訴状の書き方

2014-09-11

民事訴訟を提起するには、原則として訴状を提出しなければなりません(民事訴訟法133条1項)。

民事訴訟では、裁判所は当事者が申し立てていない事項について判決をすることはできませんし(民事訴訟法246条 処分権主義)、事実の主張や証拠の収集は当事者の責任に委ねられておりますので(弁論主義)、原告が訴状においてどのような請求をするか、どのような主張をするのかということは、訴訟において非常に重要です。

訴状の書き方については、民事訴訟法や民事訴訟規則に規定されておりますので、簡単に説明します。

 

一 訴状の記載事項

民事訴訟法や民事訴訟規則は、訴状の記載事項について以下のように規定しています。

 

1 必要的記載事項

①当事者及び法定代理人

②請求の趣旨及び原因

を記載しなければなりません(民事訴訟法133条2項)。

 

請求の趣旨とは、原告が訴訟において求める請求の内容及び判決の形式です。

例えば、貸金返還請求事件の請求の趣旨は「被告は、原告に対し、金○○○○円を支払え」ですし、土地明渡請求事件の請求の趣旨は「被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の土地を明け渡せ」(訴状に物件目録を添付します。)です。

 

請求の原因とは、請求を特定するのに必要な事実のことです。

法律効果が発生するには、その要件となる事実(「要件事実」といいます。)の存在が必要であり、訴状において、原告は、請求権の発生を基礎づける要件事実を、請求の原因として主張しなければなりません。

例えば、貸金返還請求事件の請求の原因として記載すべき要件事実は、

ⅰ 金銭の返還の合意

ⅱ 原告が被告に金銭を交付したこと

ⅲ 返済時期の合意

ⅳ 返還時期が到来したこと

です(なお、利息や遅延損害金を請求する場合には、別に利息や遅延損害金発生の要件事実を主張します。)。

裁判所は当事者の主張しない要件事実を認定することはできませんので(弁論主義)、要件事実の主張がないと、法律効果が発生せず、請求が認められなくなってしまいます。

要件事実の主張し忘れがないよう、ご注意ください。

 

2 実質的記載事項

訴状には、②の請求の趣旨及び原因(請求の特定するのに必要な事実)を記載するほか、

③請求を理由づける事実を具体的に記載し、かつ、

④立証を要する事由ごとに、当該事実に関連する事実で重要なもの及び証拠

を記載しなければなりません(民事訴訟規則53条1項)。

その際、できる限り、請求を理由づける事実についての主張と当該事実に関連する事実についての主張とを区別して記載しなければなりません(民事訴訟規則53条2項)。

 

3 その他の記載事項

⑤当事者の氏名又は名称・住所、代理人の氏名・住所(民事訴訟規則2条1項1号)

⑥事件の表示(民事訴訟規則2条1項2号)

⑦附属書類の表示(民事訴訟規則2条1項3号)

⑧年月日(民事訴訟規則2条1項4号)

⑨裁判所の表示(民事訴訟規則2条1項5号)

⑩当事者又は代理人の記名押印(民事訴訟規則2条1項)

⑪原告又は代理人の郵便番号、電話番号、ファックス番号(民事訴訟規則53条4項)

⑫送達場所、送達受取人(民事訴訟法104条1項、民事訴訟規則41条)

 

二 訴状の提出方法

訴えを提起するにあたっては、

Ⅰ 訴状(裁判所用の正本1通と被告用の副本を被告の人数分 民事訴訟規則58条1項)

Ⅱ 登記事項証明書等、訴状の添付書類(民事訴訟規則55条1項)

Ⅲ 書証の写し(裁判所分と被告の人数分 民事訴訟規則55条2項)

Ⅳ 訴訟委任状(代理人がいる場合  民事訴訟規則23条1項)

Ⅴ 収入印紙(訴額によって決められています。)

Ⅵ 郵便切手(裁判所によって異なります)

を、裁判所の事件受付に持参又は郵送します。

 

三 訴状の記載例

 

訴   状

○○年○月○○日  ←⑧

○○地方裁判所 御中                       ←⑨

原告訴訟代理人弁護士   ○○ ○○ ○印 ←⑩

 

〒○○○-○○○○  ○○県○○市○○ ○丁目○○番○○号        ←①⑤

原  告   ○○ ○○

 

〒○○○-○○○○  ○○県○○市○○ ○丁目○○番○○号         ←⑤⑪

○○法律事務所(送達場所)                       ←⑫

上記原告訴訟代理人弁護士  ○○ ○○

電 話  ○○○-○○○-○○○○         ←⑪

FAX  ○○○-○○○-○○○○

 

〒○○○-○○○○  ○○県○○市○○ ○丁目○○番○○号         ←①⑤

       被  告   ○○ ○○

 

○○請求事件                                                      ←⑥

訴訟物の価額       ○,○○○,○○○円

貼用印紙額          ○○,○○○円             ←Ⅴ

 

第1 請求の趣旨                                                    ←②

1 被告は、原告に対し、金○○○万円及びこれに対する平成○年○月○日より支払い済みまで年○分の割合による金員を支払え

2 訴訟費用は被告の負担とする

との判決及び仮執行宣言を求める。

 

第2 請求の原因                                                       ←②③

 

第3 関連事実                          ←④

 

証 拠 方 法                           ←④

1 甲第1号証   ○○○○

2 甲第2号証   ○○○○

附 属 書 類                   ←⑦

1 訴状副本                      1通            ←Ⅰ

2 甲号証写し                    各2通            ←Ⅲ

3 訴訟委任状                     1通            ←Ⅳ

 

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