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【離婚】養育費・婚姻費用の算定方式・算定表の改定

2020-01-09

養育費や婚姻費用の算定は,実務上,標準算定方式(簡易算定方式ともいいます。)や標準算定表(簡易算定表ともいいます。)を用いて行われていますが,算定方式や算定表が改定され,令和元年12月23日に改定内容が公表されました。
今後,養育費の額や婚姻費用分担額を算定するにあたっては,改定後の算定方式や算定表を用いることになります。

一 養育費・婚姻費用の算定方式・算定表

1 養育費

(1)養育費の算定方式

養育費は,①権利者と義務者の基礎収入(収入のうち生活にあてられる分)を算定し,②義務者が子と同居していると仮定して,義務者の基礎収入を義務者の生活費と子の生活費に按分し,③子の生活費を義務者と権利者の基礎収入で按分するという方法で算定します。
計算式は,以下のようになります。

養育費 (月額)
=義務者の基礎収入×子の生活費指数/義務者と子の生活費指数×義務者の基礎収入/(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)÷12

(2)養育費の算定表

算定表は,標準的なケースについて,算定方式に基づいて算定される養育費を1万円または2万円の幅で表に整理したものであり,権利者が養育している子の人数や年齢に応じて,①子1人(0~14歳),②子1人(15~19歳),③子2人(第1子及び第2子0~14歳),④子2人(第1子15~19歳,第2子0~14歳),⑤子2人(第1子及び第2子15~19歳),⑥子3人(第1子,第2子及び第3子0~14歳),⑦子3人(第1子15~19歳,第2子及び第3子0~14歳),⑧子3人(第1子及び第2子15~19歳,第3子0~14歳),⑨子3人(第1子,第2子及び第3子15~19歳)の9種類の表があります。
表の縦軸の義務者の年収が表示されているところから横に延ばした線と,横軸の権利者の年収が表示されているところから縦にのばした線の交わるところの数値が養育費の金額(月額)となります。

2 婚姻費用

(1)婚姻費用の算定方式

婚姻費用分担額は,①権利者と義務者の基礎収入を算定し,②権利者と義務者の基礎収入の合計額を権利者世帯と義務者世帯に按分し,③権利者世帯の按分額から権利者の基礎収入額を控除して算定します。
計算式は以下のとおりです。

婚姻費用分担額(月額)
={(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)×権利者世帯の生活費指数/(義務者世帯の生活費指数+権利者世帯の生活費指数)-権利者の基礎収入}÷12

(2)婚姻費用の算定表

算定表は,標準的なケースについて,算定方式に基づいて算定される婚姻費用を1万円または2万円の幅で表に整理したものです。
算定表には,権利者が養育している子の人数や年齢に応じて,①夫婦のみ(子がいない場合),②子1人(0~14歳),③子1人(15~19歳),④子2人(第1子及び第2子0~14歳),⑤子2人(第1子15~19歳,第2子0~14歳),⑥子2人(第1子及び第2子15~19歳),⑦子3人(第1子,第2子及び第3子0~14歳),⑧子3人(第1子15~19歳,第2子及び第3子0~14歳),⑨子3人(第1子及び第2子15~19歳,第3子0~14歳),⑩子3人(第1子,第2子及び第3子15~19歳)の10種類があります。
表の縦軸の義務者の年収が表示されているところから横に延ばした線と,横軸の権利者の年収が表示されているところから縦にのばした線の交わるところの数値が婚姻費用分担額(月額)となります。

二 改定の内容

これまでの算定方式や算定表の基本的な枠組みや考え方自体は改定後も変わりません。
改定では,基礎となっている統計資料や制度等の更新により,基礎収入と生活費指数が見直されました。
また,基礎収入と生活費指数の見直しにより養育費等の額が変わりましたので,算定表の内容も変わりました。

1 基礎収入の見直し

基礎収入とは収入のうち生活にあてられる部分のことです。
基礎収入は,給与所得者の場合は,総収入額から公租公課,職業費(被服費,交通費等),特別経費(住居費等)を控除した金額であり,自営業者の場合は,所得金額から公租公課,特別経費を控除した金額ですが,簡易迅速性,予測可能性,公平性の観点から,収入額に標準的な割合(基礎収入割合)乗じて算定します。
改定前は,給与所得者の基礎収入割合は概ね総収入の34%から42%の範囲,自営業者の基礎収入割合は概ね総所得の47%から52%の範囲であるとされていました(いずれも高額所得者ほど低くなります。)。
改定では,算定方式の基となっている統計資料や制度等を最新のものに更新することや,職業費の一部の費目の計上額について見直しが行われました。
これにより,改定後は,給与所得者の基礎収入割合は概ね総収入の38%から54%の範囲,自営業者の基礎収入割合は,概ね総所得の48%から61%の範囲となりました(いずれも高額所得者ほど低くなります。)。

2 生活費指数の見直し

これまで子の生活費指数について,0歳から14歳までと15歳から19歳までの2つに区分しており,生活費指数を親を100,0歳から14歳までの子を55,15歳から19歳までの子を90としていました。

改定後も子の生活費指数を0歳から14歳までと15歳以上(終期を何歳までとするかは個別の事案によります。)の子の2つに区分しますが,統計資料の更新により,各区分の生活費指数が見直され,改定後の生活費指数は,親100,0歳から14歳までの子62,15歳以上の子85となりました。

三 具体例

例えば,離婚に際して,妻(給与所得者,年収100万円)が子2人(13歳と16歳)の親権者となり,夫(給与所得者,年収800万円)に養育費の支払を請求する場合,改定前の算定方式によると,養育費は月額約12万4000円ですが,改定後の算定方式によると月額約13万7000円となります。

改定前
妻の基礎収入 42万円(=100万円×基礎収入割合42%)
夫の基礎収入 288万円(=800万円×基礎収入割合36%)

288万円×(90+55)/(100+90+55)×288万円/(288万円+42万円)÷12≒12万3962円

改定後
妻の基礎収入 50万円(=100万円×基礎収入割合50%)
夫の基礎収入 320万円(=800万円×基礎収入割合40%)

320万円×(85+62)/(100+85+62)×320万円/(320万円+50万円)÷12≒13万7257円

四 養育費・婚姻費用の増減額請求への影響

養育費や婚姻費用を定めた後に事情の変更があれば,当事者は養育費等の増額請求や減額請求をすることができます。
改定された算定方式や算定表によると養育費等の額が増える場合,養育費等の増額請求ができないか問題となりますが,算定方式や算定表が改定されたこと自体は,事情の変更にはあたらないと解されていますので,算定方式等の改定を理由に養育費等の増額請求をすることはできないのが原則です。

もっとも,事情の変更があり,養育費等の増減額請求がなされた場合,変更後の養育費等を算定するにあたって,改定後の算定方式や算定表が用いられることになるものと考えられます。

【離婚】専業主婦の離婚事件

2019-12-11

専業主婦の方が離婚する場合,どのようなことが問題となるでしょうか。

 

一 離婚後の生活が成り立つかどうか

専業主婦の方は,婚姻期間中は自分に収入がなくても,夫の収入で生活することができますが,離婚後は自分の収入や財産で生活を維持しなければならなくなります。
そのため,専業主婦の方が離婚する場合には,離婚後の仕事,住居,生活費等,離婚後の生活がどうなるかを考え,予め離婚後の生活が成り立つ算段をつけておく必要があります。離婚後の生活のことを考えないで,離婚や離婚条件を決めてしまうと,離婚後に生活が成り立たず,後悔することになりかねません。

離婚後の生活が成り立つかどうかは,離婚後の自身の努力や家族の協力のほか,離婚するにあたって夫にどのような請求ができるかにかかっています。

 

二 婚姻費用分担請求

離婚が成立するまでの間,夫婦が別居している場合,専業主婦である妻には収入がありませんので,別居中の生活費を確保するため,妻から夫に対し婚姻費用分担請求をすることが考えられます。
婚姻費用分担額については,夫婦双方の収入を基に,簡易算定表や簡易算定方式により算定するのが通常ですので,夫の収入が分かれば,大よその金額の算定ができます。

 

三 養育費

専業主婦である母親が,離婚後,未成年の子の親権者となり,子を監護することになった場合には,父親に対し,子の監護に要する費用(養育費)の支払を請求することができます(民法766条)。
養育費の額については,夫婦双方の収入を基に,簡易算定表や簡易算定方式により算定するのが通常です。
離婚後,母親が子を監護することになった場合,子を困窮させないようにするため,養育費の請求をしましょう。

 

四 慰謝料

夫の不貞行為やDV等,夫の有責行為により離婚する場合には,妻から夫に対し慰謝料請求をすることが考えられます。
慰謝料額について明確な基準があるわけではありませんが,有責行為の種類・態様,当事者双方の有責性の程度,婚姻期間,未成年の子の有無,双方の年齢,資力,社会的地位等様々な事情から判断されます。

夫が不貞行為やDV等の有責行為の存在を否定する場合には,不貞行為やDV等の証拠が必要となります。

 

五 財産分与

離婚の時から2年以内であれば,離婚した夫婦の一方は,他方に対し,財産分与請求をすることができます。
財産分与には,①清算的財産分与(夫婦が婚姻中に築いた財産の清算),②扶養的財産分与(離婚後の扶養を考慮した財産分与),③慰謝料的財産分与(慰謝料的な要素を考慮した財産分与)があります。このうち財産分与の中心となるのは①清算的財産分与であり,②,③は補充的に考慮されるにとどまります。

 

1 清算的財産分与

清算的財産分与は,夫婦が協力して形成した財産を夫婦で分けることです。
財産形成に寄与した割合で分けることになりますので,専業主婦の場合,寄与割合が夫よりも低いのではないかと争いとなることがありますが,特段の事情(夫婦の一方が特別な才能,専門知識や努力により多額な収入を得て,財産が形成された場合等)がない限り,夫婦は財産の形成に等しく貢献しているものとみて,2分の1ずつの割合で分けるのが原則です(2分の1ルール)。
そのため,専業主婦だからというだけで,清算財産分与の割合が2分の1より低くなるということは通常ありません。

清算的財産分与の請求をするにあたっては,夫にどのような財産があるか把握しておく必要があります。

 

2 扶養的財産分与

財産分与は清算的財産分与が中心ですが,清算的財産分与や慰謝料だけでは夫婦の一方が離婚後の生活に困窮することになる場合には,補充的に扶養的財産分与が認められることがあります。
高齢の専業主婦で年金額が少額の場合,専業主婦で働き始めるまで時間がかかる場合,未成熟子を監護して働くことができない場合等,離婚後の妻の生活について扶養の必要性がある場合には,補充的に扶養的財産分与が認められることがあります。

 

六 年金分割

夫婦の一方または双方が婚姻期間中に厚生年金や共済年金に加入している場合,原則として離婚から2年以内であれば,年金分割請求をすることができます。

年金分割には,3号分割と合意分割があります。
3号分割は,第3号被保険者である期間(平成20年4月1日以降の期間)についての年金分割です。3号分割の年金分割請求をすれば,自動的に2分の1の割合で按分されるので,按分割合を決める必要はありません。

合意分割は,3号分割以外の場合であり,当事者が合意または裁判で按分割合を定める年金分割です。当事者が按分割合について合意ができなければ裁判所が按分割合を定めますが,その場合,特段の事情がない限り,2分の1となることがほとんどです。

専業主婦の場合,夫が2号被保険者(会社員や公務員)のときは,3号被保険者にあたりますので,3号分割をすることができます(3号分割ができるのは,平成20年4月31日以降の3号被保険者期間であり,それ以前の期間にについては合意分割ができます。)。
また,夫が1号被保険者(自営業者)の場合,専業主婦の妻も1号被保険者になりますので,年金分割はできません。

年金分割をするには,年金分割のための情報提供通知書を入手する必要があります。

【離婚】親権者の変更

2019-07-02

未成年の子の父母が離婚する場合,父母の一方が未成年の子の親権者に指定されますが,離婚後,子の利益のため必要があると認められる場合には親権者の変更をすることができます。

 

一 親権者の変更とは

未成年の子の父母が離婚するときは,父母の一方を未成年の子の親権者に指定しなければなりません。
しかし,離婚後,子の利益のため必要があると認められるときは,家庭裁判所は,子の親族の請求によって,親権者を他の一方に変更することができます(民法819条6項)。

親権者の変更は,単独親権者の親から他の親に親権者を変更するものです。
そのため,親権者となった親が再婚し,その再婚相手が子と養子縁組した場合には実親と養親の共同親権となるので,非親権者の実親が親権者の変更を求めることはできません。

 

二  手続

1 親権者変更の調停または審判

親権者の変更は,子への影響が大きいことから,当事者の協議だけで行うことはできません。
家庭裁判所の親権者変更の調停または審判によらなければなりません(家事事件手続法39条,別表2第8項,244条)。
親権者変更の審判をするには,当事者の陳述を聴くほか,15歳以上の子の意見を聴取しなければなりません(家事事件手続法169条2項)。

 

2  戸籍の届出

親権者変更の調停が成立した場合や審判が確定した場合には,親権者となった親は,調停成立日または審判確定日から10日以内に,調停調書または審判書と確定証明書を添付して,親権者変更の届け出をしなければなりません(戸籍法79条,63条1項)。
また,子を変更後の親権者の戸籍に入籍させるには,家庭裁判所に子の氏の変更の許可の申立てをし,許可をとってから,入籍届をすることになります。

 

三 親権者変更の判断基準

親権者の変更が認められるには,子の利益のため必要があると認められることが必要となります。
具体的な基準としては,離婚時の親権者指定の場合の判断基準が参考となりますが,既に親権者が指定されていますので,単純に父母のどちらが親権者としてふさわしいかということではなく,親権者を変更する必要性があるかどうかも問題となります。

親権者の変更が認められる場合としては,①親権者が子の虐待や育児放棄をしている場合,②親権者が病気で育児ができない場合,③親権者が行方不明の場合,④親権者が死亡した場合,⑤非親権者の親が子を監護しており,子も非親権者の親との生活を望んでいる場合等が考えられます。

 

四 親権者が死亡した場合

親権者が死亡した場合,非親権者である親が親権者となるわけではなく,後見が開始します(民法838条1号)。
もっとも,未成年後見人の選任の前後に関わりなく,親権者の変更が認められれば,非親権者であった親が親権者となることができます。

未成年後見人と親権者の変更のどちらが優先するという規定はありませんので,どちらによるかは,監護の実績や子の意思を考慮して,どちらが子の利益になるかで判断されます。

【離婚】養育費の変更(増額請求・減額請求)

2019-06-21

養育費の額を決めた後に,失業や病気で収入がなくなった場合等,事情の変更があった場合には,養育費の増額や減額を請求することができます。

 

一 養育費の増額請求・減額請求

民法880条は「扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは,家庭裁判所は,その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。」と規定しており,この規定により,養育費の額を決めた後に事情の変更がある場合には,養育費の増額または減額の請求をすることができます。
養育費の増額,減額のほか,養育費の終期を変更することもあります。また,養育費不請求の合意をした後に,事情の変更があれば,養育費の請求が認められることもあります。

 

二 事情の変更

養育費の増額請求や減額請求が認められるには,養育費を決めた当時予測することができなかった重大な事情の変更があり,従前の養育費が不相当となったことが必要となります。
例えば,増額請求する場合としては,①権利者の失業,病気,怪我により収入が減少した場合,②子が進学して学費が増える場合,③子が病気になって医療費がかかる場合等があります。
また,減額請求する場合としては,①義務者が失業,病気,怪我により収入が減少した場合,②義務者が再婚して扶養家族が増えた場合,③子が権利者の再婚相手の養子となった場合等があります。
事情の変更の有無が争いとなることに備えて,養育費の取決めをする際には,「収入の状況の変更,子の進学,病気などの事情があったときは,養育費の額について別途協議する」などの取決めをしておくことも考えられます。

 

三 変更の始期

養育費の増額や減額の請求した場合,養育費がいつから変更されるのかについては,増額や減額を請求したとき(調停や審判の申立てをしたときは,申立てをしたとき)からだと考えられています。

 

四 変更後の養育費の額

変更後の養育費の額は,増額請求や減額請求をしたときの権利者,義務者双方の収入をもとに簡易算定表や簡易算定方式により算定するだけではなく,養育費の合意をした当時の事情や合意後の事情も考慮されます。

 

五 手続

当事者間の合意により養育費の額を変更することができますが,協議による合意ができないときには,家庭裁判所に養育費の増額請求または減額請求の調停または審判の申立てをすることができます。

【離婚】不倫相手に対する離婚慰謝料請求

2019-03-28

不貞行為が原因で離婚した場合,不貞行為をされた夫婦の一方は,不貞行為をした夫婦の他方とその相手方に対し,慰謝料請求することが考えられます。
不貞行為が原因で離婚した場合の慰謝料については,①不貞行為による精神的苦痛に対する慰謝料を請求する考え方(不貞慰謝料)と,②離婚に至ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料を請求する考え方(離婚慰謝料)があります。
①と②では,消滅時効の起算点や遅延損害金の起算日に違いがあり,①では不貞行為をした時が起算点・起算日となるのに対し,②では離婚をした時が起算点・起算日となるという違いがあります。そのため,例えば,不貞行為を知ってから3年経過した後に慰謝料請求する場合には,不法行為の消滅時効の期間(民法724条)が経過しているため,不貞慰謝料ではなく,離婚慰謝料を請求するということが考えられます。

しかし,不貞行為をした第三者に対し離婚慰謝料を請求することについて,平成31年2月19日に最高裁判所の判決がでました。
この判決では,夫婦の一方は他方と不貞行為に及んだ第三者に対し,特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料請求はできないとされました。離婚は本来,夫婦間で決めるべき事柄であることから,不貞行為により婚姻関係が破綻して離婚に至ったとしても,直ちに,第三者が離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うものではなく,責任を負うのは,単に不貞行為をしただけではなく,離婚させることを意図して,婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして離婚をやむをえなくしたと評価すべき特段の事情がある場合に限られるとのことです。

この判決は,第三者に対する離婚慰謝料の請求は原則としてできないというものであって,第三者に対する不貞慰謝料の請求を否定するものではありません。そのため,今後,第三者に対しては離婚慰謝料ではなく,不貞慰謝料の請求をすることが基本になるでしょうが,消滅時効の期間の点で第三者に慰謝料請求ができなくなるケースもでてきます。

なお,不貞行為をした夫婦の一方と第三者の責任は共同不法行為責任であり,不真正連帯債務であると考えられていますが,夫婦の一方に離婚慰謝料を請求し,第三者に不貞慰謝料を請求した場合,共同不法行為責任・不真正連帯債務や求償についてどのように考えるのか問題となるものと思われます。
また,第三者に対し不貞慰謝料の請求はできるけれども,離婚慰謝料の請求はできないとした場合,慰謝料額にどのような影響を与えるのかも問題となるものと思われます。

【離婚】扶養的財産分与

2019-02-25

離婚をした夫婦の一方は相手方に対して財産分与請求をすることができます。
財産分与には,①清算的要素(夫婦が婚姻中に協力して形成した財産の清算),②扶養的要素(離婚後の扶養),③慰謝料的要素(精神的損害の賠償)がありますが,扶養的財産分与はどのような場合に認められるのでしょうか。

一  扶養的財産分与

財産分与の可否,分与の額・方法については,「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して」定められますので(民法768条3項),夫婦が婚姻中に協力して形成した財産の額だけでなく,婚姻期間の長さ,当事者双方の年齢,健康状態,職業,収入,稼働能力,特有財産を含めた財産の状況,有責性等様々な事情が考慮されます。
財産分与は清算的財産分与が中心ですが,清算的財産分与や慰謝料だけでは夫婦の一方が離婚後の生活に困窮することになる場合には,補充的に扶養的財産分与が認められることがあります。

 

二 扶養的財産分与が認められる場合

扶養的財産分与が認められるには,①請求者に扶養の必要性があること,②義務者に扶養能力があることが必要となります。

 

1 扶養の必要性

扶養の必要性があるかどうかは,請求者が受けた清算的財産分与や慰謝料,請求者の収入,稼働能力,特有財産を含む財産の状況,親族からの援助の状況,社会保障等を考慮して,経済的自立が困難かどうかで判断されます。

扶養の必要性が問題となる場合としては,①高齢の専業主婦の場合(年金分割制度の適用がない場合や分割後の年金額が少額の場合等),②病気の場合,③未成熟子を監護して働くことができない場合,④専業主婦で働き始めるまで時間がかかる場合等があります。

 

2 義務者の扶養能力

扶養的財産分与が認められるには義務者に扶養する能力がなければいけません。
義務者の扶養能力の有無は,義務者の収入や財産から判断されます。
義務者の財産については特有財産も含めて判断されます。

 

三 扶養的財産分与の方法

扶養的財産分与は,金銭の支払いで行われることが通常です。
金額については,生計を維持できる程度の金額です。その金額は,婚姻費用より低くなることが通常です。
期間については,経済的に自立することができるまでの期間です。専業主婦が就職できるまでの期間,子を保育園に預けることができるまでの期間,病気が治るまでの期間等,事案によって異なります。
支払については,一括払いの場合と定期金払いの場合があります。

また,金銭の支払以外の方法として,夫婦の一方が所有する住居に使用貸借権等の利用権を設定して,離婚後の相手方の居住が認めること等もあります。

【離婚】夫婦関係円満調整調停(円満調停)

2018-11-05

夫婦関係がこじれ,当事者どうしで話合いができない場合には,家庭裁判所に夫婦関係円満調整調停(円満調停)の申立てをすることが考えられます。

一 夫婦関係円満調整調停(円満調停)とは

夫婦関係円満調整調停(円満調停)とは,夫婦関係が円満でなくなった場合に円満な夫婦関係を回復するための話合いをするために家庭裁判所に申し立てる調停のことであり,夫婦関係調整調停の一つです。
夫婦関係調整調停には円満調停と離婚調停があります。夫婦関係の修復が難しく,離婚したい場合には離婚調停を申し立てることができますし,離婚はしたくなく,夫婦関係を修復したい場合には,円満調停の申立てをすることができます。
また,離婚しようかどうか迷っている場合に,いきなり離婚調停を申し立てるのではなく,まず円満調整調停の申立てをすることもできます。

 

二 申立て

1 申立権者

夫または妻の一方が申立人となり,他方が相手方となります。

 

2 管轄裁判所(申立てをする裁判所)

相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所(家事事件手続法245条1項)に申立てをします。

 

3 申立てに必要な書類等

申立書と写し各1通,夫婦の戸籍謄本,事情説明書等の必要書類を提出します。
また,収入印紙と郵便切手も納めます。

 

三 調停期日での手続

調停期日では,調停委員が当事者双方から事情を聴き,不和が生じた原因を探したり,関係修復のための解決策を話し合ったりする等して,夫婦関係を修復するための解決を模索していきます。
また,当事者の一方が離婚を望んでいる等,関係修復が難しい場合には,離婚について話し合うこともあります。

 

四 終了

1 調停の成立

調停での話合いにより,当事者で夫婦関係について合意が成立した場合,円満な関係を維持するための遵守事項や同居や別居について取り決めを調停条項として調停調書に記載します。

また,当事者が離婚することに合意した場合,円満調停の手続で離婚を成立させることもできます。

 

2 調停不成立

調停が成立する見込みがない場合には,調停は不成立となります。
円満調停は一般調停事件であり,不成立になっても審判に移行することはありません。

なお,円満調停で,当事者が離婚の話合いをしたけれども,離婚の合意ができずに調停が不成立となった場合,離婚したい側は,改めて離婚調停の申立てをすることなく,離婚訴訟を提起することが可能です。

 

3 申立ての取下げ

調停成立の見込みがないけれども,不成立にしたくない場合や,夫婦関係が改善し,問題が解決したため,調停で取決めをする必要がない場合には,申立てを取り下げることがあります。

【離婚】別居中または離婚後の子の引渡請求

2018-09-13

別居中または離婚後に,父母の一方から他方に対し,未成年の子の引渡し求める方法としては,どのような方法があるでしょうか。

 

一 子の引渡し調停・審判

子の引渡を求める方法としては,子の監護に関する処分として,家庭裁判所に子の引渡しを求める調停または審判を申し立てることが考えられます(民法766条2項,家事事件手続法39条,別表第二3項,244条)。

離婚後は父母の一方が親権者となり,親権者が子を監護するのが通常ですので,離婚後,子が非親権者である親の下にいる場合には,親権者は非親権者に対し,子の福祉に反することが明らかな場合等特段の事情がない限り,子の引渡を求めることができます。
また,別居中の夫婦間でも,子の引渡しの調停または審判の申立てができますが(民法766条2項類推適用),婚姻中は夫婦が共同で親権を行使することになりますので,監護権者指定の調停または審判の申立てをあわせてすることが通常です。

 

二 審判前の保全処分

緊急性が高い場合には,審判前の保全処分の申立てをして,子の仮の引渡しを求めることが考えられます(家事事件手続法157条1項3号)。
審判前の保全処分は,審判の申立てをしている場合だけでなく,調停の申立てをしている場合にも申し立てることができます(家事事件手続法157条1項3号)。

 

三 人身保護請求

1 人身保護請求とは

法律上正当な手続によらず,身体の自由を拘束されている人がいる場合には,人身保護法に基づき救済を請求することができますので(人身保護法2条),人身保護法2条に基づき子の引渡請求をすることが考えられます。
人身保護請求手続では迅速に裁判がなされますので,早期の解決を図ることが可能です。

 

2 要件

人身保護規則4条は「法第二条の請求は,拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分がその権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著である場合に限り,これをすることができる。但し,他に救済の目的を達するのに適当な方法があるときは,その方法によって相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白でなければ,これをすることができない。」と規定されているため,人身保護請求をするには,①子が拘束されていることのほかに,②顕著な違法性,②補充性が要件となっています。

 

3 別居中の場合

婚姻中は父母は共同で親権を行使するものであり,別居中,父母の一方が子を監護することは特段の事情がない限り適法です。
そのため,顕著な違法性があるといえるためには,子の幸福に反することが明白であることが必要であり,子の引渡しを命じる仮処分や審判が確定しているのに拘束者が従わない場合や,請求者の監護の下では安定した生活がおくれるのに,拘束者の監護の下では,健康が著しく損なわれたり,義務教育も満足に受けられない場合等,例外的な場合には限られると解されます。

 

4 離婚後の場合

離婚後に親権者から非親権者に対する人身保護請求については,親権者が子を監護するのが原則ですから,請求者が子を監護することが子の幸福の観点から著しく不当でない限りは,顕著な違法性があるものと解されています。

もっとも,子が拘束者の下で暮らすことを望んでいる場合には,拘束に違法性がないものとして,請求が認められないことがあります。

 

四 親権または監護権に基づく妨害排除請求

その他に子の引渡しを求める方法としては,親権または監護権に基づく妨害排除請求の民事訴訟をすることも考えられますが,子の引渡しの問題は家庭裁判所で解決することがふさわしいですし,民事訴訟による解決は時間がかかりますので,父母間の子の引渡しをめぐる紛争解決方法としては,あまり利用されていません。

【離婚】夫婦がそれぞれ子を監護する場合の婚姻費用,養育費

2018-08-23

婚姻費用分担額や養育費の算定は簡易算定表を用いて行うことが多いですが,簡易算定表は,夫婦の一方が子を監護している場合を前提としています。
そのため,夫婦がそれぞれ子を監護している場合,婚姻費用や養育費をどのように算定するのか問題となります。

なお,簡易算定方式と簡易算定表については,「【離婚】婚姻費用(簡易算定方式と簡易算定表)」,「【離婚】養育費(簡易算定方式と簡易算定表)」のページをご覧ください。

※算定方式・算定表は改訂されました(令和元年12月23日公表)。基本的な考え方は変わっておりませんが,このページの計算例などは改訂前のものですのでご注意ください。
算定方式・算定表の改訂についてはこちら→http://nagaselaw.com/【離婚】養育費・婚姻費用の算定方式・算定表の/

 

一 夫婦がそれぞれ子を監護している場合の婚姻費用分担額の算定

簡易算定方式では,婚姻費用分担額を以下の計算式で算定します。

婚姻費用分担額=(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)×権利者世帯の生活費指数÷(義務者世帯の生活費指数+権利者世帯の生活費指数)-権利者の基礎収入

基礎収入とは,収入のうち生活に当てられる部分のことです。
生活費指数については,夫,妻を100,0歳から14歳の子を55,15歳から19歳の子を90とします。

夫婦がそれぞれ子を監護している場合の婚姻費用分担額も上記の計算式で計算することができます。

例えば,妻の基礎収入が100万円,夫の基礎収入が250万円で,10歳と15歳の子がいる場合に,妻が10歳の子,夫が15歳の子をそれぞれ監護しているときは,夫が負担すべき婚姻費用分担額は以下のとおりです。

婚姻費用分担額(年額)=(100万円+250万円)×(100+55)÷(100+100+55+90)-100万円≒57万2463円

婚姻費用分担額(月額)=婚姻費用分担額(年額)÷12≒4万7705円≒5万円

なお,上記の例で夫が妻に婚姻費用を請求した場合には,婚姻費用分担額はマイナスになりますので,妻には婚姻費用分担義務はありません。

婚姻費用分担額(年額)=(100万円+250万円)×(100+90)÷(100+100+55+90)-250万円≒-57万2463円

 

二 夫婦がそれぞれ子を監護している場合の養育費の算定

夫婦がそれぞれ子を監護している場合の養育費の算定については,いくつかの方法が考えられます。以下,述べる方法以外の計算の仕方も考えられますのでご注意ください。

 

1 簡易算定表を用いる場合

①権利者が子全員を監護していると仮定して,簡易算定表に権利者,義務者双方の収入を当てはめて,養育費の額を算定します。
②上記の額に,子全員の生活費指数の合計に占める権利者が監護する子の生活費指数の割合を乗じて,義務者の負担額を算定します。

例えば,妻が10歳の子,夫が15歳の子をそれぞれ監護している場合に夫が負担すべき養育費は,①妻が子全員を監護していると仮定した場合に夫が支払うべき養育費が簡易算定表によると月額10万円から12万円であり,②その金額に,子全員の生活費指数の合計(145=55+90)に占める妻が監護する子の生活費指数(55)の割合(約0.38)を乗じると,夫の負担額は,約3万8000円から4万5000円となります。

 

2 簡易算定方式による場合

簡易算定方式では,養育費は以下の計算式で算定します。

養育費={義務者の基礎収入×(子の生活費指数÷義務者と子の生活費指数)}×{義務者の基礎収入÷(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)}

夫婦がそれぞれ子を監護している場合の養育費も上記の計算式を用いて算定することが考えられます。
その際,①まず,権利者が子全員を監護しているものと仮定した場合の義務者の負担額を計算し,②次いで,その額に子全員の生活費指数の合計に占める権利者が監護する子の生活費指数の割合を乗じて,義務者が負担すべき養育費の額を算定します。

例えば,妻の基礎収入が100万円,夫の基礎収入が250万円で,10歳と15歳の子がいる場合に,妻が10歳の子,夫が15歳の子をそれぞれ監護しているときは,夫が妻に監護される子のために負担すべき養育費は以下のとおりです。

①妻が子を全員監護していると仮定した場合の夫の負担額(年額)
250万円×(55+90)÷(100+55+90)×250万円÷(100万円+250万円)≒105万6851円

②子の生活費指数の割合を乗じた額(年額)
105万6851円×{55÷(55+90)}≒40万0874円

他方,上記の例で,夫が妻に養育費を請求したときは,妻が夫に監護される子のために負担すべき養育費が発生します。

養育費(年額)={100万円×(55+90)÷(100+55+90)×100万円÷(100万円+250万円)}×{90÷(55+90)}≒10万4956円

その場合,夫婦がお互いに養育費を支払いあうことになりますが,双方の負担額を差引きして,負担額が多いほう(例では夫)から少ないほう(例では妻)に差額を支払うことにすることも考えられます。

【離婚】4人以上の子を監護する場合の婚姻費用,養育費

2018-08-20

婚姻費用分担額や養育費の算定は簡易算定表を用いて行うことが多いですが,簡易算定表では子が3人以下の場合までしかありません。
そのため,子が4人以上いる場合には簡易算定方式を用いて婚姻費用分担額や養育費を算定することになります。
なお,簡易算定方式と簡易算定表については,「【離婚】婚姻費用(簡易算定方式と簡易算定表)」,「【離婚】養育費(簡易算定方式と簡易算定表)」のページをご覧ください。

※算定方式・算定表は改訂されました(令和元年12月23日公表)。基本的な考え方は変わっておりませんが,このページの計算例などは改訂前のものですのでご注意ください。
算定方式・算定表の改訂についてはこちら→http://nagaselaw.com/【離婚】養育費・婚姻費用の算定方式・算定表の/

 

一 子を4人以上監護している場合の婚姻費用分担額の算定

簡易算定方式では,婚姻費用分担額を以下の計算式で算定します。

婚姻費用分担額=(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)×権利者世帯の生活費指数÷(義務者世帯の生活費指数+権利者世帯の生活費指数)-権利者の基礎収入

基礎収入とは,収入のうち生活に当てられる部分のことです。
生活費指数については,夫,妻を100,0歳から14歳の子を55,15歳から19歳の子を90とします。

子が4人以上いる場合の婚姻費用分担額も上記の計算式で計算します。

例えば,妻の基礎収入が50万円,夫の基礎収入が350万円,子が8歳,10歳,15歳,17歳で妻が子4人を監護している場合に夫が負担すべき婚姻費用分担額は以下のとおりです。

婚姻費用分担額(年額)=(50万円+350万円)×(100+55+55+90+90)÷(100+100+55+55+90+90)-50万円≒268万3673円

婚姻費用分担額(月額)=婚姻費用分担額(年額)÷12≒22万3639円≒22万円

 

二 子を4人以上監護している場合の養育費の算定

簡易算定方式では,養育費は以下の計算式で算定します。

養育費=(義務者の基礎収入×子の生活費指数÷義務者と子の生活費指数)×義務者の基礎収入÷(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)

子が4人以上いる場合の養育費も上記の計算式で算定します。

例えば,妻の基礎収入が50万円,夫の基礎収入が350万円,子が8歳,10歳,15歳,17歳で,離婚後,妻が子4人を監護する場合に夫が負担すべき養育費は以下のとおりです。

養育費(年額)=350万円×(55+55+90+90)÷(100+55+55+90+90)×350万円÷(50万円+350万円)≒227万7243円

養育費(月額)=養育費(年額)÷12≒18万9770円≒19万円

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