するという事案が度々,新聞やテレビ等で報道されます。

成年後見において,本人の財産管理が適切に行われることは非常に重要なことであり,そのための制度の一つとして,後見制度支援信託があります。

 

1 後見制度支援信託とは

後見制度支援信託とは,本人の財産のうち,日常的な支払に必要な金銭を預貯金等として後見人が管理し,通常使用しない金銭を信託銀行等に信託する制度です。

後見人は,日常的に必要な金銭の管理を行いますが,本人の収入よりも支出が多い場合には,信託銀行等は,信託財産から必要な金額を定期的に交付することができます。

通常使用しない金銭については,信託銀行等が管理し,信託契約締結後の定期交付金の金額の変更,一時金の交付,信託財産の払戻や信託契約の解約をするには家庭裁判所の指示書が必要となります。

 

2 どのような場合に利用されているのか

成年後見と未成年後見の場合で,親族が後見人となるときに利用することが想定されております。なお,信託契約の締結は専門職後見人が行います。

すべての件で後見制度支援信託が利用されるわけでなく,後見制度支援信託に適している場合に利用されます。

なお,保佐,補助,任意後見の場合には,利用できません。

 

3 どのような財産が信託されるのか

金銭に限られます。

不動産や動産,株式等の金融商品は信託されません。

 

4 手続の流れ

(1)後見開始または未成年後見人選任の申立て

申立ては,家庭裁判所の許可がなければ取り下げることはできませんので(家事事件手続法121条,180条),申立人は後見制度支援信託の利用が嫌だからといって申立てを取り下げることはできません。

 

(2)審理

後見開始の申立て等があった場合には,家庭裁判所は後見制度支援信託の利用を検討すべきかも審理します。

 

(3)審判

家庭裁判所は,後見制度支援信託の利用を検討すべきと判断した場合には,専門職(弁護士,司法書士等)を後見人に選任します。

また,専門職と親族を後見人に選任すること(複数選任)もあります。

 

(4)専門職後見人の検討

①専門職後見人は,後見制度支援信託の利用に適しているか検討します。

②専門職後見人が,後見制度支援信託の利用に適していると判断した場合には,信託する信託銀行等,信託する財産の額,親族後見人が日常的に支出に充てる額等を設定し,家庭裁判所に信託契約を締結する旨の報告書を提出します。

③専門職後見人が,後見制度支援信託の利用に適していないと判断した場合には,家庭裁判所は再検討します。

後見制度支援信託の利用に適していない場合とは,本人に遺言がある場合や親族間で紛争があり,親族が後見人となることに適していない場合,等です。

 

(5)信託契約の締結

家庭裁判所は,報告書の内容を確認し,後見制度支援信託の利用に適していると判断した場合には,専門職後見人に指示書を発行します。

専門職後見人は信託銀行等に指示書を提出し,信託契約を締結します。

 

(6)専門職後見人の辞任

専門職後見人は辞任します。

専門職後見人のみしか選任されていなかった場合には,親族後見人を選任します。

専門職後見人は,管理していた本人の財産を親族後見人に引き渡します。

 

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