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【離婚】離婚調停と婚姻費用分担調停の同時申立て

2018-05-21

配偶者と離婚したいけれども,離婚するまでの間の生活費も負担してもらいたい場合には,離婚調停と婚姻費用分担調停の申立てを同時にすることが考えられます。

 

1 離婚調停と婚姻費用分担調停の同時申立て

離婚調停は離婚や離婚条件について話合いをするものであり,婚姻費用の分担については話合いの対象とはなりませんので(なお,未払婚姻費用は財産分与で考慮されますが,全額が認められるわけではありません),離婚するまでの間の婚姻費用分担請求をしたい場合には,離婚調停とは別に婚姻費用分担調停の申立てをしなければなりません。
また,婚姻費用分担義務は基本的に請求時から生じると解されていますので,婚姻費用分担調停の申立ては早期に行なったほうが良いです。
そのようなことから,離婚したいけれども,離婚するまでの間の生活費も負担してもらいたい場合には,離婚調停と婚姻費用分担調停を同時に申し立てることが考えられます。

 

2 婚姻関係の破綻と婚姻費用分担調停

離婚調停で婚姻関係の破綻を主張しておきながら,婚姻費用分担請求をすることは矛盾するのではないか疑問に思われるかもしれません。
しかし,請求者やその監護する子の生活保持のため,婚姻費用分担額は迅速に決める必要があるところ,婚姻関係破綻の有無が判明するまで婚姻費用分担額が決まらないとすれば婚姻費用分担額を迅速に決めることが難しくなってしまいますので,一般的に,婚姻関係が破綻していても,婚姻関係が継続する限り,婚姻費用分担義務はなくならないと解されています(ただし,有責配偶者からの婚姻費用分担請求は権利の濫用にあたるものとして否定または減額されることがあります。)。
そのため,離婚調停を申し立て,婚姻関係の破綻を主張している場合であっても,離婚するまでの間の婚姻費用分担請求をすることができますので,離婚調停と婚姻費用分担調停を同時に申立てても矛盾はありません。

 

3 手続の流れ

離婚調停と婚姻費用分担調停の申立てをする場合には,それぞれについて申立書や必要書類等を準備して,家庭裁判所に提出します。
離婚調停と婚姻費用分担調停は併合されて,同一期日に並行して進められます。
生活費の早急な確保が必要な場合や離婚や離婚条件についての話合いが長期化するおそれがある場合には,まず婚姻費用分担額を決めてから,離婚や離婚条件についての話合いを進めることになりますが,そうでない場合には,財産分与額や解決金に婚姻費用分担額を含めて解決することもあります。

【離婚】住宅ローンがある不動産の財産分与

2018-04-26

離婚する夫婦間に住宅ローンが残っている不動産がある場合,どのように財産分与するのでしょうか。

 

一 財産分与額の計算

1 清算的財産分与

財産分与請求をすることで,夫婦が婚姻中に築いた財産を清算します(清算的財産分与)。
清算的財産分与の対象となる財産は,原則として夫婦が婚姻してから別居するまでの間に取得した財産であり,積極財産から消極財産を控除します。
また,分与の割合については,夫婦は財産の形成につき同程度の貢献をしたとみて,特段の事情がない限り2分の1とされています。
そのため,清算的財産分与の財産分与額については,原則として以下のように計算します。

清算的財産分与の額=(請求者の財産+義務者の財産)÷2-請求者の財産

なお,財産分与には,扶養的要素や慰謝料的財要素もありますので,それらの観点から財産分与額が調整されることがあります。

 

2 住宅ローンのある不動産の場合

住宅ローンのある不動産については,不動産の時価から住宅ローンの残額を控除して評価すると考えられております。
例えば,夫名義の不動産(時価2000万円)があり,夫を債務者とする住宅ローンの残額が1000万円ある場合には,不動産を1000万円(=2000万円-1000万円)と評価し,夫婦の貢献を平等とすると,それぞれ500万円ずつの権利を有することになります。その場合に,離婚後も夫が住居を所有し,住宅ローンを支払い続ける場合には,夫は妻に代償金として500万円を支払うことになります。

また,オーバーローンの場合(住宅ローンの残額が不動産の時価を上回っている場合)には,その不動産は,価値がないものとして,財産分与の対象から外されます。他に資産がある場合にはその資産について財産分与が行われますが,他に資産がなければ財産分与は行われません。
オーバーローンの場合,返済した住宅ローンを財産分与の対象とすることができないか問題とされることがありますが,不動産を価値がないものとする以上,返済した住宅ローンも財産分与の対象とはならないと解されます。

なお,不動産についてはオーバーローンであっても,財産全体としてみれば消極財産よりも積極財産のほうが多い場合があります。
その場合には,不動産を含む積極財産全体から住宅ローンを含む消極財産全体を控除して当事者の財産を評価し,双方の貢献の程度によって財産分与額を算定することで,実質的に相手方に債務を負担させることが考えられます。
例えば,夫名義の財産として住宅(2000万円の価値,住宅ローンの残高2500万円)と預金1000万円があり,妻名義の財産として預金300万円がある場合,夫の財産は積極財産合計3000万円から消極財産2500万円を控除した500万円であり,妻の財産は積極財産300万円ですので,妻の寄与割合を2分の1とすると,夫から妻への財産分与額は100万円となります。

夫から妻への財産分与額=(妻の財産+夫の財産)÷2-妻の財産
={300万円+(2000万円+1000万円-2500万円)}÷2-300万円=
100万円

また,住宅ローンのある不動産以外に資産がない場合等,財産全体をみても債務のほうが多い場合に,債務を負担する側から負担しない側に対し債務の負担を命じるような財産分与ができるか問題となることがありますが,条文上明確な根拠がありませんので,難しいと考えられています。

 

二 財産分与の方法

1 住宅を売却する場合

夫婦のどちらも住宅に居住するつもりがない場合には,住宅を売却し,住宅の売却代金で住宅ローンを返済し,残金を夫婦間で分配することが考えられます。

住宅の売却代金より住宅ローンの残額が多いオーバーローンの場合,売却してもローンが残ることになります。金融機関との関係では,ローンの債務者や連帯保証人が支払うことになりますが,夫婦間ではどちらが負担するか問題となります。

 

2 住宅の名義人が居住する場合

住宅の名義人が住み続ける場合には,住宅の名義変更はせず,名義人が住宅ローンの支払を続けるとともに,相手方に代償金の支払やその他の財産を渡すことが考えられます。

相手方が住宅ローンの連帯保証人になっている場合には,相手方が連帯保証人から外すよう求めてくることが多いですが,当事者の合意だけで連帯保証を外すことはできませんので,金融機関との交渉が必要となります。

 

3 住居の非名義人が居住する場合

(1)名義人が非名義人に住宅を現物で分与する場合

財産分与は,金銭の給付が基本ですが,現物を分与することもできますので,住居の名義人が非名義人に住宅を現物で分与することもできます。
その際,住宅ローンの債務をどちらが負担するか,代償金の支払をどうするか問題となります。
なお,住宅ローンがある場合,金融機関との関係で登記名義の変更ができない場合がありますが,そのような場合には,財産分与を原因とする所有権移転の仮登記をし,住宅ローンが完済された時点で本登記をすることがあります。

 

(2)利用権を設定する場合

例えば,夫名義の住宅があり,妻は離婚後も子らとともに住宅に居住し続けることを望んでいるけれども,妻に住宅ローンや代償金を支払うだけの経済力がない場合には,住宅の名義変更はしないけれども,扶養的財産分与の観点から,当事者間で使用貸借契約や賃貸借契約を締結することが考えられます。

 

4 共有名義の場合

住宅がもともと夫婦の共有名義であり,オーバーローン等の事情で離婚後も共有のままにしておく場合や,相手方が代償金を支払うことができないので,住宅の一部のみ分与を受ける場合等,離婚後も住宅が共有名義となる場合があります。
しかし,離婚後のトラブルを避けるため,特別な事情がない限りは,できる限り離婚後の共有状態は解消したほうが良いでしょう。

【離婚】離婚慰謝料

2018-01-10

離婚する場合,離婚原因によって慰謝料が問題となることがあります。
ここでは,離婚慰謝料について説明します。

 

一 離婚慰謝料

離婚に伴う慰謝料(離婚慰謝料)は,一方の有責行為により離婚を余儀なくされたことによる精神的損害に対する損害賠償のことです。
離婚慰謝料には,①離婚したこと自体による精神的苦痛の慰謝料と,②離婚原因である有責行為(不貞行為や暴力等)による精神的苦痛の慰謝料があります。
いずれであるか区別されないことが多いですが,消滅時効や遅延損害金の起算点に影響します。離婚自体の慰謝料の場合は離婚時が起算点となるのに対し,離婚原因となる行為の慰謝料の場合は行為時が起算点となります。
また,DV(ドメスティック・バイオレンス)の場合には,離婚慰謝料とは別に傷害慰謝料(入通院慰謝料)や後遺障害慰謝料が認められることがあります。

 

二 離婚慰謝料が認められる場合

離婚に伴う慰謝料請求は不法行為による精神的損害についての損害賠償請求ですから,離婚慰謝料が認められるには不法行為による損害賠償請求の要件をみたす必要があります。
①相手方の行為に違法性がない場合,②夫婦双方に婚姻関係の破綻の責任が同程度ある場合や請求者の責任のほうが大きい場合,③有責行為と婚姻関係の破綻に相当因果関係がない場合(不貞行為をする前から婚姻関係が破綻していた場合等),④既に損害が填補されている場合(不貞相手から既に慰謝料が支払われている場合等)には,慰謝料は認められないでしょう。

また,離婚原因との関係でいえば,不貞行為やDVによる離婚の場合には不法行為にあたり,慰謝料請求が認められやすいですが,価値観の相違や性格の不一致による離婚の場合には不法行為とはいえず,慰謝料請求は難しいでしょう。

 

三 慰謝料額に影響を与える要素

慰謝料の額について客観的な基準があるわけではありません。慰謝料の額は,有責性の程度,精神的苦痛の大きさ,離婚に至る経過,婚姻期間の長さ,未成年子の有無,夫婦双方の年齢,資力や社会的地位,婚姻中の生活状況,離婚後の生活状況,財産分与の内容等,様々な事情を考慮して決まります。
慰謝料額は具体的な事案によって異なりますので,一概には言えませんが,300万円以下の場合が多く,500万円を超えることはあまりないです。

 

四 離婚慰謝料の請求方法

1 離婚と同時に請求する場合

(1)協議

離婚協議では,離婚するかどうかだけでなく,どのような条件で離婚するのか離婚条件についても話合いをすることができますので,離婚に伴い慰謝料を請求したい場合には,慰謝料についても話合いをしましょう。
慰謝料について合意ができた場合には,相手方が履行しないときに備えて,執行認諾文言付きの公正証書にしておいた方がよいでしょう。

 

(2)調停

離婚調停の申立てをする際,あわせて慰謝料請求の申立てをすることができますので,調停手続の中で慰謝料についても話し合いをすることができます。
調停条項で慰謝料の支払について取決めをしておけば,相手方が履行しない場合に強制執行をすることができます。

 

(3)訴訟

離婚の慰謝料請求は不法行為による損害賠償請求ですから,訴額によって地方裁判所または簡易裁判所に訴えを提起するのが原則です。
もっとも,離婚の訴えと損害賠償請求の訴えを一つの訴えで家庭裁判に提起することもできますし(人事訴訟法17条1項),既に離婚訴訟が係属している場合にはその家庭裁判所に損害賠償請求の訴えを提起して,両事件の口頭弁論を併合することもできます(人事訴訟法17条2項,3項,8条2項)。
また,地方裁判所や簡易裁判所に訴訟提起した場合であっても,損害賠償請求訴訟が係属する裁判所は,相当と認めるときは,離婚訴訟が係属する家庭裁判所に移送をすることができ(人事訴訟法8条1項),その場合には,離婚事件と損害賠償請求事件の口頭弁論は併合されます(人事訴訟法8条2項)。

 

2 離婚後に請求する場合

(1)交渉

離婚の際,慰謝料について取決めをしていなければ,離婚後に慰謝料請求をすることができます。
慰謝料について合意ができた場合には,相手方が履行しないときに備えて,執行認諾文言付きの公正証書にしておいた方がよいでしょう。

 

(2)調停

離婚後の紛争についても家庭裁判所の調停で話合うことができますので,離婚後に慰謝料請求をしたい場合には,家庭裁判所に慰謝料請求の調停を申し立てることができます。

 

(3)訴訟

離婚後に慰謝料請求する場合には,訴額によって地方裁判所または簡易裁判所に訴えを提起します。

姻族関係の終了(姻族関係終了届)

2017-11-13

婚姻により,配偶者の親や兄弟姉妹等の血族との間には姻族関係ができます。
姻族関係は配偶者が亡くなっても継続しますが,生存配偶者は,姻族関係終了届を出すことにより,亡くなった配偶者の血族との姻族関係を終了させることができます。

 

一 姻族関係

1 姻族関係とは

配偶者の一方と他方の血族との関係を姻族関係といい,三親等以内の姻族(配偶者の父母,祖父母,曽祖父母,おじおば,兄弟姉妹,甥姪)は親族になります(民法725条3号)。

 

2 姻族関係の効果

(1)扶養義務

直系血族および兄弟姉妹は互いに扶養義務を負いますが(民法877条1項),特別な事情がある場合には,三親等内の親族間でも扶養義務を負うことがあります(民法877条2項)。
そのため,姻族の間であっても扶養義務を負うことがあります。

(2)婚姻障害

直系姻族の間では婚姻することができません。姻族関係が終了した後も婚姻はできません(民法735条)。

(3)その他

成年後見の申立権者になれるなど,姻族関係(親族関係)があることによるさまざまな効果があります。

 

3 姻族関係の終了

(1)離婚

姻族関係は,配偶者と離婚したことにより終了します(民法728条1項)。

(2)配偶者の死亡

配偶者の一方が死亡した場合には,生存配偶者と死亡配偶者の血族との間の姻族関係は当然には終了しません。生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときに終了します(民法728条2項)。その意思表示は姻族関係終了届の届出により行います。

 

二 姻族関係終了届について

1 姻族関係終了届とは

民法728条2項の規定によって姻族関係を終了させる意思を表示しようとする者は,死亡した配偶者の氏名,本籍及び死亡の年月日を届出書に記載して,その旨を届け出なければなりません(戸籍法96条)。この届け出のことを姻族関係終了届といいます。

 

2 届出人

届出ができるのは,生存配偶者です(民法782条2項)。それ以外の人(死亡配偶者の血族等)が届出をすることはできません。

 

3 届出場所

姻族関係終了届は,届出人の本籍地又は所在地の市区町村役場の窓口に届け出ます(戸籍法1条,25条1項)。

 

4 届出期間

配偶者の死亡後に届け出ができます。提出期限はありません。
届出をした日から法律上の効力が発生します。

 

三 姻族関係終了届の効果

1 姻族関係の終了

生存配偶者が姻族関係終了届を出すことにより,亡くなった配偶者の血族との姻族関係が終了します。
子と亡くなった配偶者の血族との親族関係には影響しません。

 

2 扶養義務

生存配偶者と亡くなった配偶者の血族との間の姻族関係が終了することにより,扶養義務を負うこともなくなります。

 

3 婚姻障害

直系姻族の間では,姻族関係が終了した後であっても婚姻はできません(民法735条)。

 

4 氏や戸籍

姻族関係終了届を出しても,氏や戸籍の変動はありません。
生存配偶者は,復氏届を提出することにより婚姻前の氏に復することができます(民法751条1項,戸籍法95条)。

 

5 相続

姻族関係終了届を出しても,亡くなった配偶者の相続人としての資格はなくなりませんので,生存配偶者は亡くなった配偶者の遺産を取得することができます。

 

6 遺族年金

配偶者が亡くなった場合,生存配偶者は要件を充たせば遺族年金を受給することができます。姻族関係終了届を出しても遺族年金が受け取れなくなるわけではありません。

【離婚】不貞行為の証拠

2017-10-13

離婚事件において,不貞行為があったかどうかは,離婚原因や慰謝料請求に影響しますので,不貞行為の有無は大きな争点となります。
不貞行為の事実について当事者間に争いがある場合,不貞行為の証拠があるかどうかが重要になりますが,どのようなものが証拠となるのでしょうか。また証拠を収集するにあたって,どのようなことに注意すべきでしょうか。

 

一 不貞行為の証拠

1 写真・動画・録音

配偶者とその不貞相手が旅行中に撮影した写真,自宅やホテルに宿泊している写真,性交渉や性交類似行為をしている写真は,不貞行為を裏付ける証拠になります。
また,写真以外に動画を撮影していたり,録音していた場合には,動画や録音データも証拠となります。

 

2 興信所・探偵社の調査報告書

興信所や探偵社の調査報告書により不貞行為の存在を立証することができる可能性があります。
もっとも,調査が功を奏するかわかりませんし,調査期間が長くなると多額の調査費用がかかりますので,利用するかどうかは慎重に検討すべきでしょう。

 

3 メール

配偶者と不貞相手が,携帯電話やパソコンでメールのやりとりをしていることがあります。メールの内容が不貞関係の存在をうかがわせるものであれば,重要な証拠となります。

 

4 不貞相手からの手紙

不貞相手から配偶者に宛てた手紙は,内容によっては,不貞行為の存在を推認させる証拠となります。

 

5 レシート・領収証

ホテルや避妊具等のレシートや領収証は,不貞行為の存在を推認させる証拠となります。

 

6 ICカードやETCの履歴

配偶者が電車等の公共交通機関を利用して相手方の自宅等に行っている場合には,ICカードの履歴が証拠となります。
また,自動車で行っている場合には,ETCの履歴が証拠となります。

 

7 手帳・日記

配偶者の手帳に不貞相手の連絡先や密会の日時や場所について記載があったり,日記に不貞相手と会ったことや不貞相手への気持ちが書いてあれば,不貞関係を推認させる証拠となります。

 

8 覚書・謝罪文

不貞行為の発覚後,配偶者の一方が他方に対し,不貞行為を認めた覚書や謝罪文を渡すことがあります。配偶者が不貞行為を認めているので重要な証拠となります。
紛失したり,破棄されたりしないよう厳重に保管しておくべきですし,写真に撮ったり,コピーをとったりしておいたほうがよいでしょう。

 

9 不貞行為を認める内容のメールや録音データ等

夫婦間の話合いにおいて,配偶者が不貞行為を認める内容のメールを送っていたり,不貞行為を認める発言が録音されていれば,メールや録音データが不貞行為の証拠となります。

 

10 その他

配偶者が別居し,不貞相手と同棲している場合には,同棲していることの証拠も不貞行為の証拠となりますし,不貞相手との間に子ができた場合にはその証拠も不貞行為の証拠となります。
また,証人尋問や本人尋問により,不貞行為を立証することができるかもしれませんので,客観的な証拠がないからといって諦める必要はありません。

 

二 違法収集証拠として証拠能力が争いになる場合

不貞行為の証拠は,メールや手紙等,個人のプライバシーに関するものが多く,当事者の一方が他方に無断で見てよいのかという問題があり,違法収集証拠として証拠能力(証拠調べの対象となる資格)の有無が争いになることがあります。
相手方の同意なく収集されたからといって直ちに証拠能力が否定されるわけではありませんが,収集行為の違法性が強い場合には違法収集証拠として証拠能力が否定される可能性がありますので,注意しましょう。

 

三 まとめ

不貞行為は,通常,密室で行われますので,相手が不貞行為の存在を認めない場合には,立証は容易ではありません。
そのため,証拠を収集しておく必要がありますが,どのような証拠が有力な証拠となるかは,証拠の種類(写真,メール,手紙など)で決まるわけではなく,内容がどのようなものかによります。
また,一つひとつの証拠だけでは不貞行為の事実を立証するのに不十分だったとしても,複数の証拠をつなぎ合わせると不貞行為の事実を立証できることもありますので,決定的な証拠がないからといって諦める必要はありません。
ただし,不貞行為の証拠はプライバシーに関わるものが多いので,証拠の収集や扱いには細心の注意を払いましょう。

【離婚】離婚事件の検討事項

2017-10-06

離婚事件では,①どうやって離婚するのか(離婚手続),②離婚できるのか(離婚原因),③離婚以外にどういったことを決めるのか(離婚条件),④生活をどうするか,⑤弁護士に依頼する必要があるか考えましょう。

 

一 離婚の手続

1 離婚協議

当事者の協議により離婚することを協議離婚といいます。
離婚協議がまとまった場合,離婚届を作成し,役所に提出します。

 

2 離婚調停

離婚協議がまとまらなかった場合には,家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
①離婚する旨の調停が成立(調停離婚),②調停に代わる審判が確定(審判離婚)することにより離婚できます。

 

3 離婚訴訟

離婚調停で解決しなかった場合,離婚訴訟を提起します。
①離婚を認める判決が確定(判決離婚),②離婚する旨の和解が成立(和解離婚),③被告が請求を認諾(認諾離婚)することにより離婚できます。

 

二 離婚原因

夫婦が合意により離婚する場合には離婚原因は不要ですが,合意ができず,判決で離婚する場合には,離婚原因(民法770条1項)が必要となります。
離婚原因は,①不貞行為,②悪意の遺棄,③3年以上の生死不明,④回復の見込みのない強度の精神病,⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由の5つです。
判決離婚以外の協議離婚,調停離婚,和解離婚等の場合には離婚原因は不要です。
もっとも,離婚協議や離婚調停がまとまらなければ離婚訴訟となり,最終的に離婚原因があれば判決で離婚が認められてしまうため,協議や調停で離婚するかどうかについても離婚原因の有無が影響してきます。
また,離婚原因がない場合,相手方が離婚に応じなければ,離婚できませんので,相手方が離婚を渋っているときには,離婚に応じるよう離婚条件を譲歩しなければならなりますので,離婚原因の有無は離婚条件にも影響してきます。

 

三 離婚条件

離婚をする際には,①親権者の指定,②養育費,③面会交流,④慰謝料,⑤財産分与,⑥年金分割の按分割合を定めることがなります。
このうち①親権者の指定をしなければ離婚することができませんので,離婚と同時に決めなければなりませんが,②から⑥については,離婚後に決めることもできます。

1 親権者の指定

未成年の子がいる夫婦が離婚するときには,その一方を親権者と定めなければなりません。どちらが親権者となるかは夫婦の合意で定めますが,合意ができない場合は裁判所が判断します。
父母の双方が親権を主張している場合,一般的には母親が有利であるといわれていますが,父親が親権者となることがないわけではありません。

 

2 養育費

離婚後に子を監護する親は,監護しない親に対し,養育費の支払を請求することができます。子の親権者が子を監護することが通常であり,親権者がそうでない親に対し養育費の支払を請求するのが通常です。
夫婦双方の収入を基に,簡易算定表や簡易算定方式により算定するのが通常です。

 

3 面会交流

離婚後,夫婦の一方が子を監護しますが,子を監護しない親は,子を監護する親に対し,子との面会交流を求めることができます。

 

4 慰謝料

夫婦の一方の有責行為により離婚に至った場合には,慰謝料請求をすることができます。
慰謝料請求する場合としては,不貞行為やDVがあった場合が考えられます。
性格の不一致が原因で離婚した場合に慰謝料請求することは難しいでしょう。

 

5 財産分与

離婚の時から2年以内であれば,離婚した夫婦の一方は,他方に対し,財産分与請求をすることができます。
財産分与には,①清算的財産分与(夫婦が婚姻中に築いた財産の清算),②扶養的財産分与(離婚後の扶養を考慮した財産分与),③慰謝料的財産分与(慰謝料的な要素を考慮した財産分与)があります。このうち財産分与の中心となるのは①清算的財産分与であり,②,③は補充的に考慮されるにとどまります。
清算的財産分与では,相手方にどのような財産があるか把握する必要があります。

 

6 年金分割

夫婦の一方または双方が婚姻期間中に厚生年金や共済年金に加入している場合には,原則として離婚から2年以内であれば,年金分割請求をすることができます。
年金分割には,①合意分割(当事者が合意または裁判で分割割合を定める年金分割)と②3号分割(第3号被保険者である期間についての年金分割)があります。
②3号分割では,年金分割請求をすれば,自動的に2分の1の割合で按分されるので,按分割合を決める必要はありません。
これに対し,①合意分割については,当事者の合意で按分割合を定めますが,合意ができなければ裁判所が按分割合を定めます。裁判所が按分割合を定める場合,2分の1となることがほとんどです。

 

四 生活をどうするか

1 離婚するまでの間の生活

離婚事件では,夫婦が別居している場合が多いですが,別居中の生活費については,夫婦の一方から他方に対し,婚姻費用分担請求をすることができます。
婚姻費用の分担額は,夫婦双方の収入を基に,簡易算定表や簡易算定方式により算定するのが通常です。

 

2 離婚後の生活

夫婦は,子の監護については別として離婚後は自分の生活は自分で維持しなければなりませんので,仕事,住居,生活費等,離婚後の生活をどうするか予め考えておく必要があります。
離婚後の生活のことを考えないで,離婚や離婚条件を決めてしまうと,離婚後の生活が成り立たず後悔することになりかねません。特に,離婚したいという気持ちが強い場合や自分に離婚原因があるなど後ろめたいことがある場合には,後先を考えずに,相手の言いなりの条件で離婚してしまうことがありますが,後で非常に困ることになります。

 

五 弁護士に依頼するか否か

離婚協議,離婚調停,離婚訴訟の順で弁護士の関与が増えていきます。
協議離婚では弁護士の関与は少ないですし,離婚調停でも弁護士に依頼しない人が多いですが,弁護士に依頼した場合には主張できたはずのことが主張できず,不利な条件で離婚が成立していることが少なくありません。
離婚原因や離婚条件が争いとなっている場合には,弁護士に相談・依頼したほうがよいでしょう。

 

【離婚】財産分与の請求期間(離婚の時から2年間)

2017-09-28

離婚に伴う財産分与は離婚後に請求することもできますが,財産分与請求には請求期間がありますので,請求期間を過ぎないよう注意しましょう。

 

一 財産分与の請求期間

1 離婚後2年以内

財産分与についての協議が調わないとき又は協議ができないときは,家庭裁判所に協議に代わる処分の請求をすることができますが,離婚の時から2年を経過すると請求できなくなります(民法768条2項)。
そのため,財産分与の調停や審判の申立ては離婚の時から2年以内にしなければなりません。
離婚後2年以内に申立てをしていれば,調停の成立や審判の確定が離婚後2年を経過してもかまいませんが,申立てを取り下げた時点で離婚から2年を経過していると再度の申立てができなくなるので注意しましょう。

なお,離婚後2年を経過している場合,財産分与調停ではなく,離婚後の紛争調整調停の申立てをすることは可能ですが,一般調停事件であり,調停が不成立になっても審判には移行しませんので,相手方が調停に応じない場合には,財産分与を受けることは難しいでしょう。

 

2 除斥期間

離婚の時から2年の期間は,消滅時効期間ではなく,除斥期間であると解されています。
そのため,時効の中断の規定(民法147条)や催告の規定(民法153条)の適用はありません。
ただし,財産分与契約が錯誤無効となる場合に民法161条(時効の停止についての規定)を類推適用する余地があるとする裁判例があります。

 

二 財産分与の協議・調停・和解成立後,審判・判決確定後の消滅時効

財産分与により,当事者の一方が他方に金銭を支払うことになった場合,金銭の支払をいつまで請求できるかについては消滅時効の問題となります。
財産分与の協議成立による場合には,民法167条1項により消滅時効期間は10年となります。
また,調停成立,審判確定,訴訟上の和解成立,判決確定による場合には,民法174条の2第1項により消滅時効期間は10年となります。

 

三 まとめ

財産分与請求は離婚後にすることもできますが,離婚後2年間が経過すると請求することができなくなります。
そのため,財産分与請求を考えている場合には,できる限り離婚と同時に財産分与についても解決しておいた方がよいでしょう。

【離婚】再婚と養育費の減額

2017-09-14

離婚して養育費の支払額を決めた後に,養育費の支払を受ける側(権利者)が再婚した場合,養育費を支払っている側(義務者)は権利者に対し養育費の減額を請求することができるでしょうか。

また,義務者が再婚した場合,義務者は権利者に対し養育費の減額を請求することができるでしょうか。

 

一 養育費の増額・減額請求

民法880条は「扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは,家庭裁判所は,その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる」と規定しており,養育費の場合も「事情の変更」があれば,養育費を増額または減額することができます。
「事情の変更」とは養育費を決めた当時予測できなかった事情が発生したことであり,収入の増減,病気やケガ,家庭環境の変動,進学による教育費の増加等があった場合です。

養育費の増額・減額をするには,当事者間で協議して養育費の額を変更する合意をするか,家庭裁判所に養育費の増額請求または減額請求の調停または審判を申し立てます。

 

二 権利者が再婚した場合

1 再婚相手が子と養子縁組をしない場合

権利者が再婚したけれども,再婚相手が子と養子縁組をしていない場合には,義務者は子の扶養義務を免れません。
そのため,権利者が再婚したというだけでは事情の変更があったとはいえず,他に事情の変更がなければ養育費の減額は難しいでしょう。

 

2 再婚相手が子と養子縁組をした場合

再婚相手が子と養子縁組をした場合には,養親となった再婚相手は子の扶養義務を負います。
その場合,養親が第1次的に子の扶養義務を負い,実親である義務者の扶養義務は2次的なものとなりますので,養親の経済状況によって義務者は養育費支払の免除や減額が認められるでしょう。

 

三 義務者が再婚した場合

1 再婚相手が働いていない場合

再婚相手が働いておらず,無収入の場合には,義務者は再婚相手を扶養する義務を負います。また,義務者と再婚相手との間に子ができた場合には,義務者はその子を扶養する義務を負います。
そのため,養育費を決めた時に予測できた場合を除き,義務者が再婚したことや再婚相手との間に子ができたことは事情の変更にあたり,養育費の減額ができるでしょう。

 

2 再婚相手が働いている場合

再婚相手が働いており,自分の生活をまかなえる程度の収入がある場合には,養育費の算定において,再婚相手の扶養を考慮する必要はないでしょう。
再婚相手との間に子ができた場合には義務者はその子の扶養義務を負いますので,養育費を決めた時に予測できた場合でなければ事情の変更にあたり,養育費の減額が認められるでしょう。その際,再婚相手も子を扶養する義務を負いますので,再婚相手の収入も考慮されるでしょう。

【離婚】離婚せずに不貞の慰謝料請求をする場合に考えておくこと

2017-09-08

夫婦の一方が不貞行為をした場合であっても,不貞行為をされた側は,①小さい子がいるので離婚できない,②オーバーローンの自宅があり,離婚に伴い処分すると負債だけが残るので,離婚したくても離婚できない,③専業主婦であり,離婚したら生活が成り立たない等,さまざまな理由から,離婚しないという選択をすることが少なくありません。

その場合,せめて配偶者の不倫相手に慰謝料請求をしたいと考えるかもしれませんが,離婚せずに慰謝料請求する場合には,どのようなことに気を付けておくべきでしょうか。

 

一 不貞行為の慰謝料請求

不貞行為(配偶者以外の者と肉体関係をもつこと)は婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害する行為であり不法行為となります。
そのため,不貞行為をされた配偶者は,不貞行為をした配偶者とその不倫相手に対し,不貞行為により精神的苦痛を被った慰謝料請求をすることができます。
もっとも,離婚せず,今後も婚姻関係を継続していく場合には,夫婦は経済的に一体であるので,実際には不貞行為をした配偶者に対し慰謝料請求しないことが多いのではないでしょうか。

 

二 離婚する場合としない場合で慰謝料請求には,どのような違いがあるか

1 慰謝料額

不貞行為の慰謝料額については,不貞行為の期間,不貞行為の態様,不貞行為への主導性,婚姻生活の状況,婚姻関係破綻の有無,請求者側の落ち度の有無等様々な事情を考慮して決まります。
慰謝料額について統一的な基準があるわけではありませんが,不貞行為が原因で離婚に至った場合と離婚に至らなかった場合を比較すると,一般的には,離婚に至った場合のほうが,精神的苦痛が大きいと考えられますので,離婚しない場合の慰謝料額は,離婚した場合より低くなる傾向にあります。
慰謝料額の大まかな目安は,具体的な事情にもよりますが,離婚に至った場合には,200万円から300万円,離婚に至らなかった場合には100万円から150万円ほどになることが多いものと思われます。

 

2 求償

不貞行為は,不貞行為をした配偶者とその不倫相手の共同不法行為であり,両者の損害賠償債務は不真正連帯債務となります。共同不法行為の場合,被害者は各共同不法行為者に損害賠償額全額を請求できますが,共同不法行為者の一人が自分の負担部分を超えて支払った場合には,他の共同不法行為者に求償することができますので,不倫相手のみに慰謝料を請求して支払わせたときには,不倫相手は不貞行為をした配偶者に求償することができます。
離婚せず,婚姻関係を続けようと考えている場合,不倫相手に慰謝料を支払わせた後に不倫相手から求償があると,最終的な解決が長引き,夫婦関係に悪影響が生じかねません。
不倫相手に慰謝料請求はするが,夫に対して求償されたくないときには,求償しないことを条件として慰謝料額を相当程度減額して和解することが多いでしょう。

 

3 夫婦関係への影響

離婚しないで婚姻関係を継続しようと考えている場合,不倫相手に慰謝料請求をするときには夫婦関係への影響を考慮する必要があります。
不倫相手に慰謝料請求をすることで,不倫相手が配偶者から離れ不倫関係が終了することも多いでしょうが,場合によっては,不倫相手に慰謝料請求をして争っていることで夫婦関係が悪化し,離婚に至ってしまうこともないわけではありません。
この点については,一概には言えませんが,具体的な状況を見て対応を検討するほかないでしょう。

 

三 まとめ

離婚をしない場合,不貞行為をした配偶者との婚姻関係が続いていくことになります。
不貞行為は不貞行為した配偶者とその不倫相手の共同不法行為であり,不倫相手だけに慰謝料請求をした場合であっても,不貞行為をした配偶者が無関係というわけではありません。
そのため,不倫相手に慰謝料請求をする場合には,弁護士に相談・依頼する等して慎重に対応したほうがよいでしょう。

【離婚】不貞行為による慰謝料と離婚による慰謝料

2017-09-05

妻が夫の不倫相手に慰謝料請求をし,その後に離婚した場合,妻は夫と不倫相手に対し,離婚による慰謝料を請求することができるでしょうか。

 

一 不貞行為による慰謝料

不貞行為(配偶者以外の者と肉体関係をもつこと)は婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害する行為であり不法行為となります。
そのため,不貞行為をされた配偶者は,不貞行為をした配偶者とその不倫相手に対し,不貞行為により精神的苦痛を被った慰謝料請求をすることができます。
ただし,肉体関係をもった時点で婚姻関係が破綻していた場合には,婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益がありませんので,特段の事情がない限り不法行為とはなりません。

 

二 離婚による慰謝料

夫婦の一方の有責行為により離婚することになった場合,慰謝料請求をすることができます。
離婚による慰謝料としては,①離婚原因となった有責行為(不貞行為等)から生じた精神的苦痛の慰謝料と②離婚したことによる精神的苦痛の慰謝料があります。
①,②のいずれを根拠とするか余り区別はされていませんが,消滅時効や遅延損害金の起算点に影響はあるでしょう。

 

三 不貞行為による慰謝料請求をした後に離婚する場合

不貞行為による慰謝料請求をした後に離婚する場合,改めて離婚による慰謝料請求をすることはできるでしょうか。
広島高等裁判所平成19年4月17日判決は,妻が夫とその不倫相手を被告とする慰謝料請求訴訟(前訴)の判決確定後に離婚による慰謝料請求訴訟(後訴)を提起した事案について,①前訴と後訴では訴訟物が異なるため,前訴の既判力は後訴には及ばないとしつつ,②前訴では不貞行為および婚姻関係が破綻したことによる精神的苦痛に対する慰謝料請求をしているので,新たな精神的苦痛は生じていないと判断しました。
この裁判例からすれば,不貞行為による慰謝料請求について,未だ婚姻関係が破綻していないとして低額の慰謝料しか認められなかった場合には,婚姻関係が破綻したことによる精神的苦痛の慰謝料は含まれていませんので,その後,婚姻関係が破綻し離婚に至った場合には,改めて離婚による慰謝料請求をすることはできるのではないかと考えられます。

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