【離婚】離婚慰謝料

2018-01-10

離婚する場合,離婚原因によって慰謝料が問題となることがあります。
ここでは,離婚慰謝料について説明します。

 

一 離婚慰謝料

離婚に伴う慰謝料(離婚慰謝料)は,一方の有責行為により離婚を余儀なくされたことによる精神的損害に対する損害賠償のことです。
離婚慰謝料には,①離婚したこと自体による精神的苦痛の慰謝料と,②離婚原因である有責行為(不貞行為や暴力等)による精神的苦痛の慰謝料があります。
いずれであるか区別されないことが多いですが,消滅時効や遅延損害金の起算点に影響します。離婚自体の慰謝料の場合は離婚時が起算点となるのに対し,離婚原因となる行為の慰謝料の場合は行為時が起算点となります。
また,DV(ドメスティック・バイオレンス)の場合には,離婚慰謝料とは別に傷害慰謝料(入通院慰謝料)や後遺障害慰謝料が認められることがあります。

 

二 離婚慰謝料が認められる場合

離婚に伴う慰謝料請求は不法行為による精神的損害についての損害賠償請求ですから,離婚慰謝料が認められるには不法行為による損害賠償請求の要件をみたす必要があります。
①相手方の行為に違法性がない場合,②夫婦双方に婚姻関係の破綻の責任が同程度ある場合や請求者の責任のほうが大きい場合,③有責行為と婚姻関係の破綻に相当因果関係がない場合(不貞行為をする前から婚姻関係が破綻していた場合等),④既に損害が填補されている場合(不貞相手から既に慰謝料が支払われている場合等)には,慰謝料は認められないでしょう。

また,離婚原因との関係でいえば,不貞行為やDVによる離婚の場合には不法行為にあたり,慰謝料請求が認められやすいですが,価値観の相違や性格の不一致による離婚の場合には不法行為とはいえず,慰謝料請求は難しいでしょう。

 

三 慰謝料額に影響を与える要素

慰謝料の額について客観的な基準があるわけではありません。慰謝料の額は,有責性の程度,精神的苦痛の大きさ,離婚に至る経過,婚姻期間の長さ,未成年子の有無,夫婦双方の年齢,資力や社会的地位,婚姻中の生活状況,離婚後の生活状況,財産分与の内容等,様々な事情を考慮して決まります。
慰謝料額は具体的な事案によって異なりますので,一概には言えませんが,300万円以下の場合が多く,500万円を超えることはあまりないです。

 

四 離婚慰謝料の請求方法

1 離婚と同時に請求する場合

(1)協議

離婚協議では,離婚するかどうかだけでなく,どのような条件で離婚するのか離婚条件についても話合いをすることができますので,離婚に伴い慰謝料を請求したい場合には,慰謝料についても話合いをしましょう。
慰謝料について合意ができた場合には,相手方が履行しないときに備えて,執行認諾文言付きの公正証書にしておいた方がよいでしょう。

 

(2)調停

離婚調停の申立てをする際,あわせて慰謝料請求の申立てをすることができますので,調停手続の中で慰謝料についても話し合いをすることができます。
調停条項で慰謝料の支払について取決めをしておけば,相手方が履行しない場合に強制執行をすることができます。

 

(3)訴訟

離婚の慰謝料請求は不法行為による損害賠償請求ですから,訴額によって地方裁判所または簡易裁判所に訴えを提起するのが原則です。
もっとも,離婚の訴えと損害賠償請求の訴えを一つの訴えで家庭裁判に提起することもできますし(人事訴訟法17条1項),既に離婚訴訟が係属している場合にはその家庭裁判所に損害賠償請求の訴えを提起して,両事件の口頭弁論を併合することもできます(人事訴訟法17条2項,3項,8条2項)。
また,地方裁判所や簡易裁判所に訴訟提起した場合であっても,損害賠償請求訴訟が係属する裁判所は,相当と認めるときは,離婚訴訟が係属する家庭裁判所に移送をすることができ(人事訴訟法8条1項),その場合には,離婚事件と損害賠償請求事件の口頭弁論は併合されます(人事訴訟法8条2項)。

 

2 離婚後に請求する場合

(1)交渉

離婚の際,慰謝料について取決めをしていなければ,離婚後に慰謝料請求をすることができます。
慰謝料について合意ができた場合には,相手方が履行しないときに備えて,執行認諾文言付きの公正証書にしておいた方がよいでしょう。

 

(2)調停

離婚後の紛争についても家庭裁判所の調停で話合うことができますので,離婚後に慰謝料請求をしたい場合には,家庭裁判所に慰謝料請求の調停を申し立てることができます。

 

(3)訴訟

離婚後に慰謝料請求する場合には,訴額によって地方裁判所または簡易裁判所に訴えを提起します。

 

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