【離婚】不貞行為の慰謝料請求をした場合の不倫相手からの反論

2017-05-22

夫が不倫をした場合,妻は,不法行為に基づき(民法709条),夫の不倫相手に対して不貞行為の慰謝料請求をすることができますが,慰謝料請求をされた不倫相手のよくある反論として,以下のようなものがあります。

 

1 不貞行為はしていない(不貞行為の不存在)

不倫相手が不貞行為はしていないと言って不貞行為の事実を否認した場合,妻は,不貞行為の存在を裏付ける証拠を相手方や裁判所に示さなければなりません。

証拠となるのは,夫と不倫相手との間に性的関係があったことを直接示すもの(性行為そのものを撮影した写真や動画など)や,それを強く推認させるもの(肉体関係の存在を示す内容のメール,同室に宿泊したことがわかる写真など)が必要になります。不貞行為の事実を否認する不倫相手は,証拠が出されても,様々な弁解をしてきますので,そのような弁解を封じられるような確実な証拠を取得しておくことが重要です。

不倫相手が不貞行為の存在を否認し,後から不貞行為の確実な証拠が出された場合には,不倫相手の悪質性が顕著ということになり,慰謝料増額事由になるでしょう。

 

2 婚姻関係は破綻していた

不貞行為開始時において,夫婦の婚姻関係がすでに破綻していた場合には,妻の婚姻共同生活の維持という権利又は法的保護に値する利益があるとはいえないため,特段の事情がない限り,不倫相手は不法行為責任を負いません。

不貞行為の慰謝料請求事件において,不倫相手からこの種の反論がなされることは非常に多いのですが,破綻とは,夫婦関係を全体として客観的に評価して,完全に修復の見込みがないと判断される場合に限られます。裁判所は,夫婦関係が円満ではなかった,夫婦関係に不満があったという程度では,婚姻関係の破綻を容易には認めない傾向にあります。

 

3 結婚していたとは知らなかった(故意過失の不存在)

不法行為責任は,故意過失が要件となりますので,不倫相手に対する慰謝料請求が認められるためには,不倫相手が,夫が既婚者であること(婚姻関係が破綻していないこと)を知っていたか,あるいは知りえたにもかかわらず関係をもったという事情が必要です。

不倫相手が,当初は夫が既婚者であることを知らなかったとしても,その事実を知った後も夫との不貞関係を続けていれば,知った後の行為について,不法行為が成立します。不倫相手がいつ知ったのかが問題となりますが,妻から不倫相手に対して不貞行為をやめるように通知をしていた場合には,少なくとも通知を受け取った以降も夫との関係を続けていれば,その行為自体が不法行為に当たると主張することができます。

不倫相手が,夫から,婚姻関係が破綻していると聞かされていたのでそれを信じたという反論もよくありますが,夫の話を鵜呑みにしただけで事実関係を確認していなければ,裁判所はほとんど不倫相手の反論を認めません。

 

このように,不倫相手は,様々な反論をして,責任を免れようとすることが多いですから,慰謝料請求をする場合には事前に対応を検討しておきましょう。

 

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