【交通事故】遅延損害金
交通事故の損害賠償請求訴訟では,遅延損害金を請求することができます。
一 遅延損害金の起算日
不法行為による損害賠償債務は不法行為時に発生し,不法行為時から履行遅滞になりますので,事故日からの遅延損害金の支払を請求することができます。
二 遅延損害金の利率
遅延損害金の利率は民事法定利率によります(民法404条)。
令和2年4月1日に改正民法が施行されたことにより,民事法定利率が変わりました。そのため,令和2年4月1日以降に発生した交通事故については,当面,年3分(3%)の割合で遅延損害金が発生します。
令和2年3月31日以前の交通事故については,改正前の民事法定利率である年5分(5%)の割合で遅延損害金を計算します。
三 損害の填補があった場合の遅延損害金
損害の填補があった場合,遅延損害金から充当するのか,元本から充当するのか問題となります。
1 自賠責保険からの支払
自賠責保険金からの支払があった場合は,まず遅延損害金に充当してから,残額を元本に充当するものと解されています。
また,自賠責保険金を元本額から控除した上で,事故日から自賠責保険金の受領日までの遅延損害金を別途請求する方法もあります。
2 労災保険の給付
労災保険の給付については,制度の趣旨目的に従い,特定の損害を填補するものであり,遅延損害金は填補の対象となるものではないことから,支給が著しく遅れる等特段の事情がない限り,不法行為時に損害が填補されたものとして,元本から控除され,控除される元本に対応する遅延損害金は発生しないものと解されています。
3 人身傷害保険
人身傷害保険は損害の元本を填補するものであり,遅延損害金を填補するものではないため,人身傷害保険の支払をした保険会社は支払時に填補した元本の請求権を代位取得し,遅延損害金の請求権は代位取得しないと解されています。
そのため,被害者は,保険金により填補された元本に対する事故日から保険金受領日までの遅延損害金を請求することができると解されています。
4 任意保険会社の支払
任意保険会社が治療費等を支払うことがあります。
任意保険会社の支払については,遅延損害金から充当される場合や,元本に充当し,充当される元本に対する遅延損害金は免除するとの黙示の合意が認められる場合があります。