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【離婚】夫婦関係円満調整調停(円満調停)

2018-11-05

夫婦関係がこじれ,当事者どうしで話合いができない場合には,家庭裁判所に夫婦関係円満調整調停(円満調停)の申立てをすることが考えられます。

一 夫婦関係円満調整調停(円満調停)とは

夫婦関係円満調整調停(円満調停)とは,夫婦関係が円満でなくなった場合に円満な夫婦関係を回復するための話合いをするために家庭裁判所に申し立てる調停のことであり,夫婦関係調整調停の一つです。
夫婦関係調整調停には円満調停と離婚調停があります。夫婦関係の修復が難しく,離婚したい場合には離婚調停を申し立てることができますし,離婚はしたくなく,夫婦関係を修復したい場合には,円満調停の申立てをすることができます。
また,離婚しようかどうか迷っている場合に,いきなり離婚調停を申し立てるのではなく,まず円満調整調停の申立てをすることもできます。

 

二 申立て

1 申立権者

夫または妻の一方が申立人となり,他方が相手方となります。

 

2 管轄裁判所(申立てをする裁判所)

相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所(家事事件手続法245条1項)に申立てをします。

 

3 申立てに必要な書類等

申立書と写し各1通,夫婦の戸籍謄本,事情説明書等の必要書類を提出します。
また,収入印紙と郵便切手も納めます。

 

三 調停期日での手続

調停期日では,調停委員が当事者双方から事情を聴き,不和が生じた原因を探したり,関係修復のための解決策を話し合ったりする等して,夫婦関係を修復するための解決を模索していきます。
また,当事者の一方が離婚を望んでいる等,関係修復が難しい場合には,離婚について話し合うこともあります。

 

四 終了

1 調停の成立

調停での話合いにより,当事者で夫婦関係について合意が成立した場合,円満な関係を維持するための遵守事項や同居や別居について取り決めを調停条項として調停調書に記載します。

また,当事者が離婚することに合意した場合,円満調停の手続で離婚を成立させることもできます。

 

2 調停不成立

調停が成立する見込みがない場合には,調停は不成立となります。
円満調停は一般調停事件であり,不成立になっても審判に移行することはありません。

なお,円満調停で,当事者が離婚の話合いをしたけれども,離婚の合意ができずに調停が不成立となった場合,離婚したい側は,改めて離婚調停の申立てをすることなく,離婚訴訟を提起することが可能です。

 

3 申立ての取下げ

調停成立の見込みがないけれども,不成立にしたくない場合や,夫婦関係が改善し,問題が解決したため,調停で取決めをする必要がない場合には,申立てを取り下げることがあります。

【離婚】別居中または離婚後の子の引渡請求

2018-09-13

別居中または離婚後に,父母の一方から他方に対し,未成年の子の引渡し求める方法としては,どのような方法があるでしょうか。

 

一 子の引渡し調停・審判

子の引渡を求める方法としては,子の監護に関する処分として,家庭裁判所に子の引渡しを求める調停または審判を申し立てることが考えられます(民法766条2項,家事事件手続法39条,別表第二3項,244条)。

離婚後は父母の一方が親権者となり,親権者が子を監護するのが通常ですので,離婚後,子が非親権者である親の下にいる場合には,親権者は非親権者に対し,子の福祉に反することが明らかな場合等特段の事情がない限り,子の引渡を求めることができます。
また,別居中の夫婦間でも,子の引渡しの調停または審判の申立てができますが(民法766条2項類推適用),婚姻中は夫婦が共同で親権を行使することになりますので,監護権者指定の調停または審判の申立てをあわせてすることが通常です。

 

二 審判前の保全処分

緊急性が高い場合には,審判前の保全処分の申立てをして,子の仮の引渡しを求めることが考えられます(家事事件手続法157条1項3号)。
審判前の保全処分は,審判の申立てをしている場合だけでなく,調停の申立てをしている場合にも申し立てることができます(家事事件手続法157条1項3号)。

 

三 人身保護請求

1 人身保護請求とは

法律上正当な手続によらず,身体の自由を拘束されている人がいる場合には,人身保護法に基づき救済を請求することができますので(人身保護法2条),人身保護法2条に基づき子の引渡請求をすることが考えられます。
人身保護請求手続では迅速に裁判がなされますので,早期の解決を図ることが可能です。

 

2 要件

人身保護規則4条は「法第二条の請求は,拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分がその権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著である場合に限り,これをすることができる。但し,他に救済の目的を達するのに適当な方法があるときは,その方法によって相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白でなければ,これをすることができない。」と規定されているため,人身保護請求をするには,①子が拘束されていることのほかに,②顕著な違法性,②補充性が要件となっています。

 

3 別居中の場合

婚姻中は父母は共同で親権を行使するものであり,別居中,父母の一方が子を監護することは特段の事情がない限り適法です。
そのため,顕著な違法性があるといえるためには,子の幸福に反することが明白であることが必要であり,子の引渡しを命じる仮処分や審判が確定しているのに拘束者が従わない場合や,請求者の監護の下では安定した生活がおくれるのに,拘束者の監護の下では,健康が著しく損なわれたり,義務教育も満足に受けられない場合等,例外的な場合には限られると解されます。

 

4 離婚後の場合

離婚後に親権者から非親権者に対する人身保護請求については,親権者が子を監護するのが原則ですから,請求者が子を監護することが子の幸福の観点から著しく不当でない限りは,顕著な違法性があるものと解されています。

もっとも,子が拘束者の下で暮らすことを望んでいる場合には,拘束に違法性がないものとして,請求が認められないことがあります。

 

四 親権または監護権に基づく妨害排除請求

その他に子の引渡しを求める方法としては,親権または監護権に基づく妨害排除請求の民事訴訟をすることも考えられますが,子の引渡しの問題は家庭裁判所で解決することがふさわしいですし,民事訴訟による解決は時間がかかりますので,父母間の子の引渡しをめぐる紛争解決方法としては,あまり利用されていません。

【離婚】夫婦がそれぞれ子を監護する場合の婚姻費用,養育費

2018-08-23

婚姻費用分担額や養育費の算定は簡易算定表を用いて行うことが多いですが,簡易算定表は,夫婦の一方が子を監護している場合を前提としています。
そのため,夫婦がそれぞれ子を監護している場合,婚姻費用や養育費をどのように算定するのか問題となります。

なお,簡易算定方式と簡易算定表については,「【離婚】婚姻費用(簡易算定方式と簡易算定表)」,「【離婚】養育費(簡易算定方式と簡易算定表)」のページをご覧ください。

 

一 夫婦がそれぞれ子を監護している場合の婚姻費用分担額の算定

簡易算定方式では,婚姻費用分担額を以下の計算式で算定します。

婚姻費用分担額=(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)×権利者世帯の生活費指数÷(義務者世帯の生活費指数+権利者世帯の生活費指数)-権利者の基礎収入

基礎収入とは,収入のうち生活に当てられる部分のことです。
生活費指数については,夫,妻を100,0歳から14歳の子を55,15歳から19歳の子を90とします。

夫婦がそれぞれ子を監護している場合の婚姻費用分担額も上記の計算式で計算することができます。

例えば,妻の基礎収入が100万円,夫の基礎収入が250万円で,10歳と15歳の子がいる場合に,妻が10歳の子,夫が15歳の子をそれぞれ監護しているときは,夫が負担すべき婚姻費用分担額は以下のとおりです。

婚姻費用分担額(年額)=(100万円+250万円)×(100+55)÷(100+100+55+90)-100万円≒57万2463円

婚姻費用分担額(月額)=婚姻費用分担額(年額)÷12≒4万7705円≒5万円

なお,上記の例で夫が妻に婚姻費用を請求した場合には,婚姻費用分担額はマイナスになりますので,妻には婚姻費用分担義務はありません。

婚姻費用分担額(年額)=(100万円+250万円)×(100+90)÷(100+100+55+90)-250万円≒-57万2463円

 

二 夫婦がそれぞれ子を監護している場合の養育費の算定

夫婦がそれぞれ子を監護している場合の養育費の算定については,いくつかの方法が考えられます。以下,述べる方法以外の計算の仕方も考えられますのでご注意ください。

 

1 簡易算定表を用いる場合

①権利者が子全員を監護していると仮定して,簡易算定表に権利者,義務者双方の収入を当てはめて,養育費の額を算定します。
②上記の額に,子全員の生活費指数の合計に占める権利者が監護する子の生活費指数の割合を乗じて,義務者の負担額を算定します。

例えば,妻が10歳の子,夫が15歳の子をそれぞれ監護している場合に夫が負担すべき養育費は,①妻が子全員を監護していると仮定した場合に夫が支払うべき養育費が簡易算定表によると月額10万円から12万円であり,②その金額に,子全員の生活費指数の合計(145=55+90)に占める妻が監護する子の生活費指数(55)の割合(約0.38)を乗じると,夫の負担額は,約3万8000円から4万5000円となります。

 

2 簡易算定方式による場合

簡易算定方式では,養育費は以下の計算式で算定します。

養育費={義務者の基礎収入×(子の生活費指数÷義務者と子の生活費指数)}×{義務者の基礎収入÷(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)}

夫婦がそれぞれ子を監護している場合の養育費も上記の計算式を用いて算定することが考えられます。
その際,①まず,権利者が子全員を監護しているものと仮定した場合の義務者の負担額を計算し,②次いで,その額に子全員の生活費指数の合計に占める権利者が監護する子の生活費指数の割合を乗じて,義務者が負担すべき養育費の額を算定します。

例えば,妻の基礎収入が100万円,夫の基礎収入が250万円で,10歳と15歳の子がいる場合に,妻が10歳の子,夫が15歳の子をそれぞれ監護しているときは,夫が妻に監護される子のために負担すべき養育費は以下のとおりです。

①妻が子を全員監護していると仮定した場合の夫の負担額(年額)
250万円×(55+90)÷(100+55+90)×250万円÷(100万円+250万円)≒105万6851円

②子の生活費指数の割合を乗じた額(年額)
105万6851円×{55÷(55+90)}≒40万0874円

他方,上記の例で,夫が妻に養育費を請求したときは,妻が夫に監護される子のために負担すべき養育費が発生します。

養育費(年額)={100万円×(55+90)÷(100+55+90)×100万円÷(100万円+250万円)}×{90÷(55+90)}≒10万4956円

その場合,夫婦がお互いに養育費を支払いあうことになりますが,双方の負担額を差引きして,負担額が多いほう(例では夫)から少ないほう(例では妻)に差額を支払うことにすることも考えられます。

【離婚】4人以上の子を監護する場合の婚姻費用,養育費

2018-08-20

婚姻費用分担額や養育費の算定は簡易算定表を用いて行うことが多いですが,簡易算定表では子が3人以下の場合までしかありません。
そのため,子が4人以上いる場合には簡易算定方式を用いて婚姻費用分担額や養育費を算定することになります。
なお,簡易算定方式と簡易算定表については,「【離婚】婚姻費用(簡易算定方式と簡易算定表)」,「【離婚】養育費(簡易算定方式と簡易算定表)」のページをご覧ください。

 

一 子を4人以上監護している場合の婚姻費用分担額の算定

簡易算定方式では,婚姻費用分担額を以下の計算式で算定します。

婚姻費用分担額=(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)×権利者世帯の生活費指数÷(義務者世帯の生活費指数+権利者世帯の生活費指数)-権利者の基礎収入

基礎収入とは,収入のうち生活に当てられる部分のことです。
生活費指数については,夫,妻を100,0歳から14歳の子を55,15歳から19歳の子を90とします。

子が4人以上いる場合の婚姻費用分担額も上記の計算式で計算します。

例えば,妻の基礎収入が50万円,夫の基礎収入が350万円,子が8歳,10歳,15歳,17歳で妻が子4人を監護している場合に夫が負担すべき婚姻費用分担額は以下のとおりです。

婚姻費用分担額(年額)=(50万円+350万円)×(100+55+55+90+90)÷(100+100+55+55+90+90)-50万円≒268万3673円

婚姻費用分担額(月額)=婚姻費用分担額(年額)÷12≒22万3639円≒22万円

 

二 子を4人以上監護している場合の養育費の算定

簡易算定方式では,養育費は以下の計算式で算定します。

養育費=(義務者の基礎収入×子の生活費指数÷義務者と子の生活費指数)×義務者の基礎収入÷(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)

子が4人以上いる場合の養育費も上記の計算式で算定します。

例えば,妻の基礎収入が50万円,夫の基礎収入が350万円,子が8歳,10歳,15歳,17歳で,離婚後,妻が子4人を監護する場合に夫が負担すべき養育費は以下のとおりです。

養育費(年額)=350万円×(55+55+90+90)÷(100+55+55+90+90)×350万円÷(50万円+350万円)≒227万7243円

養育費(月額)=養育費(年額)÷12≒18万9770円≒19万円

【離婚】離婚訴訟と反訴,予備的反訴,予備的附帯処分の申立て

2018-08-16

離婚訴訟の被告が原告に対し損害賠償請求や財産分与請求等をしたい場合には,①離婚の反訴請求をし,あわせて損害賠償請求や附帯処分の申立てをすることや,②離婚が認められた場合に,予備的反訴として損害賠償請求することや予備的附帯処分の申立てをすることが考えられます。

 

一 反訴

離婚訴訟の被告が,離婚すること自体には異存がないけれども,原告の主張する離婚原因に納得がいかないときは,離婚の反訴請求をし,あわせて損害賠償請求や財産分与等の附帯処分の申立てをすることが考えられます。

例えば,原告が離婚原因として被告のDVを主張しているのに対し,被告が原離婚原因として原告の不貞行為を主張して,離婚や慰謝料の支払等を求めて反訴した場合です。

離婚訴訟の被告が反訴で離婚を請求した場合,①双方が主張する離婚原因を審理判断し,本訴と反訴のいずれか一方の離婚請求が認容され,他方の離婚請求が棄却される場合と,②原告・被告とも離婚することについて意思が一致しているので,双方が主張する離婚原因を審理判断することなく,婚姻関係を継続し難い重大な事由が認められるとして,本訴・反訴とも離婚請求が認容される場合があります。

 

二 予備的反訴,予備的附帯処分の申立て

離婚訴訟の被告が,離婚はしたくないけれども,離婚が認められてしまった場合には原告に対し損害賠償請求や財産分与請求等をしたいときは,予備的に損害賠償請求の反訴をすることや予備的に財産分与等の附帯処分の申立てをすることが考えられます。

予備的反訴や予備的附帯処分の申立てにより本訴と同時に解決することができ,離婚後に請求する手間を省くことができるというメリットがありますが,予備的とはいえ被告が離婚を前提とした請求をすることは,被告も離婚を容認しているものと受け取られるおそれがあるというデメリットもありますので,被告が離婚したくない場合には,予備的反訴や予備的附帯処分の申立てをするかどうかは,よく検討すべきでしょう。

【離婚】離婚訴訟 棄却判決確定後の再度の離婚請求

2018-07-30

離婚訴訟で離婚請求を棄却する判決が確定した場合,離婚はできません。
しかし,別の離婚原因を主張して,再度,離婚請求をすることはできないでしょうか。

 

一 判決確定後の訴え提起の禁止

1 前訴原告の離婚請求の禁止

人事訴訟の判決(訴え却下判決は除きます。)の確定後は,原告は,その訴訟で請求または請求原因の変更により主張することができた事実に基づいて同一の身分関係についての人事訴訟を提起することはできません(人事訴訟法25条1項)。
そのため,離婚請求を棄却する判決が確定した場合には,異なる離婚原因を主張して離婚請求をすることもできなくなります。
例えば,前訴で,妻が夫の不貞行為を離婚原因として離婚請求したけれども,不貞行為の事実が立証できず,請求棄却判決が確定した後に,夫からのDVを主張して再度の離婚訴訟を提起することはできません。

離婚訴訟の訴訟物は離婚原因ごとに異なると解されていることから,ある離婚原因に基づく離婚請求が認められなくても,別の離婚原因を主張して再度の離婚請求をすることもできるはずですが,身分関係を安定させるため,訴訟物の範囲を超えて失権させることで,紛争の一回的解決が図られています。

 

2 前訴被告の離婚請求の禁止

人事訴訟の判決(訴え却下判決は除きます。)の確定後は,被告は,反訴提起することにより主張することができた事実に基づいて同一の身分関係についての人事訴訟を提起することはできません(人事訴訟法25条2項)。
そのため,離婚請求を棄却する判決が確定した場合,被告が反訴すれば主張することができた離婚原因に基づいて離婚請求をすることもできなくなります。
例えば,夫が提起した離婚訴訟について,妻が夫の不貞行為を離婚原因とする反訴提起をすることなく,請求棄却判決が確定した場合,その後に,妻が夫の不貞行為を離婚原因とする離婚訴訟を提起することはできません。

 

二 再度の離婚請求

人事訴訟法25条は,前訴で主張することができた事実に基づく別訴を禁止するものです。
そのため,前訴の口頭弁論終結後に生じた事由に基づいて,再度離婚請求することはできます。

例えば,前訴の口頭弁論終結後に夫が不貞行為をした場合には,妻は夫の不貞行為を離婚原因として再度の離婚請求をすることができます。
また,前訴の判決確定後も別居を長期間継続した場合には,長期間の別居を理由に,再度離婚請求をすることも考えられます。

 

三 まとめ

離婚請求を棄却する判決が確定した場合でも再度の離婚請求をすることは可能ですが,前訴で主張することができた離婚原因は実際に主張したか否かにかかわらず,後訴では主張することができなくなります。
そのため,離婚訴訟をする場合には,原告は主張できる離婚原因はすべて主張しておいたほうがよいでしょう。
また,被告も,原告の主張に納得できないから離婚請求を争っているという場合には,反訴すべきかどうか検討すべきでしょう。

【離婚】離婚調停と婚姻費用分担調停の同時申立て

2018-05-21

配偶者と離婚したいけれども,離婚するまでの間の生活費も負担してもらいたい場合には,離婚調停と婚姻費用分担調停の申立てを同時にすることが考えられます。

 

1 離婚調停と婚姻費用分担調停の同時申立て

離婚調停は離婚や離婚条件について話合いをするものであり,婚姻費用の分担については話合いの対象とはなりませんので(なお,未払婚姻費用は財産分与で考慮されますが,全額が認められるわけではありません),離婚するまでの間の婚姻費用分担請求をしたい場合には,離婚調停とは別に婚姻費用分担調停の申立てをしなければなりません。
また,婚姻費用分担義務は基本的に請求時から生じると解されていますので,婚姻費用分担調停の申立ては早期に行なったほうが良いです。
そのようなことから,離婚したいけれども,離婚するまでの間の生活費も負担してもらいたい場合には,離婚調停と婚姻費用分担調停を同時に申し立てることが考えられます。

 

2 婚姻関係の破綻と婚姻費用分担調停

離婚調停で婚姻関係の破綻を主張しておきながら,婚姻費用分担請求をすることは矛盾するのではないか疑問に思われるかもしれません。
しかし,請求者やその監護する子の生活保持のため,婚姻費用分担額は迅速に決める必要があるところ,婚姻関係破綻の有無が判明するまで婚姻費用分担額が決まらないとすれば婚姻費用分担額を迅速に決めることが難しくなってしまいますので,一般的に,婚姻関係が破綻していても,婚姻関係が継続する限り,婚姻費用分担義務はなくならないと解されています(ただし,有責配偶者からの婚姻費用分担請求は権利の濫用にあたるものとして否定または減額されることがあります。)。
そのため,離婚調停を申し立て,婚姻関係の破綻を主張している場合であっても,離婚するまでの間の婚姻費用分担請求をすることができますので,離婚調停と婚姻費用分担調停を同時に申立てても矛盾はありません。

 

3 手続の流れ

離婚調停と婚姻費用分担調停の申立てをする場合には,それぞれについて申立書や必要書類等を準備して,家庭裁判所に提出します。
離婚調停と婚姻費用分担調停は併合されて,同一期日に並行して進められます。
生活費の早急な確保が必要な場合や離婚や離婚条件についての話合いが長期化するおそれがある場合には,まず婚姻費用分担額を決めてから,離婚や離婚条件についての話合いを進めることになりますが,そうでない場合には,財産分与額や解決金に婚姻費用分担額を含めて解決することもあります。

【離婚】住宅ローンがある不動産の財産分与

2018-04-26

離婚する夫婦間に住宅ローンが残っている不動産がある場合,どのように財産分与するのでしょうか。

 

一 財産分与額の計算

1 清算的財産分与

財産分与請求をすることで,夫婦が婚姻中に築いた財産を清算します(清算的財産分与)。
清算的財産分与の対象となる財産は,原則として夫婦が婚姻してから別居するまでの間に取得した財産であり,積極財産から消極財産を控除します。
また,分与の割合については,夫婦は財産の形成につき同程度の貢献をしたとみて,特段の事情がない限り2分の1とされています。
そのため,清算的財産分与の財産分与額については,原則として以下のように計算します。

清算的財産分与の額=(請求者の財産+義務者の財産)÷2-請求者の財産

なお,財産分与には,扶養的要素や慰謝料的財要素もありますので,それらの観点から財産分与額が調整されることがあります。

 

2 住宅ローンのある不動産の場合

住宅ローンのある不動産については,不動産の時価から住宅ローンの残額を控除して評価すると考えられております。
例えば,夫名義の不動産(時価2000万円)があり,夫を債務者とする住宅ローンの残額が1000万円ある場合には,不動産を1000万円(=2000万円-1000万円)と評価し,夫婦の貢献を平等とすると,それぞれ500万円ずつの権利を有することになります。その場合に,離婚後も夫が住居を所有し,住宅ローンを支払い続ける場合には,夫は妻に代償金として500万円を支払うことになります。

また,オーバーローンの場合(住宅ローンの残額が不動産の時価を上回っている場合)には,その不動産は,価値がないものとして,財産分与の対象から外されます。他に資産がある場合にはその資産について財産分与が行われますが,他に資産がなければ財産分与は行われません。
オーバーローンの場合,返済した住宅ローンを財産分与の対象とすることができないか問題とされることがありますが,不動産を価値がないものとする以上,返済した住宅ローンも財産分与の対象とはならないと解されます。

なお,不動産についてはオーバーローンであっても,財産全体としてみれば消極財産よりも積極財産のほうが多い場合があります。
その場合には,不動産を含む積極財産全体から住宅ローンを含む消極財産全体を控除して当事者の財産を評価し,双方の貢献の程度によって財産分与額を算定することで,実質的に相手方に債務を負担させることが考えられます。
例えば,夫名義の財産として住宅(2000万円の価値,住宅ローンの残高2500万円)と預金1000万円があり,妻名義の財産として預金300万円がある場合,夫の財産は積極財産合計3000万円から消極財産2500万円を控除した500万円であり,妻の財産は積極財産300万円ですので,妻の寄与割合を2分の1とすると,夫から妻への財産分与額は100万円となります。

夫から妻への財産分与額=(妻の財産+夫の財産)÷2-妻の財産
={300万円+(2000万円+1000万円-2500万円)}÷2-300万円=
100万円

また,住宅ローンのある不動産以外に資産がない場合等,財産全体をみても債務のほうが多い場合に,債務を負担する側から負担しない側に対し債務の負担を命じるような財産分与ができるか問題となることがありますが,条文上明確な根拠がありませんので,難しいと考えられています。

 

二 財産分与の方法

1 住宅を売却する場合

夫婦のどちらも住宅に居住するつもりがない場合には,住宅を売却し,住宅の売却代金で住宅ローンを返済し,残金を夫婦間で分配することが考えられます。

住宅の売却代金より住宅ローンの残額が多いオーバーローンの場合,売却してもローンが残ることになります。金融機関との関係では,ローンの債務者や連帯保証人が支払うことになりますが,夫婦間ではどちらが負担するか問題となります。

 

2 住宅の名義人が居住する場合

住宅の名義人が住み続ける場合には,住宅の名義変更はせず,名義人が住宅ローンの支払を続けるとともに,相手方に代償金の支払やその他の財産を渡すことが考えられます。

相手方が住宅ローンの連帯保証人になっている場合には,相手方が連帯保証人から外すよう求めてくることが多いですが,当事者の合意だけで連帯保証を外すことはできませんので,金融機関との交渉が必要となります。

 

3 住居の非名義人が居住する場合

(1)名義人が非名義人に住宅を現物で分与する場合

財産分与は,金銭の給付が基本ですが,現物を分与することもできますので,住居の名義人が非名義人に住宅を現物で分与することもできます。
その際,住宅ローンの債務をどちらが負担するか,代償金の支払をどうするか問題となります。
なお,住宅ローンがある場合,金融機関との関係で登記名義の変更ができない場合がありますが,そのような場合には,財産分与を原因とする所有権移転の仮登記をし,住宅ローンが完済された時点で本登記をすることがあります。

 

(2)利用権を設定する場合

例えば,夫名義の住宅があり,妻は離婚後も子らとともに住宅に居住し続けることを望んでいるけれども,妻に住宅ローンや代償金を支払うだけの経済力がない場合には,住宅の名義変更はしないけれども,扶養的財産分与の観点から,当事者間で使用貸借契約や賃貸借契約を締結することが考えられます。

 

4 共有名義の場合

住宅がもともと夫婦の共有名義であり,オーバーローン等の事情で離婚後も共有のままにしておく場合や,相手方が代償金を支払うことができないので,住宅の一部のみ分与を受ける場合等,離婚後も住宅が共有名義となる場合があります。
しかし,離婚後のトラブルを避けるため,特別な事情がない限りは,できる限り離婚後の共有状態は解消したほうが良いでしょう。

【離婚】離婚慰謝料

2018-01-10

離婚する場合,離婚原因によって慰謝料が問題となることがあります。
ここでは,離婚慰謝料について説明します。

 

一 離婚慰謝料

離婚に伴う慰謝料(離婚慰謝料)は,一方の有責行為により離婚を余儀なくされたことによる精神的損害に対する損害賠償のことです。
離婚慰謝料には,①離婚したこと自体による精神的苦痛の慰謝料と,②離婚原因である有責行為(不貞行為や暴力等)による精神的苦痛の慰謝料があります。
いずれであるか区別されないことが多いですが,消滅時効や遅延損害金の起算点に影響します。離婚自体の慰謝料の場合は離婚時が起算点となるのに対し,離婚原因となる行為の慰謝料の場合は行為時が起算点となります。
また,DV(ドメスティック・バイオレンス)の場合には,離婚慰謝料とは別に傷害慰謝料(入通院慰謝料)や後遺障害慰謝料が認められることがあります。

 

二 離婚慰謝料が認められる場合

離婚に伴う慰謝料請求は不法行為による精神的損害についての損害賠償請求ですから,離婚慰謝料が認められるには不法行為による損害賠償請求の要件をみたす必要があります。
①相手方の行為に違法性がない場合,②夫婦双方に婚姻関係の破綻の責任が同程度ある場合や請求者の責任のほうが大きい場合,③有責行為と婚姻関係の破綻に相当因果関係がない場合(不貞行為をする前から婚姻関係が破綻していた場合等),④既に損害が填補されている場合(不貞相手から既に慰謝料が支払われている場合等)には,慰謝料は認められないでしょう。

また,離婚原因との関係でいえば,不貞行為やDVによる離婚の場合には不法行為にあたり,慰謝料請求が認められやすいですが,価値観の相違や性格の不一致による離婚の場合には不法行為とはいえず,慰謝料請求は難しいでしょう。

 

三 慰謝料額に影響を与える要素

慰謝料の額について客観的な基準があるわけではありません。慰謝料の額は,有責性の程度,精神的苦痛の大きさ,離婚に至る経過,婚姻期間の長さ,未成年子の有無,夫婦双方の年齢,資力や社会的地位,婚姻中の生活状況,離婚後の生活状況,財産分与の内容等,様々な事情を考慮して決まります。
慰謝料額は具体的な事案によって異なりますので,一概には言えませんが,300万円以下の場合が多く,500万円を超えることはあまりないです。

 

四 離婚慰謝料の請求方法

1 離婚と同時に請求する場合

(1)協議

離婚協議では,離婚するかどうかだけでなく,どのような条件で離婚するのか離婚条件についても話合いをすることができますので,離婚に伴い慰謝料を請求したい場合には,慰謝料についても話合いをしましょう。
慰謝料について合意ができた場合には,相手方が履行しないときに備えて,執行認諾文言付きの公正証書にしておいた方がよいでしょう。

 

(2)調停

離婚調停の申立てをする際,あわせて慰謝料請求の申立てをすることができますので,調停手続の中で慰謝料についても話し合いをすることができます。
調停条項で慰謝料の支払について取決めをしておけば,相手方が履行しない場合に強制執行をすることができます。

 

(3)訴訟

離婚の慰謝料請求は不法行為による損害賠償請求ですから,訴額によって地方裁判所または簡易裁判所に訴えを提起するのが原則です。
もっとも,離婚の訴えと損害賠償請求の訴えを一つの訴えで家庭裁判に提起することもできますし(人事訴訟法17条1項),既に離婚訴訟が係属している場合にはその家庭裁判所に損害賠償請求の訴えを提起して,両事件の口頭弁論を併合することもできます(人事訴訟法17条2項,3項,8条2項)。
また,地方裁判所や簡易裁判所に訴訟提起した場合であっても,損害賠償請求訴訟が係属する裁判所は,相当と認めるときは,離婚訴訟が係属する家庭裁判所に移送をすることができ(人事訴訟法8条1項),その場合には,離婚事件と損害賠償請求事件の口頭弁論は併合されます(人事訴訟法8条2項)。

 

2 離婚後に請求する場合

(1)交渉

離婚の際,慰謝料について取決めをしていなければ,離婚後に慰謝料請求をすることができます。
慰謝料について合意ができた場合には,相手方が履行しないときに備えて,執行認諾文言付きの公正証書にしておいた方がよいでしょう。

 

(2)調停

離婚後の紛争についても家庭裁判所の調停で話合うことができますので,離婚後に慰謝料請求をしたい場合には,家庭裁判所に慰謝料請求の調停を申し立てることができます。

 

(3)訴訟

離婚後に慰謝料請求する場合には,訴額によって地方裁判所または簡易裁判所に訴えを提起します。

姻族関係の終了(姻族関係終了届)

2017-11-13

婚姻により,配偶者の親や兄弟姉妹等の血族との間には姻族関係ができます。
姻族関係は配偶者が亡くなっても継続しますが,生存配偶者は,姻族関係終了届を出すことにより,亡くなった配偶者の血族との姻族関係を終了させることができます。

 

一 姻族関係

1 姻族関係とは

配偶者の一方と他方の血族との関係を姻族関係といい,三親等以内の姻族(配偶者の父母,祖父母,曽祖父母,おじおば,兄弟姉妹,甥姪)は親族になります(民法725条3号)。

 

2 姻族関係の効果

(1)扶養義務

直系血族および兄弟姉妹は互いに扶養義務を負いますが(民法877条1項),特別な事情がある場合には,三親等内の親族間でも扶養義務を負うことがあります(民法877条2項)。
そのため,姻族の間であっても扶養義務を負うことがあります。

(2)婚姻障害

直系姻族の間では婚姻することができません。姻族関係が終了した後も婚姻はできません(民法735条)。

(3)その他

成年後見の申立権者になれるなど,姻族関係(親族関係)があることによるさまざまな効果があります。

 

3 姻族関係の終了

(1)離婚

姻族関係は,配偶者と離婚したことにより終了します(民法728条1項)。

(2)配偶者の死亡

配偶者の一方が死亡した場合には,生存配偶者と死亡配偶者の血族との間の姻族関係は当然には終了しません。生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときに終了します(民法728条2項)。その意思表示は姻族関係終了届の届出により行います。

 

二 姻族関係終了届について

1 姻族関係終了届とは

民法728条2項の規定によって姻族関係を終了させる意思を表示しようとする者は,死亡した配偶者の氏名,本籍及び死亡の年月日を届出書に記載して,その旨を届け出なければなりません(戸籍法96条)。この届け出のことを姻族関係終了届といいます。

 

2 届出人

届出ができるのは,生存配偶者です(民法782条2項)。それ以外の人(死亡配偶者の血族等)が届出をすることはできません。

 

3 届出場所

姻族関係終了届は,届出人の本籍地又は所在地の市区町村役場の窓口に届け出ます(戸籍法1条,25条1項)。

 

4 届出期間

配偶者の死亡後に届け出ができます。提出期限はありません。
届出をした日から法律上の効力が発生します。

 

三 姻族関係終了届の効果

1 姻族関係の終了

生存配偶者が姻族関係終了届を出すことにより,亡くなった配偶者の血族との姻族関係が終了します。
子と亡くなった配偶者の血族との親族関係には影響しません。

 

2 扶養義務

生存配偶者と亡くなった配偶者の血族との間の姻族関係が終了することにより,扶養義務を負うこともなくなります。

 

3 婚姻障害

直系姻族の間では,姻族関係が終了した後であっても婚姻はできません(民法735条)。

 

4 氏や戸籍

姻族関係終了届を出しても,氏や戸籍の変動はありません。
生存配偶者は,復氏届を提出することにより婚姻前の氏に復することができます(民法751条1項,戸籍法95条)。

 

5 相続

姻族関係終了届を出しても,亡くなった配偶者の相続人としての資格はなくなりませんので,生存配偶者は亡くなった配偶者の遺産を取得することができます。

 

6 遺族年金

配偶者が亡くなった場合,生存配偶者は要件を充たせば遺族年金を受給することができます。姻族関係終了届を出しても遺族年金が受け取れなくなるわけではありません。

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