【離婚】離婚訴訟 棄却判決確定後の再度の離婚請求

2018-07-30

離婚訴訟で離婚請求を棄却する判決が確定した場合,離婚はできません。
しかし,別の離婚原因を主張して,再度,離婚請求をすることはできないでしょうか。

 

一 判決確定後の訴え提起の禁止

1 前訴原告の離婚請求の禁止

人事訴訟の判決(訴え却下判決は除きます。)の確定後は,原告は,その訴訟で請求または請求原因の変更により主張することができた事実に基づいて同一の身分関係についての人事訴訟を提起することはできません(人事訴訟法25条1項)。
そのため,離婚請求を棄却する判決が確定した場合には,異なる離婚原因を主張して離婚請求をすることもできなくなります。
例えば,前訴で,妻が夫の不貞行為を離婚原因として離婚請求したけれども,不貞行為の事実が立証できず,請求棄却判決が確定した後に,夫からのDVを主張して再度の離婚訴訟を提起することはできません。

離婚訴訟の訴訟物は離婚原因ごとに異なると解されていることから,ある離婚原因に基づく離婚請求が認められなくても,別の離婚原因を主張して再度の離婚請求をすることもできるはずですが,身分関係を安定させるため,訴訟物の範囲を超えて失権させることで,紛争の一回的解決が図られています。

 

2 前訴被告の離婚請求の禁止

人事訴訟の判決(訴え却下判決は除きます。)の確定後は,被告は,反訴提起することにより主張することができた事実に基づいて同一の身分関係についての人事訴訟を提起することはできません(人事訴訟法25条2項)。
そのため,離婚請求を棄却する判決が確定した場合,被告が反訴すれば主張することができた離婚原因に基づいて離婚請求をすることもできなくなります。
例えば,夫が提起した離婚訴訟について,妻が夫の不貞行為を離婚原因とする反訴提起をすることなく,請求棄却判決が確定した場合,その後に,妻が夫の不貞行為を離婚原因とする離婚訴訟を提起することはできません。

 

二 再度の離婚請求

人事訴訟法25条は,前訴で主張することができた事実に基づく別訴を禁止するものです。
そのため,前訴の口頭弁論終結後に生じた事由に基づいて,再度離婚請求することはできます。

例えば,前訴の口頭弁論終結後に夫が不貞行為をした場合には,妻は夫の不貞行為を離婚原因として再度の離婚請求をすることができます。
また,前訴の判決確定後も別居を長期間継続した場合には,長期間の別居を理由に,再度離婚請求をすることも考えられます。

 

三 まとめ

離婚請求を棄却する判決が確定した場合でも再度の離婚請求をすることは可能ですが,前訴で主張することができた離婚原因は実際に主張したか否かにかかわらず,後訴では主張することができなくなります。
そのため,離婚訴訟をする場合には,原告は主張できる離婚原因はすべて主張しておいたほうがよいでしょう。
また,被告も,原告の主張に納得できないから離婚請求を争っているという場合には,反訴すべきかどうか検討すべきでしょう。

 

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