【離婚】不貞行為の慰謝料額に影響する要素

2015-11-04

不貞行為をされた配偶者は,不貞行為をした配偶者とその不貞相手に対して,不法行為に基づいて慰謝料請求をすることができます(民法709条)。

不貞行為の慰謝料額の算定について客観的な基準があるわけではなく,案件ごとに異なります。

基本的には,慰謝料額は,不貞行為の有責性と精神的苦痛の大きさによりますが,以下のような事情が慰謝料額に影響すると考えられています。

 

1 婚姻関係

(1)婚姻期間の長さ

婚姻期間が長い場合には,慰謝料額が高くなる傾向にあります。

(2)未成熟子の有無

未成熟子がいる場合には,慰謝料額が高くなる傾向にあります。

(3)当事者の資力,性別

婚姻関係破綻による影響は,通常は資力がない妻のほうが大きいため,資力のある夫が不貞行為をした場合には慰謝料額が高くなる傾向があります。

(4)不貞行為前の婚姻生活の状況

夫婦関係が円満であったにもかかわらず,不貞行為があった場合には,有責性や精神的苦痛は大きいといえます。

不貞行為前から夫婦が別居している等,夫婦関係に問題があり,そのことにつき,不貞行為をされた配偶者にも落ち度があった場合には,慰謝料額が低くなる傾向にあります。

 

2 不貞行為

(1)どちらが主導的な役割を果たしたのか

不貞行為は,不貞行為者両名の共同不法行為であり,不貞行為をされた者は,不貞行為者両名に対し慰謝料全額を請求できることからすれば,どちらが主導したかは不貞行為者間における負担割合の問題になるだけであり,慰謝料額には影響しないのではないかとも思われます。

しかし,一方に対してのみ慰謝料請求した場合には,主導的役割でなかったかどうかが慰謝料額に影響することがあります。

(2)不貞行為の期間,回数

不貞行為の期間が長い程,不貞行為の回数が多い程,不貞行為の有責性や不貞行為をされた配偶者の精神的苦痛が大きくなるので,慰謝料が高くなる傾向にあります。

(3)不貞行為者の関係

不貞行為をした配偶者と不貞相手が同棲している場合や,二人の間に子が生まれた場合には,不貞行為をされた者の精神的苦痛が大きくなり,慰謝料額が高くなると考えられます。

 

3 婚姻関係が破綻したかどうか

不貞行為により婚姻関係が破綻していない場合であっても,慰謝料請求をすることはできますが,婚姻関係がいまだ破綻しておらず,離婚や別居までに至っていない場合には,精神的苦痛は相対的に小さいと考えられ,慰謝料額が減額される方向に働きます。

 

4 不貞行為発覚後の当事者の対応

(1)不貞行為者の対応

不貞行為発覚後,不貞行為をした者が,不貞行為を認めて謝罪したのかどうか,不貞関係を解消する等,誠実な対応をしたのかどうかは,慰謝料額に影響します。

(2)不貞行為をされた配偶者の対応

不貞行為をされた配偶者が,怒って,不貞行為者に嫌がらせをした場合には慰謝料額に影響することがあります。

また,嫌がらせ行為が不法行為にあたる場合には,逆に不貞行為者から損害賠償請求されるおそれもあります。

 

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