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【離婚】親権者の変更

2019-07-02

未成年の子の父母が離婚する場合,父母の一方が未成年の子の親権者に指定されますが,離婚後,子の利益のため必要があると認められる場合には親権者の変更をすることができます。

 

一 親権者の変更とは

未成年の子の父母が離婚するときは,父母の一方を未成年の子の親権者に指定しなければなりません。
しかし,離婚後,子の利益のため必要があると認められるときは,家庭裁判所は,子の親族の請求によって,親権者を他の一方に変更することができます(民法819条6項)。

親権者の変更は,単独親権者の親から他の親に親権者を変更するものです。
そのため,親権者となった親が再婚し,その再婚相手が子と養子縁組した場合には実親と養親の共同親権となるので,非親権者の実親が親権者の変更を求めることはできません。

 

二  手続

1 親権者変更の調停または審判

親権者の変更は,子への影響が大きいことから,当事者の協議だけで行うことはできません。
家庭裁判所の親権者変更の調停または審判によらなければなりません(家事事件手続法39条,別表2第8項,244条)。
親権者変更の審判をするには,当事者の陳述を聴くほか,15歳以上の子の意見を聴取しなければなりません(家事事件手続法169条2項)。

 

2  戸籍の届出

親権者変更の調停が成立した場合や審判が確定した場合には,親権者となった親は,調停成立日または審判確定日から10日以内に,調停調書または審判書と確定証明書を添付して,親権者変更の届け出をしなければなりません(戸籍法79条,63条1項)。
また,子を変更後の親権者の戸籍に入籍させるには,家庭裁判所に子の氏の変更の許可の申立てをし,許可をとってから,入籍届をすることになります。

 

三 親権者変更の判断基準

親権者の変更が認められるには,子の利益のため必要があると認められることが必要となります。
具体的な基準としては,離婚時の親権者指定の場合の判断基準が参考となりますが,既に親権者が指定されていますので,単純に父母のどちらが親権者としてふさわしいかということではなく,親権者を変更する必要性があるかどうかも問題となります。

親権者の変更が認められる場合としては,①親権者が子の虐待や育児放棄をしている場合,②親権者が病気で育児ができない場合,③親権者が行方不明の場合,④親権者が死亡した場合,⑤非親権者の親が子を監護しており,子も非親権者の親との生活を望んでいる場合等が考えられます。

 

四 親権者が死亡した場合

親権者が死亡した場合,非親権者である親が親権者となるわけではなく,後見が開始します(民法838条1号)。
もっとも,未成年後見人の選任の前後に関わりなく,親権者の変更が認められれば,非親権者であった親が親権者となることができます。

未成年後見人と親権者の変更のどちらが優先するという規定はありませんので,どちらによるかは,監護の実績や子の意思を考慮して,どちらが子の利益になるかで判断されます。

【離婚】養育費の変更(増額請求・減額請求)

2019-06-21

養育費の額を決めた後に,失業や病気で収入がなくなった場合等,事情の変更があった場合には,養育費の増額や減額を請求することができます。

 

一 養育費の増額請求・減額請求

民法880条は「扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは,家庭裁判所は,その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。」と規定しており,この規定により,養育費の額を決めた後に事情の変更がある場合には,養育費の増額または減額の請求をすることができます。
養育費の増額,減額のほか,養育費の終期を変更することもあります。また,養育費不請求の合意をした後に,事情の変更があれば,養育費の請求が認められることもあります。

 

二 事情の変更

養育費の増額請求や減額請求が認められるには,養育費を決めた当時予測することができなかった重大な事情の変更があり,従前の養育費が不相当となったことが必要となります。
例えば,増額請求する場合としては,①権利者の失業,病気,怪我により収入が減少した場合,②子が進学して学費が増える場合,③子が病気になって医療費がかかる場合等があります。
また,減額請求する場合としては,①義務者が失業,病気,怪我により収入が減少した場合,②義務者が再婚して扶養家族が増えた場合,③子が権利者の再婚相手の養子となった場合等があります。
事情の変更の有無が争いとなることに備えて,養育費の取決めをする際には,「収入の状況の変更,子の進学,病気などの事情があったときは,養育費の額について別途協議する」などの取決めをしておくことも考えられます。

 

三 変更の始期

養育費の増額や減額の請求した場合,養育費がいつから変更されるのかについては,増額や減額を請求したとき(調停や審判の申立てをしたときは,申立てをしたとき)からだと考えられています。

 

四 変更後の養育費の額

変更後の養育費の額は,増額請求や減額請求をしたときの権利者,義務者双方の収入をもとに簡易算定表や簡易算定方式により算定するだけではなく,養育費の合意をした当時の事情や合意後の事情も考慮されます。

 

五 手続

当事者間の合意により養育費の額を変更することができますが,協議による合意ができないときには,家庭裁判所に養育費の増額請求または減額請求の調停または審判の申立てをすることができます。

【離婚】不倫相手に対する離婚慰謝料請求

2019-03-28

不貞行為が原因で離婚した場合,不貞行為をされた夫婦の一方は,不貞行為をした夫婦の他方とその相手方に対し,慰謝料請求することが考えられます。
不貞行為が原因で離婚した場合の慰謝料については,①不貞行為による精神的苦痛に対する慰謝料を請求する考え方(不貞慰謝料)と,②離婚に至ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料を請求する考え方(離婚慰謝料)があります。
①と②では,消滅時効の起算点や遅延損害金の起算日に違いがあり,①では不貞行為をした時が起算点・起算日となるのに対し,②では離婚をした時が起算点・起算日となるという違いがあります。そのため,例えば,不貞行為を知ってから3年経過した後に慰謝料請求する場合には,不法行為の消滅時効の期間(民法724条)が経過しているため,不貞慰謝料ではなく,離婚慰謝料を請求するということが考えられます。

しかし,不貞行為をした第三者に対し離婚慰謝料を請求することについて,平成31年2月19日に最高裁判所の判決がでました。
この判決では,夫婦の一方は他方と不貞行為に及んだ第三者に対し,特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料請求はできないとされました。離婚は本来,夫婦間で決めるべき事柄であることから,不貞行為により婚姻関係が破綻して離婚に至ったとしても,直ちに,第三者が離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うものではなく,責任を負うのは,単に不貞行為をしただけではなく,離婚させることを意図して,婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして離婚をやむをえなくしたと評価すべき特段の事情がある場合に限られるとのことです。

この判決は,第三者に対する離婚慰謝料の請求は原則としてできないというものであって,第三者に対する不貞慰謝料の請求を否定するものではありません。そのため,今後,第三者に対しては離婚慰謝料ではなく,不貞慰謝料の請求をすることが基本になるでしょうが,消滅時効の期間の点で第三者に慰謝料請求ができなくなるケースもでてきます。

なお,不貞行為をした夫婦の一方と第三者の責任は共同不法行為責任であり,不真正連帯債務であると考えられていますが,夫婦の一方に離婚慰謝料を請求し,第三者に不貞慰謝料を請求した場合,共同不法行為責任・不真正連帯債務や求償についてどのように考えるのか問題となるものと思われます。
また,第三者に対し不貞慰謝料の請求はできるけれども,離婚慰謝料の請求はできないとした場合,慰謝料額にどのような影響を与えるのかも問題となるものと思われます。

【離婚】扶養的財産分与

2019-02-25

離婚をした夫婦の一方は相手方に対して財産分与請求をすることができます。
財産分与には,①清算的要素(夫婦が婚姻中に協力して形成した財産の清算),②扶養的要素(離婚後の扶養),③慰謝料的要素(精神的損害の賠償)がありますが,扶養的財産分与はどのような場合に認められるのでしょうか。

一  扶養的財産分与

財産分与の可否,分与の額・方法については,「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して」定められますので(民法768条3項),夫婦が婚姻中に協力して形成した財産の額だけでなく,婚姻期間の長さ,当事者双方の年齢,健康状態,職業,収入,稼働能力,特有財産を含めた財産の状況,有責性等様々な事情が考慮されます。
財産分与は清算的財産分与が中心ですが,清算的財産分与や慰謝料だけでは夫婦の一方が離婚後の生活に困窮することになる場合には,補充的に扶養的財産分与が認められることがあります。

 

二 扶養的財産分与が認められる場合

扶養的財産分与が認められるには,①請求者に扶養の必要性があること,②義務者に扶養能力があることが必要となります。

 

1 扶養の必要性

扶養の必要性があるかどうかは,請求者が受けた清算的財産分与や慰謝料,請求者の収入,稼働能力,特有財産を含む財産の状況,親族からの援助の状況,社会保障等を考慮して,経済的自立が困難かどうかで判断されます。

扶養の必要性が問題となる場合としては,①高齢の専業主婦の場合(年金分割制度の適用がない場合や分割後の年金額が少額の場合等),②病気の場合,③未成熟子を監護して働くことができない場合,④専業主婦で働き始めるまで時間がかかる場合等があります。

 

2 義務者の扶養能力

扶養的財産分与が認められるには義務者に扶養する能力がなければいけません。
義務者の扶養能力の有無は,義務者の収入や財産から判断されます。
義務者の財産については特有財産も含めて判断されます。

 

三 扶養的財産分与の方法

扶養的財産分与は,金銭の支払いで行われることが通常です。
金額については,生計を維持できる程度の金額です。その金額は,婚姻費用より低くなることが通常です。
期間については,経済的に自立することができるまでの期間です。専業主婦が就職できるまでの期間,子を保育園に預けることができるまでの期間,病気が治るまでの期間等,事案によって異なります。
支払については,一括払いの場合と定期金払いの場合があります。

また,金銭の支払以外の方法として,夫婦の一方が所有する住居に使用貸借権等の利用権を設定して,離婚後の相手方の居住が認めること等もあります。

【離婚】夫婦関係円満調整調停(円満調停)

2018-11-05

夫婦関係がこじれ,当事者どうしで話合いができない場合には,家庭裁判所に夫婦関係円満調整調停(円満調停)の申立てをすることが考えられます。

一 夫婦関係円満調整調停(円満調停)とは

夫婦関係円満調整調停(円満調停)とは,夫婦関係が円満でなくなった場合に円満な夫婦関係を回復するための話合いをするために家庭裁判所に申し立てる調停のことであり,夫婦関係調整調停の一つです。
夫婦関係調整調停には円満調停と離婚調停があります。夫婦関係の修復が難しく,離婚したい場合には離婚調停を申し立てることができますし,離婚はしたくなく,夫婦関係を修復したい場合には,円満調停の申立てをすることができます。
また,離婚しようかどうか迷っている場合に,いきなり離婚調停を申し立てるのではなく,まず円満調整調停の申立てをすることもできます。

 

二 申立て

1 申立権者

夫または妻の一方が申立人となり,他方が相手方となります。

 

2 管轄裁判所(申立てをする裁判所)

相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所(家事事件手続法245条1項)に申立てをします。

 

3 申立てに必要な書類等

申立書と写し各1通,夫婦の戸籍謄本,事情説明書等の必要書類を提出します。
また,収入印紙と郵便切手も納めます。

 

三 調停期日での手続

調停期日では,調停委員が当事者双方から事情を聴き,不和が生じた原因を探したり,関係修復のための解決策を話し合ったりする等して,夫婦関係を修復するための解決を模索していきます。
また,当事者の一方が離婚を望んでいる等,関係修復が難しい場合には,離婚について話し合うこともあります。

 

四 終了

1 調停の成立

調停での話合いにより,当事者で夫婦関係について合意が成立した場合,円満な関係を維持するための遵守事項や同居や別居について取り決めを調停条項として調停調書に記載します。

また,当事者が離婚することに合意した場合,円満調停の手続で離婚を成立させることもできます。

 

2 調停不成立

調停が成立する見込みがない場合には,調停は不成立となります。
円満調停は一般調停事件であり,不成立になっても審判に移行することはありません。

なお,円満調停で,当事者が離婚の話合いをしたけれども,離婚の合意ができずに調停が不成立となった場合,離婚したい側は,改めて離婚調停の申立てをすることなく,離婚訴訟を提起することが可能です。

 

3 申立ての取下げ

調停成立の見込みがないけれども,不成立にしたくない場合や,夫婦関係が改善し,問題が解決したため,調停で取決めをする必要がない場合には,申立てを取り下げることがあります。

【離婚】別居中または離婚後の子の引渡請求

2018-09-13

別居中または離婚後に,父母の一方から他方に対し,未成年の子の引渡し求める方法としては,どのような方法があるでしょうか。

 

一 子の引渡し調停・審判

子の引渡を求める方法としては,子の監護に関する処分として,家庭裁判所に子の引渡しを求める調停または審判を申し立てることが考えられます(民法766条2項,家事事件手続法39条,別表第二3項,244条)。

離婚後は父母の一方が親権者となり,親権者が子を監護するのが通常ですので,離婚後,子が非親権者である親の下にいる場合には,親権者は非親権者に対し,子の福祉に反することが明らかな場合等特段の事情がない限り,子の引渡を求めることができます。
また,別居中の夫婦間でも,子の引渡しの調停または審判の申立てができますが(民法766条2項類推適用),婚姻中は夫婦が共同で親権を行使することになりますので,監護権者指定の調停または審判の申立てをあわせてすることが通常です。

 

二 審判前の保全処分

緊急性が高い場合には,審判前の保全処分の申立てをして,子の仮の引渡しを求めることが考えられます(家事事件手続法157条1項3号)。
審判前の保全処分は,審判の申立てをしている場合だけでなく,調停の申立てをしている場合にも申し立てることができます(家事事件手続法157条1項3号)。

 

三 人身保護請求

1 人身保護請求とは

法律上正当な手続によらず,身体の自由を拘束されている人がいる場合には,人身保護法に基づき救済を請求することができますので(人身保護法2条),人身保護法2条に基づき子の引渡請求をすることが考えられます。
人身保護請求手続では迅速に裁判がなされますので,早期の解決を図ることが可能です。

 

2 要件

人身保護規則4条は「法第二条の請求は,拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分がその権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著である場合に限り,これをすることができる。但し,他に救済の目的を達するのに適当な方法があるときは,その方法によって相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白でなければ,これをすることができない。」と規定されているため,人身保護請求をするには,①子が拘束されていることのほかに,②顕著な違法性,②補充性が要件となっています。

 

3 別居中の場合

婚姻中は父母は共同で親権を行使するものであり,別居中,父母の一方が子を監護することは特段の事情がない限り適法です。
そのため,顕著な違法性があるといえるためには,子の幸福に反することが明白であることが必要であり,子の引渡しを命じる仮処分や審判が確定しているのに拘束者が従わない場合や,請求者の監護の下では安定した生活がおくれるのに,拘束者の監護の下では,健康が著しく損なわれたり,義務教育も満足に受けられない場合等,例外的な場合には限られると解されます。

 

4 離婚後の場合

離婚後に親権者から非親権者に対する人身保護請求については,親権者が子を監護するのが原則ですから,請求者が子を監護することが子の幸福の観点から著しく不当でない限りは,顕著な違法性があるものと解されています。

もっとも,子が拘束者の下で暮らすことを望んでいる場合には,拘束に違法性がないものとして,請求が認められないことがあります。

 

四 親権または監護権に基づく妨害排除請求

その他に子の引渡しを求める方法としては,親権または監護権に基づく妨害排除請求の民事訴訟をすることも考えられますが,子の引渡しの問題は家庭裁判所で解決することがふさわしいですし,民事訴訟による解決は時間がかかりますので,父母間の子の引渡しをめぐる紛争解決方法としては,あまり利用されていません。

【離婚】夫婦がそれぞれ子を監護する場合の婚姻費用,養育費

2018-08-23

婚姻費用分担額や養育費の算定は簡易算定表を用いて行うことが多いですが,簡易算定表は,夫婦の一方が子を監護している場合を前提としています。
そのため,夫婦がそれぞれ子を監護している場合,婚姻費用や養育費をどのように算定するのか問題となります。

なお,簡易算定方式と簡易算定表については,「【離婚】婚姻費用(簡易算定方式と簡易算定表)」,「【離婚】養育費(簡易算定方式と簡易算定表)」のページをご覧ください。

 

一 夫婦がそれぞれ子を監護している場合の婚姻費用分担額の算定

簡易算定方式では,婚姻費用分担額を以下の計算式で算定します。

婚姻費用分担額=(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)×権利者世帯の生活費指数÷(義務者世帯の生活費指数+権利者世帯の生活費指数)-権利者の基礎収入

基礎収入とは,収入のうち生活に当てられる部分のことです。
生活費指数については,夫,妻を100,0歳から14歳の子を55,15歳から19歳の子を90とします。

夫婦がそれぞれ子を監護している場合の婚姻費用分担額も上記の計算式で計算することができます。

例えば,妻の基礎収入が100万円,夫の基礎収入が250万円で,10歳と15歳の子がいる場合に,妻が10歳の子,夫が15歳の子をそれぞれ監護しているときは,夫が負担すべき婚姻費用分担額は以下のとおりです。

婚姻費用分担額(年額)=(100万円+250万円)×(100+55)÷(100+100+55+90)-100万円≒57万2463円

婚姻費用分担額(月額)=婚姻費用分担額(年額)÷12≒4万7705円≒5万円

なお,上記の例で夫が妻に婚姻費用を請求した場合には,婚姻費用分担額はマイナスになりますので,妻には婚姻費用分担義務はありません。

婚姻費用分担額(年額)=(100万円+250万円)×(100+90)÷(100+100+55+90)-250万円≒-57万2463円

 

二 夫婦がそれぞれ子を監護している場合の養育費の算定

夫婦がそれぞれ子を監護している場合の養育費の算定については,いくつかの方法が考えられます。以下,述べる方法以外の計算の仕方も考えられますのでご注意ください。

 

1 簡易算定表を用いる場合

①権利者が子全員を監護していると仮定して,簡易算定表に権利者,義務者双方の収入を当てはめて,養育費の額を算定します。
②上記の額に,子全員の生活費指数の合計に占める権利者が監護する子の生活費指数の割合を乗じて,義務者の負担額を算定します。

例えば,妻が10歳の子,夫が15歳の子をそれぞれ監護している場合に夫が負担すべき養育費は,①妻が子全員を監護していると仮定した場合に夫が支払うべき養育費が簡易算定表によると月額10万円から12万円であり,②その金額に,子全員の生活費指数の合計(145=55+90)に占める妻が監護する子の生活費指数(55)の割合(約0.38)を乗じると,夫の負担額は,約3万8000円から4万5000円となります。

 

2 簡易算定方式による場合

簡易算定方式では,養育費は以下の計算式で算定します。

養育費={義務者の基礎収入×(子の生活費指数÷義務者と子の生活費指数)}×{義務者の基礎収入÷(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)}

夫婦がそれぞれ子を監護している場合の養育費も上記の計算式を用いて算定することが考えられます。
その際,①まず,権利者が子全員を監護しているものと仮定した場合の義務者の負担額を計算し,②次いで,その額に子全員の生活費指数の合計に占める権利者が監護する子の生活費指数の割合を乗じて,義務者が負担すべき養育費の額を算定します。

例えば,妻の基礎収入が100万円,夫の基礎収入が250万円で,10歳と15歳の子がいる場合に,妻が10歳の子,夫が15歳の子をそれぞれ監護しているときは,夫が妻に監護される子のために負担すべき養育費は以下のとおりです。

①妻が子を全員監護していると仮定した場合の夫の負担額(年額)
250万円×(55+90)÷(100+55+90)×250万円÷(100万円+250万円)≒105万6851円

②子の生活費指数の割合を乗じた額(年額)
105万6851円×{55÷(55+90)}≒40万0874円

他方,上記の例で,夫が妻に養育費を請求したときは,妻が夫に監護される子のために負担すべき養育費が発生します。

養育費(年額)={100万円×(55+90)÷(100+55+90)×100万円÷(100万円+250万円)}×{90÷(55+90)}≒10万4956円

その場合,夫婦がお互いに養育費を支払いあうことになりますが,双方の負担額を差引きして,負担額が多いほう(例では夫)から少ないほう(例では妻)に差額を支払うことにすることも考えられます。

【離婚】4人以上の子を監護する場合の婚姻費用,養育費

2018-08-20

婚姻費用分担額や養育費の算定は簡易算定表を用いて行うことが多いですが,簡易算定表では子が3人以下の場合までしかありません。
そのため,子が4人以上いる場合には簡易算定方式を用いて婚姻費用分担額や養育費を算定することになります。
なお,簡易算定方式と簡易算定表については,「【離婚】婚姻費用(簡易算定方式と簡易算定表)」,「【離婚】養育費(簡易算定方式と簡易算定表)」のページをご覧ください。

 

一 子を4人以上監護している場合の婚姻費用分担額の算定

簡易算定方式では,婚姻費用分担額を以下の計算式で算定します。

婚姻費用分担額=(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)×権利者世帯の生活費指数÷(義務者世帯の生活費指数+権利者世帯の生活費指数)-権利者の基礎収入

基礎収入とは,収入のうち生活に当てられる部分のことです。
生活費指数については,夫,妻を100,0歳から14歳の子を55,15歳から19歳の子を90とします。

子が4人以上いる場合の婚姻費用分担額も上記の計算式で計算します。

例えば,妻の基礎収入が50万円,夫の基礎収入が350万円,子が8歳,10歳,15歳,17歳で妻が子4人を監護している場合に夫が負担すべき婚姻費用分担額は以下のとおりです。

婚姻費用分担額(年額)=(50万円+350万円)×(100+55+55+90+90)÷(100+100+55+55+90+90)-50万円≒268万3673円

婚姻費用分担額(月額)=婚姻費用分担額(年額)÷12≒22万3639円≒22万円

 

二 子を4人以上監護している場合の養育費の算定

簡易算定方式では,養育費は以下の計算式で算定します。

養育費=(義務者の基礎収入×子の生活費指数÷義務者と子の生活費指数)×義務者の基礎収入÷(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)

子が4人以上いる場合の養育費も上記の計算式で算定します。

例えば,妻の基礎収入が50万円,夫の基礎収入が350万円,子が8歳,10歳,15歳,17歳で,離婚後,妻が子4人を監護する場合に夫が負担すべき養育費は以下のとおりです。

養育費(年額)=350万円×(55+55+90+90)÷(100+55+55+90+90)×350万円÷(50万円+350万円)≒227万7243円

養育費(月額)=養育費(年額)÷12≒18万9770円≒19万円

【離婚】離婚訴訟と反訴,予備的反訴,予備的附帯処分の申立て

2018-08-16

離婚訴訟の被告が原告に対し損害賠償請求や財産分与請求等をしたい場合には,①離婚の反訴請求をし,あわせて損害賠償請求や附帯処分の申立てをすることや,②離婚が認められた場合に,予備的反訴として損害賠償請求することや予備的附帯処分の申立てをすることが考えられます。

 

一 反訴

離婚訴訟の被告が,離婚すること自体には異存がないけれども,原告の主張する離婚原因に納得がいかないときは,離婚の反訴請求をし,あわせて損害賠償請求や財産分与等の附帯処分の申立てをすることが考えられます。

例えば,原告が離婚原因として被告のDVを主張しているのに対し,被告が原離婚原因として原告の不貞行為を主張して,離婚や慰謝料の支払等を求めて反訴した場合です。

離婚訴訟の被告が反訴で離婚を請求した場合,①双方が主張する離婚原因を審理判断し,本訴と反訴のいずれか一方の離婚請求が認容され,他方の離婚請求が棄却される場合と,②原告・被告とも離婚することについて意思が一致しているので,双方が主張する離婚原因を審理判断することなく,婚姻関係を継続し難い重大な事由が認められるとして,本訴・反訴とも離婚請求が認容される場合があります。

 

二 予備的反訴,予備的附帯処分の申立て

離婚訴訟の被告が,離婚はしたくないけれども,離婚が認められてしまった場合には原告に対し損害賠償請求や財産分与請求等をしたいときは,予備的に損害賠償請求の反訴をすることや予備的に財産分与等の附帯処分の申立てをすることが考えられます。

予備的反訴や予備的附帯処分の申立てにより本訴と同時に解決することができ,離婚後に請求する手間を省くことができるというメリットがありますが,予備的とはいえ被告が離婚を前提とした請求をすることは,被告も離婚を容認しているものと受け取られるおそれがあるというデメリットもありますので,被告が離婚したくない場合には,予備的反訴や予備的附帯処分の申立てをするかどうかは,よく検討すべきでしょう。

【離婚】離婚訴訟 棄却判決確定後の再度の離婚請求

2018-07-30

離婚訴訟で離婚請求を棄却する判決が確定した場合,離婚はできません。
しかし,別の離婚原因を主張して,再度,離婚請求をすることはできないでしょうか。

 

一 判決確定後の訴え提起の禁止

1 前訴原告の離婚請求の禁止

人事訴訟の判決(訴え却下判決は除きます。)の確定後は,原告は,その訴訟で請求または請求原因の変更により主張することができた事実に基づいて同一の身分関係についての人事訴訟を提起することはできません(人事訴訟法25条1項)。
そのため,離婚請求を棄却する判決が確定した場合には,異なる離婚原因を主張して離婚請求をすることもできなくなります。
例えば,前訴で,妻が夫の不貞行為を離婚原因として離婚請求したけれども,不貞行為の事実が立証できず,請求棄却判決が確定した後に,夫からのDVを主張して再度の離婚訴訟を提起することはできません。

離婚訴訟の訴訟物は離婚原因ごとに異なると解されていることから,ある離婚原因に基づく離婚請求が認められなくても,別の離婚原因を主張して再度の離婚請求をすることもできるはずですが,身分関係を安定させるため,訴訟物の範囲を超えて失権させることで,紛争の一回的解決が図られています。

 

2 前訴被告の離婚請求の禁止

人事訴訟の判決(訴え却下判決は除きます。)の確定後は,被告は,反訴提起することにより主張することができた事実に基づいて同一の身分関係についての人事訴訟を提起することはできません(人事訴訟法25条2項)。
そのため,離婚請求を棄却する判決が確定した場合,被告が反訴すれば主張することができた離婚原因に基づいて離婚請求をすることもできなくなります。
例えば,夫が提起した離婚訴訟について,妻が夫の不貞行為を離婚原因とする反訴提起をすることなく,請求棄却判決が確定した場合,その後に,妻が夫の不貞行為を離婚原因とする離婚訴訟を提起することはできません。

 

二 再度の離婚請求

人事訴訟法25条は,前訴で主張することができた事実に基づく別訴を禁止するものです。
そのため,前訴の口頭弁論終結後に生じた事由に基づいて,再度離婚請求することはできます。

例えば,前訴の口頭弁論終結後に夫が不貞行為をした場合には,妻は夫の不貞行為を離婚原因として再度の離婚請求をすることができます。
また,前訴の判決確定後も別居を長期間継続した場合には,長期間の別居を理由に,再度離婚請求をすることも考えられます。

 

三 まとめ

離婚請求を棄却する判決が確定した場合でも再度の離婚請求をすることは可能ですが,前訴で主張することができた離婚原因は実際に主張したか否かにかかわらず,後訴では主張することができなくなります。
そのため,離婚訴訟をする場合には,原告は主張できる離婚原因はすべて主張しておいたほうがよいでしょう。
また,被告も,原告の主張に納得できないから離婚請求を争っているという場合には,反訴すべきかどうか検討すべきでしょう。

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