【離婚】養育費を請求しない旨の合意(養育費不請求の合意)

2016-08-24

離婚する際に,夫婦間で養育費を請求しない旨合意することがあります。

例えば,夫が養育費の支払を拒み,離婚に応じないことから,離婚したい妻が養育費を請求しない旨合意する場合や,夫婦の双方が子の親権を主張しているため,親権がほしい側が,親権を取得するかわりに養育費を請求しない旨合意する場合があります。

しかし,そのような場合でも,離婚後,経済的に苦しくなったときには,子を養育する親は,子を養育しない親に対し,養育費を請求することはできないのでしょうか。

 

養育費不請求の合意については,以下のような考えがあります。

 

①子の扶養請求権を放棄する合意は無効

民法881条は「扶養を受ける権利は,処分することができない。」と規定しており,子の扶養請求権は放棄することはできません。

そのため,養育費不請求の合意が子の扶養請求権を放棄するものであると解される場合には,民法881条により,合意は無効であると考えられます。

②子からの扶養料請求

養育費不請求の合意を,父母の間での養育費負担の取決めであるとすれば,合意は有効であると解されますが,合意は,父母の間でなされたものであり,父母の間でのみ効力を有すると解されます。

そのため,合意の効力は子には及びませんので,子は,要扶養状態にあれば,養育費を負担しない親に対し,扶養料の請求ができると考えられます。

その場合でも,養育費不請求の合意があることは考慮されるべき事情となります。

 

③事情の変更がある場合

養育費不請求の合意があっても,事情の変更があれば,養育費や扶養料の請求ができます。

例えば,合意をした時点では,子を養育する親に十分な経済的能力があり,子の養育に支障がなかったけれども,その後,経済的に苦しくなり,子の養育に支障が生じた場合には,事情の変更があるといえるでしょう。

 

以上のとおり,養育費不請求の合意があったとしても,養育費や扶養料の請求ができないわけではありません。

請求するにあたっては,合意の相当性,親の経済的能力,子の生活状況,合意後の事情の変更等,具体的な事情を検討する必要があります。

 

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