【離婚】住宅ローンがある不動産の財産分与

2018-04-26

離婚する夫婦間に住宅ローンが残っている不動産がある場合,どのように財産分与するのでしょうか。

 

一 財産分与額の計算

1 清算的財産分与

財産分与請求をすることで,夫婦が婚姻中に築いた財産を清算します(清算的財産分与)。
清算的財産分与の対象となる財産は,原則として夫婦が婚姻してから別居するまでの間に取得した財産であり,積極財産から消極財産を控除します。
また,分与の割合については,夫婦は財産の形成につき同程度の貢献をしたとみて,特段の事情がない限り2分の1とされています。
そのため,清算的財産分与の財産分与額については,原則として以下のように計算します。

清算的財産分与の額=(請求者の財産+義務者の財産)÷2-請求者の財産

なお,財産分与には,扶養的要素や慰謝料的財要素もありますので,それらの観点から財産分与額が調整されることがあります。

 

2 住宅ローンのある不動産の場合

住宅ローンのある不動産については,不動産の時価から住宅ローンの残額を控除して評価すると考えられております。
例えば,夫名義の不動産(時価2000万円)があり,夫を債務者とする住宅ローンの残額が1000万円ある場合には,不動産を1000万円(=2000万円-1000万円)と評価し,夫婦の貢献を平等とすると,それぞれ500万円ずつの権利を有することになります。その場合に,離婚後も夫が住居を所有し,住宅ローンを支払い続ける場合には,夫は妻に代償金として500万円を支払うことになります。

また,オーバーローンの場合(住宅ローンの残額が不動産の時価を上回っている場合)には,その不動産は,価値がないものとして,財産分与の対象から外されます。他に資産がある場合にはその資産について財産分与が行われますが,他に資産がなければ財産分与は行われません。
オーバーローンの場合,返済した住宅ローンを財産分与の対象とすることができないか問題とされることがありますが,不動産を価値がないものとする以上,返済した住宅ローンも財産分与の対象とはならないと解されます。

なお,不動産についてはオーバーローンであっても,財産全体としてみれば消極財産よりも積極財産のほうが多い場合があります。
その場合には,不動産を含む積極財産全体から住宅ローンを含む消極財産全体を控除して当事者の財産を評価し,双方の貢献の程度によって財産分与額を算定することで,実質的に相手方に債務を負担させることが考えられます。
例えば,夫名義の財産として住宅(2000万円の価値,住宅ローンの残高2500万円)と預金1000万円があり,妻名義の財産として預金300万円がある場合,夫の財産は積極財産合計3000万円から消極財産2500万円を控除した500万円であり,妻の財産は積極財産300万円ですので,妻の寄与割合を2分の1とすると,夫から妻への財産分与額は100万円となります。

夫から妻への財産分与額=(妻の財産+夫の財産)÷2-妻の財産
={300万円+(2000万円+1000万円-2500万円)}÷2-300万円=
100万円

また,住宅ローンのある不動産以外に資産がない場合等,財産全体をみても債務のほうが多い場合に,債務を負担する側から負担しない側に対し債務の負担を命じるような財産分与ができるか問題となることがありますが,条文上明確な根拠がありませんので,難しいと考えられています。

 

二 財産分与の方法

1 住宅を売却する場合

夫婦のどちらも住宅に居住するつもりがない場合には,住宅を売却し,住宅の売却代金で住宅ローンを返済し,残金を夫婦間で分配することが考えられます。

住宅の売却代金より住宅ローンの残額が多いオーバーローンの場合,売却してもローンが残ることになります。金融機関との関係では,ローンの債務者や連帯保証人が支払うことになりますが,夫婦間ではどちらが負担するか問題となります。

 

2 住宅の名義人が居住する場合

住宅の名義人が住み続ける場合には,住宅の名義変更はせず,名義人が住宅ローンの支払を続けるとともに,相手方に代償金の支払やその他の財産を渡すことが考えられます。

相手方が住宅ローンの連帯保証人になっている場合には,相手方が連帯保証人から外すよう求めてくることが多いですが,当事者の合意だけで連帯保証を外すことはできませんので,金融機関との交渉が必要となります。

 

3 住居の非名義人が居住する場合

(1)名義人が非名義人に住宅を現物で分与する場合

財産分与は,金銭の給付が基本ですが,現物を分与することもできますので,住居の名義人が非名義人に住宅を現物で分与することもできます。
その際,住宅ローンの債務をどちらが負担するか,代償金の支払をどうするか問題となります。
なお,住宅ローンがある場合,金融機関との関係で登記名義の変更ができない場合がありますが,そのような場合には,財産分与を原因とする所有権移転の仮登記をし,住宅ローンが完済された時点で本登記をすることがあります。

 

(2)利用権を設定する場合

例えば,夫名義の住宅があり,妻は離婚後も子らとともに住宅に居住し続けることを望んでいるけれども,妻に住宅ローンや代償金を支払うだけの経済力がない場合には,住宅の名義変更はしないけれども,扶養的財産分与の観点から,当事者間で使用貸借契約や賃貸借契約を締結することが考えられます。

 

4 共有名義の場合

住宅がもともと夫婦の共有名義であり,オーバーローン等の事情で離婚後も共有のままにしておく場合や,相手方が代償金を支払うことができないので,住宅の一部のみ分与を受ける場合等,離婚後も住宅が共有名義となる場合があります。
しかし,離婚後のトラブルを避けるため,特別な事情がない限りは,できる限り離婚後の共有状態は解消したほうが良いでしょう。

 

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